ハードウェアはハードだ。このサイトのアーカイブを見ると、新しい家電ガジェットを機能させるための大胆な試みが何十も出てくる。その中には、非常に身近に思えたものもあった。しかし、他のスタートアップと同様に、ほとんどのハードウェア企業は、原子をなにか買う価値のあるものへと変えるというハードコアな難題に直面する。
ハードウェアのハードさを記念して、アイデアファクトリー / アートハウスのMSCHFは、5つの「Dead Startup Toys」をソフビフィギュアとしてリリースした。販売価格は1個39.99ドル(約4400円)、5個セットのコレクターズバンドルは159.99ドル(約1万7650円)。これらは「失敗したスタートアップのアイコン」と表現されており、販売サイトではそれぞれの試みの栄枯盛衰の歴史が紹介されている。Theranosのミニラボのように実際には存在しなかった製品から、Jiboのようなタイミングの悪かったパイオニア、Juiceroのような過剰エンジニアリングの見本まで、さまざまなケースがある。
筆者はこれまでのキャリアの大部分を、コンシューマーハードウェアを市場に投入するという難しく複雑なプロセスを吸収し、理解しようと努めることに費やしてきたので、このようなものが大好きだ。ここには悪意のレンズがあり得るかもしれないが、私はそのようには見ないことを選ぶ。不正は不正であり、TheranosやCoolest Coolerのような大失敗の背後にいる人々は、これまでも、そしてこれからも、法制度のビジネス面を見ることになるだろう。
しかし、大きなビジョンやハードウェアの夢は、必ずしも明確に「失敗」という穴にはまり込むとは限らない。ハードウェアはうまくいっても、サプライチェーンがうまくいかないこともある。ビジョンはしっかりしていても、製品が早すぎたということもある。製品が失敗する理由はいくつもあるが、(それらが実際に存在した限りにおいては)あるものがこの世界に存在することを望み、それを足をばたばたさせ泣きわめきながら存在するまで引きずってきた人々や先見者たちのチームには、しばしば敬意を払わなければならない。それも崖っぷちから。
フィギュア自体はとてもよくできていて、鮮明なスタンピングと正確なディテール、読みやすいテキストときれいに印刷されたロゴが特徴だ。また、いくつかのフィギュアは可動式で、アクセサリーも付いている。「Coolest Cooler」には悪名高いブレンダーが、「Juicero」には取り外し可能な(もちろん独自仕様の)「フレッシュベジ」パックが付いている。これらの商品のクオリティは全体的に非常に高く、私がこれまでに購入してきた、良い方のノベルティグッズのいくつかと同列に並べることができるだろう。Coolerのフィーチャセットのようにうわべだけではない。
パッケージもよくできていて、それぞれがカスタマイズされた箱に入っており、すべての商品が入ったビッグセットはさらに大きなラックボックスに入っている。また、背面にはベンチャー企業が潰れた理由を記した「死因」が記載されている。MSCHFは手間をかけてこれをかなりプレミアムな「トイ」ドロップにしようと努力したが、それは物理的な製品の記念碑であることを考えると、ふさわしいことだ。
MSCHFの多くの作品と同様に、「待てよ、これは合法なのか」という要素もある。というのも、これらの製品に関連するIPが落ち込んだ穴がたくさん存在するかもしれず、それらの穴の中にはまだ法人が存在する可能性もあるからだ。しかし、そのような危険な要素こそが、これまで多くのプロジェクトを共鳴させてきたのだから、彼らは心配していないと思われる。
なんといっても、獣の刻印が入っているフィギュアはない。少なくとも物理的には。
【「獣の刻印」に関する訳註】MSCHFはラッパーのLil Nas X(リル ナズX)とコラボした「サタンシューズ」を1分足らずで完売したが、NIKE(ナイキ)にスニーカーを無許可でカスタマイズしたとして告訴され、両社は2021年4月に和解した。
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:MSCHF、失敗
画像クレジット:Matthew Panzarino
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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Aya Nakazato)