Sailfish OSを作っているフィンランドのJollaがロシアとの縁切りを努力中

GoogleのAndroidに代わるLinuxベースのモバイルシステムを開発しているフィンランドのJollaは、一部ロシア政府も利用していたが、このほどその事業を再構築してロシア国家との関係を断つことにした。

今週初めに同社に、EUの今後のロシアに対する制裁を気にしているのか聞いてみた。というのも2018年以来、ロシアの通信企業Rostelecomが同社の戦略的投資家だからだ。

CEOで共同創業者のSami Pienimäki氏は、本誌の取材に対してこう語った: 「すでに2021年からロシア相手のビジネスと輸出は減らしている。したがってテクノロジー業界からの制裁が今後あっても、Jollaのビジネスにはそれ以上の影響はない。並行してJollaは自動車部門が急速に成長しており、それが2021年の売上の大きな部分を占めている」。

「投資家が持つ企業の所有権は確かに問題だが、それについても年内に解決を目指したい」。

同社のSailfish OSは2016年以来、ロシアの政府と企業の利用が認められている

その翌年からSailfish OSの市場におけるローカルなライセンスはOpen Mobile Platformと呼ばれ、その年のMobile World Congressカンファレンスではロシア市場向けのSailfishデバイスが、「Googleから完全に自由」をスローガンに、誇らしく嬉々としてデビューした。

その後2018年には、RostelecomがOpen Mobile Platformの75%の所有権の買収を申請し、それをVotronと呼んだ。同社は、Jollaの株式の過半数を保有していると報じられた。また、その取引によって、部分的に国有でもあるロシアの通信企業がJollaの筆頭株主であるらしいことも、明らかとなった。

しかし所有権のそのような構造は、今Jollaがもはや無効と決定し、現状のままでは同社のヨーロッパにおける成長が阻害されるほどの「困難な状況」が生ずると見なした。

それでも2019年には、Jollaはロシア市場に全力を注いでいた。そうなった大きな契機は所有権レベルでのロシアとの関係だろう。だからそれは、わずか数年後にすべての関係を断つという同社の方針の大きな逆転でもある。

Jollaは昨年、2020年が黒字だったと発表した。そしてPienimäki氏によると、昨年(2021)はロシア市場以外での成長が大きかったという。

今日(米国時間03/01)LinkedInにフィンランド語でポストした声明で、Jollaの取締役会会長Samuli Simojoki氏が、同社のロシア離れについて具体的に述べている。そして、Rostelecomの持ち株を自動車業界のどこかが買ってくれることを期待しているようだ。また、フィンランド政府からの援助の可能性についても、言及している。

Simojoki氏はこう書いている: 「プーチンのウクライナ侵略によって私たちはみな、ロシアとの関係と今後の行動について、再検討せざるを得なくなった」。(フィンランド語からの機械翻訳による。)

「ロシア国家が大株主の企業では働きたくない、と言うのは簡単だ。Jollaはここしばらく、株式所有の構造として、均衡ある所有権の構造を模索し、その努力の一環としてロシアの所有権を大幅に減らしてきた。しかし今の新たな状況では、ロシアの所有権を完全に処分しなければ会社の未来がないことは明らかである」。

Simojoki氏はさらに続けて、Jollaはすでに昨年からロシアの事業を積極的に縮小してきた、…今後はロシアからの収益はゼロになる、とも言っている。

「唯一のつながりがが所有権だ。弊社は自動車業界とオペレーティングシステムの両方をビジネス機会とするおもしろい事業構造であり、前からヨーロッパの数社が、所有権の構造が是正されれば協力関係に入ってもよい、と言っている」。

「フィンランド政府とはこれらの問題について前向きの対話が行われている。Jolla Oyの重要なパートナーのひとつがダイムラーで、Jollaの取締役会にはダイムラーの代表者がいる。ダイムラーとも状況をめぐる対話を初めており、取締役会のダイムラーの席は維持される」。

「したがって狙いは、上述の所有権構造で会社を救うことだ」。

Jollaが自動車業界の関心を惹いているひとつの理由は、昨年ローンチした同社の新製品で、それは自動車メーカーなど組み込み型Linux互換のプラットホームを使っている業界がターゲットだ。このAppSupport for Linux Platformsと呼ばれる製品は、そんなシステムが、Google自身の自動車関連提供物のライセンスの必要なく、Androidアプリを動かせる。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Jolla

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TechCrunch Japan

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