東京のビットコイン 取引所、Mt.Goxの前CEO、マーク・カルプレスはアーリーアダプターに巨額の損失を与えたようだ。現時点ではカルプレスがどれだけの金額を失くしたのか、あるいは盗んだのかは明らかでない。しかし日本の警察はカルプレスが3億8700万ドル相当のビットコインを失ったとしている。
カルプレスのデタラメな経営には弁解の余地がない。Japan Timesによれば、カルプレスはMt.Goxを運営中に何百万ドルものビットコインを自分の口座に「テスト」と称して加えていたという。Mt.Goxはめちゃくちゃな人物とめちゃくちゃな行動が支配する西部劇のように無法で理不尽な初期のビットコインの時代を代表する存在となった。カルプレスの逮捕でその時代が終わったことを私は心から歓迎するものだ。
Nahaniel Popperの近著、Digital Goldによれば、ビットコインはシリコンバレーの成功物語とは全く違うことが分かる。ビットコインの誕生にはガレージもなくオフィスもなく、IRCによるチャットのチャンネルとフォーラムの議論があるだけだった。要するにメインストリームとは異なる傍系のテクノロジーとして発展した。幸いなことに、今ようやくビットコインはメインストリームに取り込まれようとしている。
これは非常に望ましいことだ。
1年ほど前に、私はビットコインには重大なイメージ問題があると指摘した。つまり当初はオタクのゲームだったのが、テクノロジーの価値のためでなく、単に金になりそうだということで投資家が集まり始めた。こういう望ましくない状態はカルプレスが破裂させた爆弾によって吹き飛ばされた。そしてブロックチェーンによる暗号化というテクノロジーの価値が再認識されつつある。
Ethereumはブロックチェーン・アルゴリズムによる分散化をあらゆる方面に拡張するプラットフォームを目指している。金融機関も時代遅れのACHやSWIFTシステムをブロックチェーンによる分散的システムに置き換えようと試みている。一般の人々もl国家のデフォールトのような緊急事態からの避難場所としてビットコインを使い始めた。ウィンケルヴォス兄弟は近くビットコイン取引所を上場しようと準備中だ。ビットコインの二幕目が開こうとしている。さまざまな興味ふかい展開が期待できる。
Mt.Goxの不祥事でアーリーアダプターが巨額の金を失ったのは深刻きわまりない悲劇だった。カルプレスが奸智に長けた横領犯だったのか単なる愚か者だったのか、そして消えたビットコインはどこに行ったのかは永遠のナゾになってしまうかもしれない。しかし金融規制当局がブロックチェインを監視するようになれば、二度とMt.Gox事件が起きないように対策できるだろう。
デタラメな経営によって銀行から大金が消えることは日常茶飯事だ。しかしいかに経営がデタラメでも資金の移動がブロックチェーンで跡づけられていれば、簡単に金が消えることはなくなる。 それによって匿名性は一部失われるかもしれないが、金融機関がどのように資金をやりとりしているのかが透明化されれば公衆は多くの有益な情報を得られるだろう。
私は以前よりビットコイン の将来に楽観的だ。それは魔法の弾丸ではないし、現在の通貨を置き換えるような存在でもない。しかしマイクロ・ペイメントにとって、また特に銀行に口座を持てない出稼ぎ労働者が故国に送金する手段として必須のものなるだろう。カルプレスの逮捕は、こういう道化師や悪党にビットコインのビジョンを破壊させないようにするための重要なステップだと考えるべきだろう。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)