オープンソースライセンスについて言えば、開発者たちは十分な選択肢をもっている(GPL、BSD、MIT、Apacheなど)。それぞれのライセンスには長所と短所がある。同じことは、商用ライセンスにも適用される。しかしMySQLの創始者Michael “Monty” Wideniusと共同創始者David Axmarkは数年前に、別のモデルを思い付いた: ビジネスソースライセンス (BSL)である。
この新しいライセンスは、多くのスタートアップがそのソフトウェアに対して選択しているクローズドソースかつオープンコアのライセンスへの代替策を提供するものだ。そしてWideniusの新会社MariaDBは、初めてそのライセンスをプロダクトの1つに適用した。
いくつかの点で、BSLは(オープンソースのひねりを加えた)ソフトウェアライセンスのフリーミアムのモデルに似ている。Wideniusが私に説明したように、BSLは本番運用時にどれくらいの規模のサーバ/CPUその他の利用を許諾できるかの指定を、開発者に認めるものだ(利用制限は本番利用にのみ適用され、テスト環境には適用されない)。指定規模以上での利用には、ライセンス料が発生するという仕組みだ。
これはきわめて標準的な商業用ライセンスのように聞こえるが、工夫が加えられている点は、ソースコードのすべてが常に参照可能であることと、BSLライセンスには有効期限があることだ。一定期間後(例えば3年とか)にライセンスが期限切れとなり、その後は開発者が選択したGPLその他の任意のライセンスに戻る。
「これは全く新しいエコシステムを生み出すことができます」とWideniusは私に語った。「そしてオープンソースが一度に手に入らなくても、将来的にはより多くのオープンソース・アプリケーションが生み出されます」。これらは力強い言葉だ。オープンソースの世界での彼の経験を踏まえるならば、彼とAxmarkがBSLを思い付いた経緯と理由を詳しく見てみる価値はある。
これは全く新しいエコシステムを生み出すことができます。そしてオープンソースが一度に手に入らなくても、将来的にはより多くのオープンソース・アプリケーションが生み出されます。
Wideniusはライセンスについて多大な経験を持っており、MySQLのために作ったライセンスのおかげでかなりの財を成すことができた。「MySQLのようなプロダクトにとってGPLは本当によく出来たライセンスです、なぜならMySQLは企業がそのプロダクの中に統合したいようなものだからです」と彼は説明する。GPLライセンスのプロダクトを自社のプロダクトに統合するには、自社のソフトウェアもまたオープンソースにする必要がある。そうしたくないユーザーに対しては、WideniusとAxmarkが設立したMySQL AB社は、商用ライセンスを提供していた。
彼らが2008年に、MySQL ABをSunに売却時したときには、同社の収入の70%がライセンスから来ていた。「それがMySQLが巨大な価値を持っていた理由です」とWideniusは語る。「私たちはプロダクトの会社であり、人々は特定の状況下ではそれに対して支払いを行わなければなりませんでした」。
Wideniusは、実際にはBSLのバリエーションをもっと早くから使用したいと考えていた「…のですが、当時の経営陣は現在に比べて先を見通して居なかったため、クローズドソースで行くことになったのです」。そして数年前のこと、彼は自身のベンチャーキャピタル会社Open Oceanに多くのスタートアップがやってきて、彼らのエンドユーザープロダクトをオープンソースにしたがっていることに気が付いた。そうした企業のためには、MySQLのためには上手く行ったデュアルライセンスモデルは上手く働かなかった。なぜなら彼らは他のソフトウェアを自身のプロダクトの中に埋め込まなかったので、ライセンスに対して支払いをする理由がなかったのだ。
オープンソースにしたいと考えているほとんどの企業が、そうしたケースでやろうとしていることは、オープンソースツールの周りにサービスを提供するビジネスの構築だ。Wideniusはこのビジネスモデルがうまく行くとは思っていない(彼はそれがいくつかの会社では上手く行っていることを認めてはいるが)。「これは、プロジェクトをサポートする企業のためには上手くいきます – 人々はUbuntuのためのサポートを与え、そこからお金を稼ぐということです」と彼は言う。「しかし、ライセンスを持っていない企業は、プロダクトを作ることはほぼできません」。それは何故か?もしあなたが良いサポート担当から10パーセントのマージンをとるとすれば、1人の開発者を雇うためには10人のサポート担当が必要となる。彼の見方では、このモデルはスケールしない。
そこでMariaDBでは、チームはそのMaxScaleデータベースプロキシの最新バージョンをBSLで提供することにしたのだ(MariaDB自身はMySQLの変種なので、MySQLが従っているGPLにこの先もずっと従う)。
Wideniusが認識している限り、2つまたは3他の企業もすでにこのライセンスを利用しているが、彼は今は多くの企業が大企業が動くのを待っているのだと見ている。チームはまた、開発者が自身のソフトウェアをBSLに移行する際のフレームワークを与えるドキュメント作りを行っている。
新しいプロジェクトのためにBSLを採用したい開発者は、わずか4行を記入するだけだ:製品の名前、それ以上はユーザーが対価を払わなければならない制約条件、いつライセンスがオープンソースライセンスに変更されるかの情報、そしてどのライセンスになるのかの記述。
プロダクトの更新をするたびに、BSLライセンス期限も延長することになるので、開発者は自身のソフトウェアを最新に保つためのインセンティブが得られることになる。しかし彼らが最新版を提供しない場合 – またはユーザーが古いプロダクトで満足の場合 – にはBSLライセンス期限の訪れとともに新しいライセンスが適用されることになる。これはまた、開発者が廃業したときには、BSLライセンス期限以降にソフトウェアはオープンソースとなり、コミュニティが仕事を継続できることを意味している。
「多くの人が、間違った理由でこのライセンスを批判しています」とWideniusは私に言った。「しかし私は、これはより多くのオープンソースを生み出すことによって、オープンソースの将来をより良くするチャンスだと思っているのです – たとえ少々時間の遅れがあるとしても」。
[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)