木星探査機Junoのすごいところは、その作者の一人に申し上げたこともあるが、そのシンプルですっきりした設計だ…少なくとも、ほかの宇宙船と比べた場合、そう言える。技術者たちには通常、何でもかんでもそこに詰め込むだけの十分な時間がある。でも重要なセンサーは、食パンみたいなサイズであるよりも、スープの浮身に使うクラッカーぐらいに小さい方がよい。
今NASAのGoddard Flight CenterにいるNikolaos Paschalidisは、これまでの長年、チップの小型化に挑戦してきた。
“これまでの宇宙船はすべて、電子回路がものすごく大きくて、2ポンド以上もあった”、と彼はNASAのニューズリリースで語っている。サイズが大きいと少しの計器類しか搭載できないし、重ければ宇宙船全体を重くする。この二つの制約が、VoyagerやGalileoのころの探測機の設計者たちを厳しく悩ませた。
これらのASIC(Application Specific Integrated Circuit)はその名のとおり、目的に合わせた特注製品だ。Junoの場合は、高度な放射線耐性が要求された。木星周辺までの旅路は、どっぷりと放射線漬けなのだ。
Junoの場合は、すでにPaschalidisらのこれまでの仕事の成果を踏まえていたため、設計者たちにかなりの自由があった。Junoが木星の起動に乗る〔木星を回る軌道?〕直前のインタビューで、主席研究員のScott Boltonは、サイズがSaltineぐらいに小さくなっても、‘何でもかんでもそこに詰め込む’ことは必要だし、たいへんな作業だ、と語った。
“それは、ピース数のものすごく多いジグソーパズルだ。何十人ものエンジニアやサイエンティストが寄ってたかって挑戦しても、完成までにすごい時間がかかる。そうやって、やっとボックスが完成したら、今度はそこにケーブルを入れないといけない”。
それでも結果は、大量の計器類を配置できた嬉しい出来栄えだ。Boltonはとくに、最新のマイクロ波測定器に興奮しているが、Junoの超小型のASIC群は、そのJupiter Energetic Particle Detector Instrument(JEDI, 木星エネルギー粒子検出計器)を構成している。このツール集合は、エネルギー粒子(energetic particles)というものを、あなたの小銭入れに入るようなセンサー群を使って10億分の1秒以上の精度で検出する。
Junoは今、木星の周りの大きな楕円形の軌道のいちばん遠いところにいる。でも測定計器類は準備万端だから、今月の終わりごろには、探査機がこの惑星の至近を初めて通るとき、いろんな科学的仕事ができるだろう。