MesosphereのData Center Operating System(DC/OS)は、デベロッパーやアドミンがデータセンターをまるで一台のコンピュータのように扱えて、その上でソフトウェアによるコンテナに収めたアプリケーションを運用する、という単純化に徹した抽象化システムだ。それは、クラスタ管理システムのApache Mesosや、スケジューラーChronos、コンテナオーケストレーションプラットホームMarathonなど、多くのオープンソースプロジェクトを利用している。
このほどMesosphereは、DC/OSの完全なオープンソースバージョンをローンチして、同社のオープンソース戦略をさらに一歩前進させた。またこれを機に、名前にスラッシュ文字のあるDC/OSを、プロダクトの正式名にした。今やDC/OSを軸とする同社のパートナーは60社以上にのぼり、その中にはMicrosoft, Hewlett-Packard Enterprise(この2社は同社に投資),NGINX, Puppet, EMC, Autodesk, Cisco, Accentureなどがいる。Microsoftはすでに、このオープンソースバージョンを同社のAzure Container Serviceに取り入れている。
Mesosphereは曰く、“DC/OSのすべてのパートナーがコードに初期からアクセスし、各社なりのやり方でプロジェクトの成長と形成を本格的に支援した”、と。
しかしそもそも、DC/OSの主要構成部位は最初からオープンソースだったでなないか? たしかにそうだが、今回同社がオープンソースにするのは、そのGUIやロードバランサーなど、プロプライエタリなツールだった部分だ。DC/OSを独自にハックしたいデベロッパーは、これからは自分が有料のエンタープライズ顧客でなくてもさまざまな機能にアクセスできる。
ある意味でMesosphereは、ソフトウェアのほとんどすべてをオープンにして、その上の特殊なツールやサービスを売るという、オープンソースビジネスの標準形をビジネスモデルにしている。
深夜に突然行われた今回の発表の真のねらいは、オープンソース化そのものよりも、パートナーシップのより強固な育成にあると思われる。GoogleはKubernetesのコアな部分をオープンソース化して、同社自身のデータセンターでプロダクション・レベルのコンテナをどのように管理運用しているかを明らかにすることによって、それを軸とするエコシステムを急成長させた。その中には、Docker, Box, Intel, Red Hat, Twitterなどが支えるCloud Native Computing Foundationもいる。
Dockerにも同社独自の、データセンター向けコンテナ管理システムがあり、その知名度も高く、大きなエコシステムが形成されている。
これら3社のプロジェクトは、それぞれ異なるワークロードをターゲットにしているが、しかし長期的には、全社のビジョンが(“実装が”ではなく)ひとつに収斂し、各社はサービスと、提供するデベロッパー体験で差別化を図ることになるだろう。
当然ながらDC/OSのエンタープライズバージョンには、モニタリングツールやエンタープライズのセキュリティとコンプライアンスツール、高度なネットワーキングとロードバランスなど、オープンソース化されていない機能がいくつかある。Mesosphere InfinityとMesosphere Velocityも、前からエンタープライズバージョンで提供されているツールの一環だ。
MicrosoftやHPEなどが投資家となり、彼らとのフォーマルな関係を築いたことにより、同社のコアツールの開発はより迅速になるかもしれない。同社の今日の声明は、こう述べている: “Mesosphereでは、全員がオープンソースの熱心な信者だ。オープンソースのソフトウェアは、作者のビジョンの限界を克服することに役に立ち、ユーザーやパートナーやコントリビューターの活発なコミュニティを育てるから、弊社のDC/OSも新しい要求やユースケースを知る機会が増え、より高度に成長していくことができる”。