MITメディアラボの新所長は元NASA副長官のデイヴァ・ニューマン教授

学際的研究・開発のパイオニアであり各方面に大きな影響を与えてきたMIT Media Lab(マサチューセッツ工科大学メディアラボ)の新所長はいわば裏庭から選ばれた(MIT News記事)。候補者は世界中に数多くいたが、オバマ政権におけるNASA副長官で現在MITで航空工学と宇宙工学の教授を務めるDava Newman(デイヴァ・ニューマン)氏がこの重要な知的ハブを指揮することになった。

Media Labは自由な気風の中、知性とテクノロジーとの融合によって数々の業績を上げてきた。しかし伊藤穰一氏の辞任以後、1年以上リーダー不在の状態が続いていた。伊藤氏の辞任は児童買春容疑で有罪となって自殺したJeffrey Epstein(ジェフリー・エプスタイン)氏がメディアラボに出資していたことが明らかとなったことによる。報道によれば見返りとしてエプスタイン氏はメディアラボの研究に特別のアクセスが許されていたという。

新所長はまったく予想外の人選ではない(ニューマン氏とMITの関係は何十年も前からだ)が、新しい血を入れることになったことは確かだ。メディアラボは60人の候補者を選び、うち13人と面接したという。最終的にニューマン教授を選んだ理由についてMITのHashim Sarkis(ハシム・サルキス)学部長は任命を発表したメールで次のように述べている。

候補者はいずれもそれぞれの分野でトップクラスの人々でしたが、ニューマン教授は、研究の先駆性、幅広い学際的な取り組み、強いリーダーシップで際立っていました。ニューマン教授はデザイナー、思想家、メーカー、エンジニア、教育者、メンター、組織者、コミュニケーター、未来派、ヒューマニストであり、そして重要なことですが楽観主義者なのです。

ニューマン教授は先週TechchCrunchの宇宙関連の話題を扱うセッション、TC Sessions:Spaceで講演を行い、偶然にも(ではないかもしれないが)、NASAが準備している有人月面探査であるアルテミス計画のような大きなプロジェクトに参加することの重要性についてビジョンを述べた。


TC Sessions:Space

「(アルテミス計画には)科学者とエンジニアが集まるでしょうが、プロジェクトにはアーティストが必要であり、デザイナーも必要です。つまりビジョナリーが必要なのです」と彼女は述べた。

リーダーが持つべき重要な資質は指揮下に入る人々の話によく耳を傾けることだが、ニューマン教授はまさにこの点から仕事を始めるようだ。MITの発表声明でこう述べている。

多くの人々に聞き取りを行って学んでいくことから仕事を始めるつもりです。人々が働く現場に出向き、素晴らしいアイデアをすべてテーブルの上に置いてもらうよう勧めます。これが教職員、学生、スタッフなどコミュニティ全体と協力し、人々の創造性を活用して前進していくための最善の方法だと思います。仕事を始めるのが待ちきれません。

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画像クレジット:Dougas Sonders/Dava Newman/Guillermo Trotti

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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