Slack共同創業者のCal Henderson氏がTC Tokyoに登壇決定、失敗から2つの「ホームラン」

TechCrunch Japanの読者には今さらSlackについて説明は不要だろう。Slack共同創業者でCTOのCal Henderson氏が11月16日、17日に東京・渋谷ヒカリエで開催するTechCrunch Tokyo 2017に登壇することが決定したのでお知らせしたい。

Henderson氏はFlickrとSlackという2つのサクセスストーリーを持つ起業家だ。Slackのことは知っていても、彼と彼の共同創業者であるStewart Butterfield氏の2人がゲーム開発の副産物としてFlickrとSlackという、いずれもホームランと言えるスタートアップ企業を生み出したことは知らない人もいるかもしれない。彼らはゲーム開発スタートアップとしては失敗続き。しかし、その副産物として生み出したサイドプロジェクト2つがFlickrとSlackというホームランなのだから恐れ入る。

ソーシャルサービスの先駆けFlickrはゲーム開発の副産物だった

2004年にスタートした写真共有サービス「Flickr」は後に続くFacebookやInstagramなどソーシャル系サービスの先駆けとなった輝かしい成功事例だ。Flickrは2005年に米Yahoo!に推定2200万〜2500万ドルで買収され、2013年の時点では8700万人という当時としては巨大なサービスに成長していた。時代がWebからモバイルアプリへ変遷するに連れて世代交代していった感があるが、Web時代には間違いなくナンバーワンの写真共有サービスだった。

そんなFlickrは、実は「Neverending」というWebベースのオンラインゲームのために作られたツールだった。ただ、NeverendingよりもFlickrのほうにサービスとしての成長の目があるとして、2人はFlickrに注力することになったというのがFlickr誕生の経緯だ。

Henderson氏ははFlikrのチーフソフトウェアアーキテクトとして、ネット全体にとっても重要な仕事をしてる。

今では当たり前の存在だが、Flickrは「タグ」をネットユーザーに広めたサービスの1つだし、「フリーミアム」という言葉が2009年に生まれる前から無料ユーザーの一部がプレミアムサービスのために有料プランを使うサービスとして名を馳せもした。

Web上で複数サービスを緩やかにつなぐ「マッシュアップ」という言葉が流行したころ、Flickrは先進的なAPIを生み出した企業でもあった。例えば、Henderson氏はOAuth策定で牽引役となったという。OAuthは「認可」プロトコルと呼ばれるもので、特定サービスIDに紐づくデータを異なるサービス間でやり取りする技術標準。ソーシャルサービスの普及にともなって今また注目を集めている。

大規模トラフィックに対応するサービスを提供する「スケールアウト」という言葉が出てきたのもこの頃で、Henderson氏が『スケーラブルWebサイト』の著者だといえば懐かしく思い出すエンジニアも多いのではないだろうか。

Slackもゲーム開発のための社内ツールだった

スタートアップの成功確率は低い。ホームランなど狙って打てるものではない。それなのに、ゲーム開発の副産物としてHenderson氏とButterfield氏がFlickrに加えてもう1つ生み出したホームランが、チャットサービス「Slack」だ。Glitchというゲーム開発のための社内ツールとして、Slackは生まれたのだった。

Slackは2013年にローンチし、あっという間にシリコンバレーに広がった。FlickrやTwitterが周辺ツール・アプリを巻き込んで大きくなったのと同じで、SlackはAPIの使いやすさに定評があった。Slackは、単なるチャットアプリというよりも、ほかのサービスとの繋ぎ込みが容易なメッセージプラットフォームという面がある。だからエンジニア密度が高く、自分たちが利用するサービスを繋ぎ込んだり、自分たちでボットを開発するシリコンバレーで受け入れた。日本でもスタートアップ企業の多くが使っていることだろう。

実際、Henderson氏は2016年のインタビューの中でSlackは「ビジネスOS」なのだと言っている。かつてビジネスではマイクロソフトやSAPといったベンダーの提供するプラットフォームの上で、業務に関連するすべてのアプリを使っていた。ところが過去10年ほどの間にネット上でSaaSが台頭するにしたがって、業務で使うアプリがバラバラになっている。例えばマーケ分析ツールといったジャンルはかつて存在していなかったが、今や一大ジャンル。かつてアプリを統合するOSとしてWindowsが存在したように、そうした現代的サービスを繋ぎこんで統合するプラットフォーム、それがビジネスOSとしてのSlackなのだ、というのがHenderson氏の説明だ。

直近では9月にソフトバンクの孫氏が率いるビジョン・ファンドをリードVCとして50億ドル以上の評価額で2億5000万ドルという大型のシリーズG投資を決めたビッグニュースが飛び込んできた。Slackの調達総額は7億9000万ドル(約800億円)となっている。

TechCrunch Tokyo 2017は一般価格4万円のところ、9月末まで(今週土曜日まで!)は超早割価格1万5000円でチケットを販売しているので、ぜひこの機会に検討いただければと思う。

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投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。