Nielsenの伝統的な視聴率調査が今年から対象を一気に拡大; ゼロTV世帯も調査対象に

old fashioned tv

Nielsenが今日(米国時間3/11)発表したデータは、“ゼロTV世帯”の傾向をいくつかの数字で示している。ゼロTV世帯とは、もはやテレビを見ずに、ビデオコンテンツはコンピュータやスマートフォンやタブレットで見る、という世帯のことだ。今日発表されたデータによると、合衆国のコードカッター(cord cutter, テレビのコードを切った人/世帯==ゼロTV世帯)は500万あまりおり、2007年の300万に比べてかなり増加した。

しかしNielsenも認めているように、500万といえば全視聴者の5%にすぎない。残る95%は、リビングでふつうのテレビを見ているのだ。また、番組をテレビで見ない人も75%はテレビ受像機を持っていて、ゲーム用やDVD鑑賞用などに使っている。

また“ゼロTV世帯”の人たちも、その67%は何らかのビデオコンテンツを見ている。コンピュータで、が37%、インターネットからが16%、スマートフォンが8%、タブレットが6%だ。

zero tv

もちろん、ゼロTVでない、ふつうにテレビを見ている人たちも、コンピュータなどの上でストリーミングビデオもやはり見ている。

NetflixやHuluなどのオンデマンドサービスは、まだコンテンツの揃い具合で従来のテレビにかなわないから、完全なゼロTVの世帯は多くない。しかしNetflixなどは最近、自前オリジナル番組映画などを作り始めている。だから彼らのコンテンツの揃い具合が既存のテレビ局と肩を並べる日が来れば、テレビを見なくても平気、という人たちが増えるだろう。ただし当分、そんな日は来ないだろうけど。テレビは今でも王様だ

でも今のコードカッターたちが関心をそそるのは、それが市場の長期的な未来の姿を表しているように思われるからだ。テレビ離れがまだ大勢ではないとはいえ、テレビの見方は変わっている。テレビを見るためのデバイスが多様化しているだけでなく、コンテンツの消費の仕方も変わってきた。

変化は、アーリーアドプター(earlier adopter, 新しいものに真っ先に飛びつく人びと)だけに限定されない。CBS Newsの大衆番組”Sunday Morning”で今週末、視聴者ゲストのLuke Burbankが、NetflixやHuluやHBO Goのようなサービスがあるおかげで、最近は連続ドラマなどの“一気見(binge-watching)”中毒になってしまった、と告白した。一気飲みならぬ一気見は、本誌TechCrunchの読者なら珍しくないと思うが、このようにふつうの視聴者が中毒だと言う現状は、もはやふつうではない。番組の見方も、変わってきたのだ。〔*: binge-watching, 同一番組の複数の週にわたる録画コンテンツを、ひまな休日の昼間などにえんえん長時間かけて見ること。そういうDVDが商品化されている。〕

なおNielsenの調査報告書では、ゼロTVの家庭のほぼ半数が35歳以下の若い世帯だ(下図)。

zero tv homes

人種構成はテレビを見る世帯とそれほど変わらないが、アジア系(ASIAN)だけやや差がある。またゼロTV世帯は、子どものいない世帯が圧倒的に多い。また、一人暮らしの比率も、ふつうにテレビを見る世帯よりはかなり高い(テレビ世帯26.2%、ゼロTV世帯41.2%)。(下図)

nieslen zero tv 2

しかし、いまふつうにテレビのある家でも、そこの子どもたちの将来は違うだろう。

ゼロTV世帯の増加は、合衆国経済の不調と、テレビ受像機以外の視聴機会の増加という、二つの要素の同時発現と関係があるかもしれない。アメリカ国民の主なテレビ視聴方法は有料のケーブルテレビだからか、ゼロTV世帯の36%がテレビを見なくなった理由として経費を挙げている。しかしその次に多い31%は、“テレビに関心がなくなった”を理由として挙げている。インターネットやモバイルは、テレビと同じ番組が見られるわけではないけど、コンテンツに多様性があっておもしろい、ということではないか。YouTubeもソーシャルネットワークもビデオチャットもTumblrへの投稿もモバイルのゲームも世界中のニュースやエンタテイメントも、テレビにはない。しかも、これらとつきあっていると、リビングのテレビの前でぼーっとしている時間がほとんどなくなる。

この調査では、再びケーブルテレビに契約したいというゼロTV世帯は、わずか18%だ。

今月初めにNielsenは、2013-2014のシーズンからこれらのゼロTV世帯も調査対象に加える、と発表した。その前の2月にはハリウッドの記者からの特ダネとして、ふつうのテレビ以外のものの視聴もNielsenが調査対象にする、という計画がリークされた。つまり、DVRや(ネット上の)オンデマンドの番組も含める、という意味だ。

その記事は、AmazonやNetflixのようなストリーミングサービスも今後の視聴率調査に加え、さらにXboxやPlayStationなどのゲーム専用機も含めるのなら、そのためのハードウェアとソフトウェアの整備が必須だろう、と述べている。最初はiPadなどのタブレットの‘視聴’を見ていくらしいが、今後は機器やソースを限定せずビデオの視聴全般を調べていく計画だ。

しかし、Nielsenが、テレビと、テレビを取り巻く全メディア全デバイスを対象に日報や週報(たとえば“今週のNetflix”)を提供してくれるのは、まだまだ先だ。長期的には、ぜひそれをお願いしたいが。いずれにしても、ふつうの視聴者が一気見をするご時世には、従来のような視聴率調査はほとんど意味を成さない。それはもう、ふつうの意味の番組録画でもない。最近の報道によると、Netflixの自主製作番組“House of Cards”は同サービスの最高視聴率を稼いでいる。しかも6回ぶんまとめて見る、という見られ方が多い(Netflixはワンシーズンぶんを一気にリリースした)。

しかし、既存のテレビ産業にとっていちばん気になる数字は、この調査ではあまり目立たない次の数字ではないだろうか: Netflixの会員の約23%は、ケーブルテレビや衛星テレビの契約をキャンセルした。〔アメリカではふつうにアンテナを立ててタダで民放を見る、という見方は少ない。ケーブル王国である。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))