NASA、宇宙飛行士の訓練に複合現実システムを利用

NASAはビジュアル化のために常に最新技術を取り込んできた ― たとえそれが他愛のないエンターテイメントのために開発された技術であっても。最近本誌はNASAのホログラムを使った火星の展示を紹介した。また数多く3D資料開発者や教育者向けにNASAから提供されている。そして米国航空宇宙局は、Epic Games社と提携して同社のUnreal Engineを利用した複合現実による国際宇宙ステーション・シミュレーターを作ろうとしている。

NASAの宇宙飛行士の資格を得るために、候補者は最長2年間の訓練期間中に、無重力下での作業やスペースシャトルと国際宇宙ステーションの各部分の移動、飛行士同志の救急措置などに備えて、厳しい講義とシミュレーションを体験する。

従来、宇宙飛行士の訓練といえば、「無重力環境訓練施設」― 620万ガロン(2万3470㎥)の水を擁する巨大なプール ― に飛び込み、NASAのスペースシャトルおよび国際宇宙ステーション(ISS)の一部の実物大モデルである宇宙船モックアップ施設で時を過ごすことを意味していた。しかしこうした施設は収容能力が限られている。物理的設備と複合現実を組み合わせることによって、宇宙飛行士訓練生はスキル向上に長い時間を費やすことができる。

Unreal Engineの主要なライバルであるUnityもNASAと協同作業をしてきた。ご存じない方のために書いておくと、いずれの会社も企業アプリやVR体験にも応用されているゲームエンジンを作っている。これまでのところUnityを使っているゲームデベロッパーの方がUnreal Engineよりも多い。しかしUnreal Engineは、BMWやMcLaren、Ikea、Lockheed Martinなどの「有力ユーザー」がいることを誇りにしている。

Unreal EngineとNASAが今月発表したビデオによると、複合現実システムには、エクササイズマシンや保守作業に用いるツールなどISSに装備された機器の様々な要素が組み込まれている。シミュレーターは以前教育用に公開されたMission: ISS for Oculusとは別のシステムだ。

この複合現実ISSシステムは、重力シミュレーターのARGOS(Active Response Gravity Offload System)で宇宙飛行士訓練生の心を奪う。ロボティック・クレーン装置を利用して、訓練生に微小重力、月面重力、火星重力を体験させる。NASAはこの複合現実システムを宇宙飛行士や技術者の訓練に使うだけでなく、新たな居住環境のデザインにも利用する計画だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。