Oculus Questの非公式アプリストアがOculusの創設者Palmer Luckey氏の支援を受ける

Facebookは昨年、当時発売間際だった「Quest」ヘッドセットのリリースに向けて、Oculusストアで販売されていたコンテンツをより厳選していくと発表し一部のVRデベロッパーの怒りを買った。PCストアフロントでのセルフサービスに慣れていた開発者らは、思わぬ形で彼らのVRアプリが十分ではないと言われる立場に追い込まれた。

SideQuestの共同創設者であるShane Harris(シェーン・ハリス)氏もそうした開発者の1人だ。自身のアプリが却下された後、回避策を練るべく奮闘した。同氏と妻のOrla(オルラ)氏は、面倒な手続きを省き、Facebookのストアでタイトルが入手できなくてもQuestデバイスにアプリを簡単にサイドロードできるソフトウェアプラットフォームの構築を開始した。SideQuestにアクセスするためにデバイスをジェイルブレイクする必要はなく、ヘッドセットを「開発モード」に変えるだけでよい。プラットフォームはすぐに軌道に乗り、開発者は自分の作品をテストすることができ、ユーザーはFacebookの洗練されたアプリストアよりも実験的で、完成度の低い作品を試すことができた。

プラットフォームのヒット作には、既存のPC VRタイトルの作業進行中Questポートの他、人気のVirtual Desktopアプリのような、Oculus Storeで売られているタイトルへのアドオンや全く新しい作品が含まれる。共同創設者であるオルラ氏によると、過去6ヶ月で800の新しいアプリがストアでリリースされたとのことだ。

アプリの利用率が大きなマイルストーンを達成し、毎月何十万人もの訪問者をサイトに集めるようになると、夫婦共同創設チームはチームを拡大するための資金を探し始めた。ベルファストを拠点とする両氏は、遠隔地ではあるが、最終的に最新クラス向けのBoostVCアクセラレーターに参加することを選び、その標準的な条件で50万ドル(約5270万円)を調達した。両氏はThe FundやOculusの創設者であるPalmer Luckey(パルマー・ラッキー)氏からも小切手を受け取った。チームは総額65万ドル(約6850万円)を調達し、その資金をエンジニア、コミュニティマネージャー、デザイナーの育成に使用している。

創設者のシェーン/オルラ・ハリス氏写真:SideQuestにて

Facebookを去ってから一握りのVRスタートアップをエンジェル投資家として支援してきたラッキー氏によると、SideQuestのソフトウェアはFacebookによる買収前に彼のチームが開発していた初期の開発者向け製品と同じ道をたどり、よりオープンなOculusプラットフォームを推進しているという。「HMDメーカーがVRのエコシステムを抑圧したり、VRヘッドセットで何を実行するかを一方的にコントロールしたりすべきではありません。またSidequestを見ているとOculus Shareの精神が見えてきます」と同氏は声明で述べている。

SideQuestは、FacebookとOculusとの関係性を維持するために最善を尽くしている。

しかしこれは同社のデベロッパー規約に従うことを意味しており、収益化の道を明らかに複雑にしている。ほとんどのアプリストアは、有料アプリの売上の一定割合を課金することで収益を得ているが、これはFacebookからの反発を受けるだろうと両氏は指摘する。SideQuestチームは収益への道として、主にストア内の有料プロモーションに頼ることになる。この道を歩むことで、将来的にどのようなサービスを提供するかについて創造的になる必要性に直面しているが、同時にアプリのダウンロード収益の全額を稼ぐ開発者にとって、ストアフロントがより魅力的になったとも両氏は捉えている。

広告収入の増加により、同社は今年初めにアダルト関連アプリをストアから削除するなど、ユーザーとの間で論争の的となっている決定を下す必要に迫られた。チームは、ストアに投稿されたすべてのコンテンツをテストし、NSFWと見なされたり、著作権を侵害したりするアプリを全て拒否している。SideQuestチームはユーザー向けストアにどのアプリを表示するかを管理しているが、アプリはストアからダウンロードされていないデバイスにAPKファイルをサイドロードする手段としても利用できる。

夫婦デュオはFacebookチームとの友好的な関係を維持するため努めていると述べているが、SideQuestによるQuestの仕事をFacebookがブロックすれば、それはほぼゲームオーバーを意味すると指摘し、この良好な関係にも非常に多くのリスクがあると認めている。

Appleのような巨大なアプリストアが規制当局の注目を集める中、ホビイストのマーケットプレイスが背景で運営されることは、FacebookがVRへの取り組みを強化する上で、予期せぬ長期的な利益をもたらす可能性がある。同スタートアップの創設者らは、自分たちの製品は関係者全員にとってポジティブな影響をもたらすものだと考えており、SideQuestは新進のVR開発者に対して、デモを改善させたり、ユーザーからのフィードバックを得たりと、プレリリース段階でこれまでになかった方法で支援提供をしているとのことだ。会談の中でシェーン氏は、SideQuestストアで人気のパズルアプリ、Cubismが最近公式Oculusストアに 「卒業」 したことを誇らしげに言及し、同時にこのアプリの開発者がSideQuestのためだけに、同ゲームの実験モードを特別にリリースしたことも明かしてくれた。

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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