今から3年前の11月16日に火星のエリシウム平原に降り立ったNASAの探査機InSightが送ってきた火星の環境騒音データから、科学者らは地殻からマントル、核に至るまでの最初の数十mの状態を分析し、画像化しました。
我々の住む地球では、環境騒音といえば海、人間などの活動、風、そして大地そのものなど、多様な音源からのごちゃ混ぜの音になっています。しかし、大気がほとんどなく水の海もない火星では、上に挙げたなかの”大地そのもの”からの音が環境騒音の大部分を占めます。
InSightは搭載する地震計のデータから火星の環境騒音データを生成しており、それをスイス地震局(SED)とスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)が定期的に分析することで、火星内部がどのように積層しているかを調べました。SEDはこれまで数年のあいだ、地球上の地質構造を調べるために環境騒音データを分析してきており、その手法を火星に応用した格好です。
SEDによると、InSightが降りた場所の足もとから深さ3mまでは砂の層で、そのすぐ下には過去の隕石の衝突によって火星表面から巻き上げられて堆積した可能性が高い、約15m厚の岩石帯があるとのこと。さらに堆その下には、火星が冷え、乾燥した状態になった約17億年前ごろの溶岩層があり、その下にはさらに堆積物で分断された古い溶岩流の層があるとのこと。
この古い層は、地球もまだ火山活動が非常に活発だった約36億年前にまでさかのぼると見られており、太陽系の兄弟である地球と火星がその頃までは同じように成長の道を歩んでいたことが推測されます。
地球と火星はかつては同じように大きな海や大気層を持っていたと考えられます。しかし、その後なぜか火星だけは大気を保護する役割を持つ磁場を失い、太陽から放出される荷電粒子の太陽風が、保護を失った火星の大気を徐々に剥ぎ取っていったその結果、いまや地球と火星は見た目にも対照的な星となってしまっています。
今回の論文著者であるCedric Schmelzbach氏は、地球上で開発された手法を使用して、火星の地層構造が解析できることが証明できたと述べています。地球内部を知るための技術は他にもあり、それらを応用すれば、いつか我々の2番目のふるさとになるかもしれない赤い星についての理解がさらに深まるかもしれません。
(Source:Nature Communications。Via Space.com。Engadget日本版より転載)