Motaの99ドル3Dプリンターは「うますぎる話」だった

「手の届く価格で高品質な3Dプリンター」というのは「うますぎる話」だったと判明した。考えてみれば当然だ。

3Dプリンター市場は一種の不完全燃焼状態を続けている。夢を追うアーリーアダプターが熱狂して大金を投じるところまでは来たが、本格的な普及までまだまだ先は長い。特に価格の大幅な低下とプリント過程の簡易化は避けて通れない高いハードルだ。

市場調査会社のGartnerが唱えたハイプ・サイクル理論を借りるなら、現在の3Dプリンター市場はまさしく膨れ上がった過剰な期待が現実によって裏切られるという「幻滅期」に落ち込んでいる。

そこで3Dプリンターのメーカーは困難な選択を強いられる。大量販売が可能な安定期(Gartnerの図で「生産性の大地」とされる)を招くためには、一般ユーザーを取り込めるところまで価格を大幅に切り下げねばならない。高価な部品のコストを下げるにも大量生産しかない。ところが価格の切り下げを急ぎすぎると、製品の品質の低下を招く。ガラクタしか出力できないガラクタの製品になってしまう。

この点で最近、痛い教訓を得たのがMotaだった。7月の始めにMotaはKickstarterでMota 3Dという「誰にも手の届く価格の3Dプリンター」を製造するキャンペーンを開始した。大量生産効果を狙ってMotaは製品に99ドルという破格の値付けをした。おそらくは数千万ドルという規模の投資を集める計画だったのだろう(最近、この種のクラウドファンディングでは例外的な成功を収めたThe Micro 3Dプリンターでさえ数百万ドルの投資を集めるにとどまっている)。

開始後、数日でMotaはKickstarterキャンペーンを中止した。共同ファウンダーのKevin Faroは投資者に対してこう説明している。

われわれは実現不可能な約束をしたくないし、傑出したレベルに達していない製品の出荷もしたくありません。残念ながらわれわれの想定する高い品質を実現するためには大きなコストがかかることは判明しました。ここ数日の皆さんのコメントから多くのことを学びました。われわれは3Dプリンター・テクノロジーの本格的な普及が可能になるような価格引き下げを実現すべくさらに鋭意研究を続けることとしました。 このような次第で、われわれはこのプロジェクトをキャンセルします。

Motaの名誉のために断っておかねばならないが、彼らがプロジェクトをキャンセルしたのは(数日ですでに6万5000ドルが集まっていた)、金を集めたもののいっかな製品が出荷できなかったり、品質の劣った製品を出荷したりするよりずっとましだ(ハードウェアのクラウドファンディングではしばしばそういうことが起きている)。

もうひとつMotaの失敗の原因となったのはクローズドなビジネスモデルだった。Mataは3Dフィラメントに専用カートリッジを利用する。Kickstarterでは「ユーザーを縛り付けて高いカートリッジを売る」商法として批判が集中した。しかしフィラメント・カートリッジを自由に選べるようにすれば、現在のところ、プリンター本体をそう安くすることはできないだろう。

3Dプリンターのような初期のテクノロジーの市場は厳しい場所だ。今後も遠大なビジョンがプラスティックの現実の前に敗れ去ることが繰り返されるに違いない。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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