日本でも“ダイバーシティ”の浸透や、障害者雇用促進法の改正により、障害を持ちながら働く人の数は年々増え、2016年度の時点で47万人以上が民間企業に雇用された。2018年4月からは、企業の障害者の法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられることもあり、この増加傾向は今後も続く見通しだ。こうした時代を背景に、障害がある人の就労を、就労に必要な知識や能力の向上に必要な訓練などで支援する「就労系障害福祉サービス」の事業所も増加。各施設が特色のあるサービスを提供するようになってきている。
就職を目指す障害者のための就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を全国で展開するほか自閉症やADHDといった子供向けの学習教室「LITALICOジュニア」、子供向けのIT・モノづくり教室「LITALICOワンダー」などを手がけるLITALICO(リタリコ)は1月29日、障害がある「働きたい」人が、それを支援する就労支援事業所を検索し、マッチングする情報サイト「LITALICO仕事ナビ」を開設することを明らかにした。サービスは3月にもスタートする。
LITALICOが2017年12月に行った調査では、就労支援事業所を探したことのある人のうち、8割以上が「自分にふさわしい事業所の探し方がわからなかった」と回答(「(非常によく/まあ)あてはまる」と回答した人の合計)。同調査では、就労支援事業所をどのように探したかという質問に「パソコン(PC)で検索した」と回答した人が最も多く、6割以上となっている。ところが事業所側では、インターネットを活用したアピールに費用や手間をかけられず、新しい利用者を集めるための活動が難しいのが実情だ。
就労支援事業所は、就職を希望する障害者を支援することで(補助金をベースに)お金を得るが、彼らが企業に就職すればするほど通所者が減り、売上が下がってしまうという構造になっている。だが、事業所の実績として求められるのは就職者数。つまりは、ビジネスとして成功するためには就職者を多く出す必要があり、そのためには常に通所者を補える状況を作らないといけない。つまり集客力や問い合わせの窓口は重要だとリタリコ取締役の中俣博之氏は説明する。
そんな就労支援事業所が抱える課題の解決を目指すのがLITALICO仕事ナビ。「就労支援事業所を探したい障害者」と「新規利用者を集めて定員を埋めたい事業所」の両方の課題を解決するために提供されるプラットフォームだ。
仕事ナビでは、利用者が各事業所の情報を統一したフォーマットで閲覧でき、施設が対象とする障害種別やこだわりポイント、就職実績などを確認することで、最適な事業所を選びやすくする。また事業所は、施設の紹介ページを設けることで、ページ運用や問い合わせ管理を仕事ナビ上で一括して対応することが可能。新規利用者を集めるための時間・コストを削減することができる。紹介ページは初期費用無料で設置でき、低コストで運用可能だという。今後は年間1回以上、首都圏を中心にフリーペーパーの刊行も予定している。なお、自社で展開する就労支援事業所であるLITELICOワークスに関しては、1年間は同プラットフォーム上には掲載しないとしている。
「福祉の業界はITの業界で言えばようやく2000年代になったところ。これまで億単位の開発コストをかけて(LITALICO仕事ナビのような)プラットフォームを開発するところも無かった」——こう語る中俣氏はDeNAの出身。これまではネットの最前線でビジネスをしていたが、社会をよくすることをビジネスとして手がける同社に共感して2014年にリタリコに参画したという。同社はネット企業出身者などエンジニアの採用も進めており(執行役員CTOの岸田崇志氏もグリーの出身だ)、発達障害児向け学習アプリなどの開発も行っている。