ニュージーランドに本拠を置くロケット打ち上げサービスのRocket Lab(ロケットラボ)は、10月にAstro Digital(アストロデジタル)の衛星を軌道に乗せる商業ベースのミッション「As The Crow Flies」を発表した。興味深いのは、今回の打ち上げに当初予定していたペイロード(航空宇宙における貨物や旅客)がギリギリになって変更されたことだ。これは極めて異例だ。
10月15日から2週間の期限で予定している打ち上げで、アストロデジタルの宇宙機を地球低軌道に乗せる。ミッション名は「Corvus」(コルウス)で、アストロデジタルが過去に打ち上げた一連の画像衛星の名前がそのまま使われた。なおコルウスとはカラス属のこと。この鳥類スズメ目カラス科カラス属には、一般的なカラスや最大種のワタリガラスなどが分類されている。
今回のミッションはしばらく動かない予定だった。ロケットラボにとって今年5回目となる10月の打ち上げは、当初予定していた顧客が準備にもう少し時間が欲しいという理由で遅めの打ち上げ日を希望していた。
天候に恵まれたことに加え、エレクトロンロケット(ロケットラボのロケット名)はどれも似ているため、ロケットラボとアストロデジタルは少し早いその発射期限内に軌道に乗せると決めた。
これはロケット打ち上げの世界では珍しいことだ。ロケット打ち上げには天候などの流動的な要素が多く、届け出などの手続きも煩雑。打ち上げ日は何年も前に設定されるが、とにかく遅れやすい。それでも打ち上げられずに、発射台でさらに待つこともある。しかし、創業者兼CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏が繰り返し述べているように、ロケットラボのビジネスモデルの根本にあるのは柔軟性だ。
ベック氏は9月30日の発表についてTechCrunchに「エレクトロンはオンデマンドの打ち上げサービスだ。顧客のためにいつでも準備はできている。エレクトロンは規格化され、迅速に生産できるよう設計されている。テイルナンバーまで入れるわけでもない。このため、どんな要請にも応じてロケットを待機させペイロードを割り当てることができる」と語った。
避けられない遅延が発生した場合、製品、資金、規制などの理由の如何にかかわらず、打ち上げサービスプロバイダーと顧客の両方が互いに協力する準備ができている必要がある。
ベック氏は「複雑なシステムの下、打ち上げ前にすべてを適切な状態にしておく必要がある。常に柔軟に対応して顧客にとって最適のタイミングで打ち上げたい。その努力はしているが、顧客の都合で打ち上げスケジュールを延期することも認めている。その際、我々の打ち上げ計画の他のミッションが中断されないよう気を配っている」と言う。
新しい宇宙経済が発展するにつれ、古い方法とインフラは追いつかなくなり、このような柔軟性が必要になる。どの打ち上げプロバイダーもどんなスケジュール感でも対応でき小回りのきく体制構築を目指している。世界中の小規模衛星メーカーがそういった打ち上げサービスに列をなして待っている。
10月14日以降、天候に恵まれて発射が許可されれば、マヒア半島コンプレックスからの打ち上げをライブで見ることができる。
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(翻訳:Mizoguchi)