MicrosoftはGoogleとの訴訟を終わらせ、互いに協力する道を選んだ

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昨日、MicrosoftはGoogleとの法的な争いを終結させ、検索大手との長い戦いが終わった。その行動は、Microsoftを孤立させるものではなかった。この終結は、自社のエゴではなく、カスタマーを中心に考えるという継続的な取り組みに沿う行動だった。Apple、SalesforceやBoxなどとの合意を拡大することや意味のない法的な争いを終わらせることでMicrosoftは公に向け、全く新しいスタンスを打ち出し、新鮮な方法でビジネスに取り組もうとしている。

昨日のBloombergの報道では、2社は今後も互いに協力すると発表し、争いを終結させたと伝えている。

「GoogleとMicrosoftは特定の特許に関して互いに協力すると同意し、今後もカスタマーの利益のために他の分野においても協力関係を築いていく」と、大手テクノロジー企業は共同声明で伝えた。

カスタマーに焦点が当てていることに注目したい。これは偶然ではないだろう。

アナリストや他の業界ウォッチャーに聞いても、一貫して同じ話を聞く。CIO(最高情報責任者)らはツールを連携させたいと考えている。そのためにベンダーに互いに協力してほしいと考えているが、戦いを起こしている者同士は到底協力できない。それはあまりに難しいことだ。

Microsoftは話に耳を傾ける気になったようだ。他の大手企業と同じようにMicrosoftが市場のシフトを見ることは無益なことではない。CEOのSatya NadellaはMicrosoftの現状に気が付いている。非協力的なのはたいていMicrosoftの方で、闇雲に訴訟を起こす手段はこれ以上通用しなくなると。

友人を作り、影響力を持つ

先週のSalesforce.comのDreamforceのカスタマーカンファレンスでNadellaはステージに登場した。このことについて少し考えてみてほしい。MicrosoftがSalesforceを特許侵害があるとして訴えたのは、そう昔のことではない。また特許関連の訴訟だった。どう思うだろうか?

その時期のMicrosoftは、弁護士があまりに社内で大きな権力を持ち、目に入る者を誰かれ構わず訴えていたが、その風潮は変わってきている。Nadellaが指揮する新しい時代について人々はこれまでとは違う確かな変化に気づいている。それは見栄えを良くしたり、広報に力を入れるだけのことではない変革だ。

プラットフォームのベンダとしては特に、互いに協力し、カスタマーが本当に困っていることを解決することが義務付けられています。

— Satya Nadella

これは、非常に大きな文化的なシフトがMicrosoftの中で起きていることを示唆している。これは、Microsoftのこれまでの非協力的な態度を見てきた長年の業界ウォッチャーを驚かせた。Nadellaの指揮の元でMicrosoftは変わった。注目している人にとってその変化は一目瞭然だ。

Nadellaはその変革の一環としてDreamforceに登場した。MicrosoftとSalesforceのプロダクトは連動し、両社は協力関係と友情で結ばれているとBenioffは彼の登壇時にそう紹介した。

「Satyaと私は良き友人となりました。彼が私たちの招待に応え、このカンファレンスに来てくれたことを嬉しく思います。彼は素晴らしい人、素晴らしいヴィジョナリーで、素晴らしい会社の素晴らしいリーダーです」とBenioffは大勢の聴衆が集まる会場でそう伝えた。

彼がとても好意的な紹介をしたのは驚くべきことだ。WiredのジャーナリストであるJessi HempelがNadellaに、業界内で協力することの課題について尋ねられたところ、Nadellaは広く業界全般について話した。

「私たちの業界を見て、これからどのようにこの業界が成功するのかと考えます。私たちのカスタマーに価値を提供する方法でしか成功することはできないでしょう。私たちのカスタマーは、彼らにとって最も分かりやすく意味のある選択をするでしょう。そしてそれは、いつも同じ選択をするとは限らないのです。彼らは異なるアプリや複数のプラットフォームを全て使用します。プラットフォームのベンダとしては特に、互いに協力し、カスタマーが本当に困っていることを解決することが義務付けられています」とNadellaは言う。

また、これをゼロサムの競争ゲームとは捉えていないと言う。もちろんMicrosoftは市場の中で激しい競争を繰り広げるだろうが、さらに大きなビジネスの機会はデジタルへの転換にあると考え、パートナーシップを組むことはそれの機会を拡大することに他ならないとした。

Box、AppleとMicrosoftが同じ場に

別の日、Boxが開催したカスタマーカンファレンスのBoxWorksでは、さらに友好的な関係をステージから見てとることができた。 これまでSalesforce、Box、Microsoftの関係は良好とは言えなかった。Boxが最初に評判になったのは、カルフォルニアの国道101号線沿いの巨大な看板で、彼らが最初に競合他社と位置づけていたMicrosoftのSharePointをあざ笑うものだった。

Box is like SharePoint without the...billboard from 2009.

しかし時は過ぎ、会社も変わった。BoxはApple、IBM、Microsoftといった多くの企業と重要な関係を築いている。さらに、Boxは彼らのサービスがMicrosoftのクラウドベースのOffice 365とどれだけ上手く統合しているかを強調している。CEOのAaron Levieは、Boxを利用するカスタマーがその統合を求めていて、両社はそれを実現することにしたと話した。

AppleもMicrosoftと友人になる方法を探している。長年、両社は因縁のライバルだったが、Tim Cookは火曜日に開催されたBoxWorksで仲直りを試みていた。

「AppleとMicrosoftは、競争することより協力できることの方が多いでしょう。それをカスタマーは望んでいます。Mac対応のOfficeは大きな流れです」とCookは聴衆に伝える。「Microsoftとパートナーシップを組むことは、カスタマーにとって良いことです。だから、そうしようと思います」。

ここにも出てきた。「カスタマーが求めるもの」なのだ。Microsoftも確かにそれに気がついている。友人でライバルの企業もそうだ。カスタマーは深いレベルでの統合を望んでいて、どの会社もその声を聞き、互いに協力しようとしている。

数年前まで、これらのバラバラの企業が一致団結することなど考えられなかった。しかし、現在それがビジネスを行う方法であり、Microsoftも私たちの目の前でその動きに参加しようと変化し続けている。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

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TechCrunch Japan

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