Netflix(ネットフリックス)は、同社のトランスジェンダーの従業員リソースグループを率いて10月20日にストライキを計画していた社員を解雇したことを、事情を知るNetflixの現および元社員がTechCrunchに認めた。この解雇については、The Verge(ザ・ヴァージ)が最初に報じた。
Netflixの従業員は、共同CEOであるTed Sarandos(テッド・サランドス)氏が、最近公開されたDave Chappelle(デイヴ・シャペル)の特別番組「The Closer(デイヴ・シャペルのこれでお開き)」について発言したことに抗議するため、ストライキを計画していた。Netflixは、この従業員を解雇したのは、内部情報を漏洩した疑いがあるからだと主張している。
「当社は、商業上の機密情報を社外に漏らした従業員を解雇しました」と、Netflixの担当者はTechCrunchに語った。「この社員の動機が、Netflixに対する失望と心の痛みであろうことは理解していますが、信頼と透明性の文化を維持することは当社の中核をなすものです」。
問題となっているリーク情報は、Bloomberg(ブルームバーグ)の記事に掲載された「The Closer」に関する内部指標のようだ。Netflixはこの一回限りのスペシャル番組のために2410万ドル(約27億5000万円)を費やしたと報じられている。これに対し、Bo Burnham(ボー・バーナム)が1人で制作した最近のコメディ特番「Inside(ボー・バーナムの明けても暮れても巣ごもり)」には390万ドル(約4億5000万円)、Netflix史上最高のヒット作となった「イカゲーム」は全9話分で2140万ドル(約24億5000万円)を投じたという。
今月初め、Netflixが「The Closer」の配信を準備していた際、従業員たちから番組中に有害な反トランスのジョークが含まれているのではないかという懸念が寄せられた。シャペル氏は、性別と生物学的な性を結びつけ、トランスジェンダーの権利を求める運動に反対する「Trans-Exclusionary Radical Feminists(超排他的急進フェミニスト)」を意味する「チームTERF」であると公言するほどだ。Netflixがとりあえず10月5日にこのスペシャル番組を配信したところ、社員やサービス加入者の中から、Netflixに対して怒りが噴出した。
このスペシャル番組が公開された翌日、NetflixのソフトウェアエンジニアでトランスジェンダーであるTerra Field(テラ・フィールド)氏は、反トランス的な表現の影響について、拡散された一連のスレッドをツイートした。「TERFのイデオロギーを促進することは(昨日、私たちがプラットフォームで行ったことですが)、トランスの人々を直接傷つけることであり、中立的な行為ではありません。これは二者択一の議論ではありません。生きていたいトランスの人々と、私たちに生きていてほしくない人々との議論なのです」と、フィールド氏は書いている。
I work at @netflix. Yesterday we launched another Chappelle special where he attacks the trans community, and the very validity of transness – all while trying to pit us against other marginalized groups. You're going to hear a lot of talk about "offense".
We are not offended
— Terra Field (@RainofTerra) October 7, 2021
その直後、Netflixは、招かれていない取締役レベルの会議に出席しようとしたとして、フィールド氏と他の2人の社員を停職処分にした。しかし、フィールド氏は、悪意を持って会議に出席しようとしたのではなく、実際には1人の取締役がリンクを共有していたため、会議に出席できると思い込んでいたことが判明し、翌日には復職させられた。
しかし、Netflixの社員の中にはうんざりしている人もいた。特に、共同CEOのテッド・サランドス氏が社員に宛てたメールの中で「スクリーン上のコンテンツが現実の害に直結するわけではない」と書いたからだ。サランドス氏は、続けて「私たちは「Sex Education(セックス・エデュケーション)」、「Orange Is the New Black(オレンジ・イズ・ニュー・ブラック)」、「Control Z(コントロールZ)」、Hannah Gadsby(ハンナ・ギャズビー)やデイヴ・シャペルの番組などを、すべてNetflixで配信しています。重要なのは、コンテンツチーム自体の多様性を高めることです」と書いている。
エミー賞を受賞したNetflixのスペシャル番組「Nanette(ナネット)」で有名なレズビアンのコメディアンであるハンナ・ギャズビーは、サランドス氏が自分をNetflixの性的少数者に対する包括性の象徴として描こうとしていることに反論した。
「テッド、あなたが認めようとしないヘイトスピーチの口笛がもたらす現実世界の影響に対処するために、私には十分な報酬が支払われていません」と彼女はInstagram(インスタグラム)に書いた。「あんたとあんたの道徳的アルゴリズム儀式なんかクソ喰らえ」。
Netflixがトランス系社員によるストライキの立案者を解雇して炎上を煽る中、同社に反感を抱く人たちの中には「cancelnetflix.com」というリンクを投稿し、Netflixの解約方法が書かれたヘルプページに人々を誘導しようとする動きが広まっている。
NetflixのLGBTQ+アカウントであるMostは「私たちはみなさんのコメントをすべて読み、より大きく、より良い、性的少数者の表現を提唱し続けるために活用しています」とツイートした。「OK、もう私たちに怒鳴るのに戻っていいですよ」。
画像クレジット:TechCrunch
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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)