Netflixが「ストレンジャー・シングス」や「ウォーキング・デッド」のゲームを開発するフィンランドのNext Gamesを約83億円で買収

ロシアによるウクライナへのいわれのない侵攻を受け、フィンランドがNATOへの加盟を検討する中、フィンランドではまた新たなM&Aが進行している。米国時間3月2日、Netflix(ネットフィリックス)がフィンランドでモバイルゲームを開発するNext Games(ネクスト・ゲームス)を、総額6500万ユーロ(約83億円)で買収することを発表した。Next Gamesはヘルシンキの市場に上場しており、今回の買収は1株あたり2.10ユーロ(約268.1円)で全額現金による株式購入として行われる。この取引はまだ完結していないが、Next Gamesの取締役会はすでにこの取引を承認して株主に推奨しており、2022年第2四半期に完了する予定だ。

今回の契約は、ビデオカタログの補完としてゲームコンテンツを充実させたいNeflixの大きな戦略の一環であり、Next Gamesはまさにうってつけの相手なのだ。モバイル向け無料ゲームを提供するNext Gamesは「ストレンジャー・シングス」や「ウォーキング・デッド」など、Netflixの人気作品に関連するタイトルをすでに開発しているため、両社の絆はすでに強い。今回の契約により、その絆がさらに強まり、Next GamesのIP、人材、アプリ内課金の既存ビジネスがとりこまれるために、Netflixのマージンは、単にブランドのライセンス出しているとき以上に改善されることになる。

Netflixのゲーム担当副社長であるMichael Verdu(マイケル・バードゥ)氏は「Next Gamesは、経験豊富な経営陣と、エンターテインメントフランチャイズに基づくモバイルゲームの優れた実績、そして確かな運営能力を備えています」と声明で語っている。「Next Gamesが戦略的地域と重要な人材市場の中で中核スタジオとしてNetflixに加わり、社内のゲームスタジオの能力を拡大できることをうれしく思っています。ゲーム事業はまだ始まったばかりですが、Next Gamesとともに、世界中の会員のみなさまに喜んでいただけるワールドクラスゲームのポートフォリオを構築していけると確信しています」。

Next Gamesの従業員数は2021年末で120名、直近の年次決算では2020年の売上高は2720万ユーロ(約34億8000万円)となっている。この年の売上の約95%は、ゲーム内(アプリ内)課金によるものだった。今回の買収で、既存のタイトルをさらに充実させ、Netflixのカタログを充実させるための投資を行うことができる。

2013年にNext Gamesを設立し、CEOを務めるTeemu Huuhtanen(ティーム・ホーフタネン)氏は、フィンランドの幅広いゲームエコシステムで育った人間であり、長年にわたってゲームの新境地を開拓する上で大きな役割を担ってきた。Next Gamesの直前には、Angry Birds(アングリーバード)のパブリッシャーであるRovio(ロビオ)の重役を務めていた(当時はまだRovioがアプリストアの中で圧倒的な存在感を示していた頃だ)。その前に彼は約10年間Sulake(スレイク)にいた。約10年をSulakeで過ごし、Habbo Hotel(ハボホテル)(現在はHabbo[ハボ]と呼ばれ、その間に多くの論争を乗り越えた)を開発してオンライン仮想世界の先駆者となった。

ホーフタネン氏は声明で「私たちは、世界で最も愛されているフランチャイズをベースにした、真の、長期的なインタラクティブエンターテインメントを創造し、グローバルエンターテインメントビジネスのパートナーとなるというビジョンの実現に、変わらない焦点を当ててきました」という。「世界最大のストリーミングサービスであるNetflixと手を組むことで、世界中の人々が楽しめるインタラクティブな体験を創造するという当社の戦略を論理的かつ刺激的に継続する機会が得られます。Netflixとの緊密なコラボレーションによる『ストレンジャー・シングス:パズル・テイルズ』は、私たちがともに強力なパートナーシップを築くことができることを証明しています。これは、あらゆる面でスタジオをレベルアップさせ、ともに使命を果たしていくためのまたとない機会です」。

CrunchBaseのデータによると、Netflixは、その規模の割にこれまでわずか5回しか買収を行っていない。Next Gamesは、その中ではゲームに特化した最初の企業だが、その他に買収したものは、視覚効果スタジオ、若年層向けインタラクティブコンテンツメーカー2社、アニメコミックパブリッシャー、Roald Dahlの遺産であり、同社のM&A戦略には、常にゲームの側面があったことは間違いないと思われる。

また、ディズニーのような企業が、自社のストリーミングビデオ・プラットフォームの品揃えを充実させるために、主要なビデオコンテンツを引き上げてNetflixの足を引っ張り続けることができる時代にあっては、これはNetflixが自らのプログラムを充実させる一手段となっている。Next Gamesのような企業の買収は、自社専用の作品を制作または購入し、それをベースに複数の媒体や体験に展開する大きなフランチャイズを構築する戦略を明確にするものだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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