Serimmuneが新型コロナ向けに新しい免疫反応マッピングサービスを開始

免疫情報のスタートアップであるSerimmune(シリミューン)は、抗体エピトープ(抗体に結合する抗原分子の一部分)と新型コロナウイルスとの関係を深く理解しようとしている。

もともとカリフォルニア大学サンタバーバラ校で開発された同社独自の技術は、少量の血液サンプルから個人の抗体の配列全体をマッピングする新しく特異的な方法を提供する。同社は、細菌ペプチドディスプレイ(サンプル中で抗体と結合した細菌からプラスミドDNAを分離する一種のスクリーニングメカニズム)を利用する。次にDNAの配列を決定し、エピトープを特定する。エピトープは、その人がさらされた可能性のある抗原、および免疫系が抗原にどのように反応したかについての情報を提供する。

「これは、検体中の抗体が見つけ出したエピトープを調べる非常に高度に多重化された、極めて特異的な方法です」とSerimmuneのCEOであるNoah Nasser(ノラ・ナッサー)氏は述べた。同氏はカリフォルニア大学サンディエゴ校で分子生物学の学位を取得した。Serimmune以前は複数の診断会社で働いていた。

Serimmuneは2021年3月第2週、新型コロナの症状を引き起こす新型コロナウイルスによる病状と免疫反応を理解するのに役立つ、同社のコアテクノロジーを新しく応用し始めることについて発表した

「私たちが行っているのは、弊社が開発した抗体プロファイルを約12のアミノ酸とともに特異的な新型コロナウイルスプロテオームにマッピングすることです」とナッサー氏は述べた。「そして私たちが見つけたのは、抗体の発現が病状と高度に相関していることです。そのため、検体に存在する抗体に基づき軽度、中等度、重度、無症候性の疾患を区別できます」。

Serimmuneが収集できる患者データが多いほど、同社のコアテクノロジーはさまざまな抗原曝露と疾患の重症度に関するパターンをうまく見つけることができる。このパターンに早く気づくと、医師や研究者は新型コロナウイルスがどのように働くのかを深く理解できるだけでなく、あらゆる抗原の診断、治療、ワクチンへの新しいアプローチを知ることができる。

Serimmuneによる新型コロナ抗体エピトープの新しいマッピングサービスの開始により、新型コロナウイルスに対する免疫反応の理解を深めることに関心を示すワクチン会社、政府機関、学術研究所などの顧客は、同社のデータにアクセスしやすくなる。

「重要なのは、研究者が知りたいと思っていた情報に焦点を合わせ、それを標準化することでした」とナッサー氏は述べた。「実際には、サンプルを受け取ってからわずか2日で結果を得ることができます」。

この新しいサービスに加え、Serimmuneには新型コロナウイルスに対する免疫に関する横断的な臨床研究を開始する計画もある。研究への参加者は、痛みのない在宅収集キットを使用して、少量の血液サンプルをSerimmuneに送る。同社はそのコアテクノロジーによりその人の免疫マップの概要を示す。

「私たちは研究参加者に関する結果を、その人の新型コロナに対する免疫の全体像というかたちで返します」とナッサー氏はいう。「私たちがやろうとしていることは、その免疫反応がどのように変化するか、そして新型コロナウイルスに繰り返しさらされると免疫反応に何が起こるかを時間をかけて理解することです」。

マッピング技術は今や極めて特異的であるため、患者が保持する新型コロナウイルスへの抗体が自然曝露によるものか、ワクチンによるものなのかを知ることができる。

Serimmuneが主に注力しているのは、今のところ新型コロナパンデミックへの応用にとどまる。だがナッサー氏は、同社がパーソナライズされた医療に移行し、関心のある患者には直接マッピングサービスを提供する可能性があると述べた。

「これは、個々の患者の免疫の状態と、どの抗原にさらされているかを理解する上で価値があると信じています」と同氏はいう。Serimmuneはそれが達成されるまで、より多くの患者サンプルをによりデータベースを拡張し続ける計画だ。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Serimmune新型コロナウイルス免疫

画像クレジット:Serimmune

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(文:Sophie Burkholder、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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