Snapがより高度なAR体験を可能にするクリエーター向け新機能やツールを発表、年次イベント「Lens Fest」で

Snap(スナップ)のクリエイターたちが、新しいAR(拡張現実)ハードウェア「Spectacles(スペクタクル)」を使って実験を始める中、同社はAR制作ソフトウェア「Lens Studio(レンズスタジオ)」の機能をより深く掘り下げ、より一体感があり、よりリアルで、より未来的なARフィルターを作成できるようにした。Snapは年次イベント「Lens Fest(レンズフェスト)」で、同社の「Lense(レンズ)」作成ソフトウェアに導入される多くの新機能を発表している。これらの変更点には、外部のメディアやデータを統合する取り組みから、未来的なメガネを念頭に置いて設計された、よりARに特化した機能まで、多岐にわたっている。

メディア面については、Snapは新しいサウンドライブラリを用意し、同社がライセンスを取得した数百万曲の楽曲やオーディオクリップを、クリエーターが自分で作成したレンズに直接追加することができるようにした。また、AccuWeather(アキュウェザー)の天気情報やFTXの暗号資産価格など、他の情報ソースから取得した常に変化する情報を、APIライブラリを通じてリアルタイムでレンズに取りこむことも可能になる。大規模な機能アップデートの1つとしては、ユーザーがレンズ内にリンクを埋め込み、閲覧者を特定のウェブページに誘導することもできるようになった。

画像クレジット:Snap

自分の顔をおかしな動物に変えたりするSnapの自撮り用フィルターは、以前から拡張現実を視野に入れていた同社にとって、依然として大きな成長機会となっている。Snapによれば、現在25万人以上のクリエーターが250万個以上のレンズを作成しており、これらのレンズは合計で3兆5000億回以上もユーザーに閲覧されているという。Snapは「Ghost」と呼ばれる社内の「ARイノベーションラボ」を設けており、可能性の限界を超えようとしているレンズデザイナーをサポートし、個々のプロジェクトに最大15万ドル(約1700万円)の助成金を提供している。

また、同社はレンズをより優れたものにしようとするのと同時に、技術的にもより能力が高いものにしようとしている。

新しいデータタイプを統合するだけでなく、Snapは基盤となるAR技術にも目を向け、低価格帯の携帯電話を使用するユーザーにも楽しめるレンズを提供できるようにした。同社のWorld Mesh(ワールドメッシュ)機能は、レンズにARを活用し、より現実的なジオメトリデータを統合することで、レンズ内でより現実感のあるデジタルオブジェクトを体験することができるというものだ。Snapは、これまでハイエンドなスマートフォンでしか実現できなかったこの機能を、よりベーシックなデバイスでも可能にした。

画像クレジット:Snap

同様にSnapは、デジタルオブジェクトをよりリアルに反応させるためのツールも展開しており、現実世界とより深く相互作用するだけでなく、重力や衝突といった物理的な力にも対応し、よりダイナミックなレンズを可能にするレンズ内物理エンジンを導入した。

Snapはモバイル向けにより高度なレンズ作成ツールの開発に取り組んでいるが、それと同時に、開発者が新しいSpectaclesで、ハンズフリーのメガネ体験をデザインする際に必要となるツールをサポートすることも、将来的には目指している。クリエイターたちは、何カ月もかけてこの新しいハードウェアを使った体験を作成しているが、Snapはこの懸念に対処し、新たな機会を生み出すために、新しいレンズ機能の開発に取り組んでいる。

画像クレジット:Snap

結局のところ、Snapのメガネはまだ明らかに開発者モードであり、同社は統合されたAR機能を備えた製品を消費者向けにいつ出荷するかというタイムラインを提示していないため、理論的にはバックグラウンドで開発する時間が十分にあるとも言える。

Snapが静かに構築してきたツールの中には、Connected Lenses(コネクテッドレンズ)というものもある。これはレンズ内で共有体験を可能にするもので、複数のユーザーがSpectaclesを着用して同じコンテンツに接することができる。

開発者向けの段階では、Spectaclesのバッテリー寿命は最長のものではない。つまり、Snapは、Spectaclesが必要なときに必要なだけ作動し、持続的に動作しないように工夫する必要があった。新たに導入されたEndurance(エンデュランス)モードでは、レンズが予め設定されたGPS位置に到達するなどの特定のトリガーを待っている間、ディスプレイをオフにしてバックグラウンドで実行し続けることができるようになった。

画像クレジット:Snap

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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