20年の歴史があるCRMツールのリーダー、Salesforce(セールスフォース)は、中国テック企業最大手のひとつ、Alibaba(アリババ)と提携してアジア進出を進める。
両社が7月25日に発表したところによると、Alibabaは中国本土、香港、マカオ、台湾の企業に対してSalesforceを独占的に提供し、SalesforceはAlibabaが販売する企業向けの独占的なCRMソフトウェアスイートになる。
中国のインターネットは、TencentのWeChatメッセンジャーやAlibabaのTaobaoマーケットプレイスなど、もっぱら消費者向けのものとして利用されてきた。しかし企業向けソフトウェアが企業や投資家から注目を集め始めている。例えばワークフローオートメーションのスタートアップのLaiyeは最近、Cathay Innovationの主導で3500万ドル(約38億円)の資金を調達した。成長段階のファンドであるCathay Innovationは、中国では「企業向けソフトウェアの急速な成長が始まった」と見ている。
このパートナーシップにはお互いに利点がある。Alibabaは、膨大な数の中小企業に対してeコマースのマーケットプレイスで販売したり、自社のクラウドコンピューティングサービスで提供したりすることのできる、Salesforceに相当する製品を持っていない。Salesforceのような大手と組めば、この欠落が埋まる。
一方のSalesforceは、Alibabaを通じて中国で売上を伸ばすことができる。Alibaba Cloud IntelligenceのKen Shen副社長は声明の中で、AlibabaのクラウドインフラとデータプラットフォームはSalesforceにとって「ソリューションをローカライズし、多国籍企業のお客様にとってよりよいサービスを提供できる」ものだと述べている。
Salesforceは声明で「多国籍企業のお客様から、世界中どこでも、事業を展開しているところでは対応してほしいという要望が増えている。このことが、今回Alibabaとの戦略的パートナーシップを発表した理由だ」と述べている。
4月30日までの3カ月間のSalesforceの売上は、20%がヨーロッパ、70%が米国で、アジアはわずか10%にすぎない。
Salesforceはこの提携により、顧客獲得のチャネルを得るだけでなく、中国ベースのデータをAlibaba Cloudに保存することもできるようになる。中国では、海外企業はすべて、中国のユーザーに由来するデータの処理と保存は中国国内の企業と連携しなくてはならない。
Alibabaの広報はTechCrunchに対し「この提携により、中華圏で事業を展開しているSalesforceのお客様はAlibaba CloudでローカルにホストされているSalesforceに独占的にアクセスできるようになる。Alibaba Cloudはローカルのビジネス、文化、規則を理解している」と述べた。
クラウドはAlibabaにとって垂直成長の重要な部分だ。大手の提携先の獲得は、中国最大のクラウドサービスプロバイダとしての基盤強化につながる。Salesforceは2018年12月に日本のスタートアップへの投資を目的とした1億ドル(約108億円)のファンドを設立して、アジア進出を前進させた。今回のAlibabaとのパートナーシップにより、いよいよアジアの顧客を獲得していくことになるだろう。
画像:Alibaba
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(翻訳:Kaori Koyama)