ティーンエイジャーではなく大人。Storiesではなくメッセージ。米国ではなく発展途上国。SnapchatのCEO、Evan Spiegelによると、これがSnapchatがカムバックするためのキーポイントとなる。9月にCheddarのAlex Heath記者が入手した6000字に及ぶ内部向けメモで、Spiegelは哲学、戦略、悔恨でもって社員のモラルを復活させようとしている。というのも、Snapの株価がこれまでにない8ドル前後に下がっているーこれはIPO時の半分、ピーク時の3分の1だ。
「再設計での我々の最大の過ちは、コミュニケーションをとるのに最も早い手段であるという、我々のコアプロダクト価値を傷つけたことだ」と、Spiegelは“Project Cheetah”に関するメモで終始強調している。それはSnapchatをスペシャルなものにしたチャットのことで、フィードとStoriesを組み合わせたことでそれを葬ってしまい、素早くロードできるAndroidアプリをつくるのに失敗したことで惨憺たる結果となってしまった。
Spiegelは、せっかちな戦略をとってしまったことを認め、前進するために力を結集する道を示すなど、ここでは大人な態度をとっている。ソーシャルアプリの業界を支配するSnapchatの話は一切ない。彼はどうやらInstagramによる競争を意識した猛攻撃で水をあけられていることを理解しているようだ。そのかわりSnapchatは、収益性が乏しくてもユーザーの自己表現を手伝うことができれば満足なのだ。
Snapchatは大人をひきつけるにはおもちゃのように認識されすぎているのかもしれない。そしてFacebookの帝国からグローバルマーケットを取り戻すには手遅れかもしれない。また、本当に大きく成長するには、そこそこの出来である他の手段にあまりにもコピーされやすいものなのかもしれない。しかしもしSnapがSpiegelのゲームプランを実践できたら、画像を使ってコミュニケーションをとりたいという、規模は小さくても誠実なユーザーを通じて持続可能なマーケットを切り開くことができるかもしれない。
下記に、Spiegelのメモから最も興味深い部分の抜粋と、なぜそれらが重要なのかを挙げる。
1. 再設計を急ぎすぎたことへの謝罪
「当然、チーターのように再設計を急いだことにはマイナスの点もあった。1つの問題を解決することが他の問題を生む…。残念ながら我々は、我々のコミュニティーのごく一部で再設計を繰り返しテストするということに十分な時間を割かなかった。結果として、コミュニティーの不満を招き、ローンチ後も反復を続けなければならなかった」。
Spiegelは、Facebookがしているようにユーザーデータに頼るというより、いつも自分の本能で突き進む。コアなユーザーから遠く離れ、彼はティーンエイジャーが何が好きなのかを読み間違えてしまった。アピール性たっぷりの“メディアとソーシャルを分ける”という流行語は、メッセージとStoriesを合併させて使いづらいものにしてしまったカオスをも意味する。SpiegelはA/Bテストの重要性についての貴重なレッスンを積んだようだ。
2. チャットが王様
「再設計したアルゴリズム的なフレンドフィードは、話すのに最適な人を探すのを難しくしてしまった。そしてあまりにも急いで導入したことでフレンドフィードが素早く作動するよう最適化するための時間がなかった。我々はプロダクトをスローダウンさせ、プロダクトのコアな価値を損ねた…遺憾なことだが、当時我々は再設計に伴う最大の問題はインフルエンサーの不満ではなく、コミュニケーションをとるのが難しくなったと感じていたコミュニティーのメンバーの不満だということを理解していなかった。何かを発明し、新たなプロダクトを世に送り出すのに興奮していたが、素早くコミュニケーションがはかれるというSnapchatをSnapchatたらしめているコアなものをなくしてしまった」
Snapが初めて変更を明らかにしたとき、我々は“Snapにハマっているティーンエイジャーが、“再設計はわかりにくく、友達からの全てのコンテンツをごちゃまぜにする”と苦情を言うかもしれない、と予想した。その変更では、友達にメッセージを送るのに友達を探し出さなければならないというかなり面倒なものになり、前四半期でユーザーを300万人失ってSnapの成長率は落ち込んだ。Snapはメッセージを早く送受信できるようエンジニアリングを最適化するだろうし、開発途上のマーケットにおいてはチャットを早くできるようにするために付属品を犠牲にさえするかもしれない。
3. SnapchatはBest FriendでFacebookに勝たなければならない
「特定の週であなたのトップフレンドが、Snap送信ボリュームへ25%貢献する。フレンド18人を確保するまでには、フレンドが増すごとにトータルのSnap送信ボリュームに1%未満貢献する。ゆえに、人々が最も気になるフレンドを探すのを手伝う新たな手法を考える必要がある」。
Facebookの最大の構造的な弱点は、家族、同僚、上司、そして遠い知り合いまで含むという、かなり幅広いフレンドグラフだ。フィードアプリではそれは構わないのかもしれないが、親しい友達だけを気にかけるStoriesやメッセージではそうはいかない。Facebookはこの10年ほど、フレンドリストなどでユーザーが親友とコミュニケーションをとるのにベストな方策を探そうとしてきたが、失敗に終わっている。もしアプリ上で親友を引っ張ってきたり、“流行り”をスナップし続けるよりもっといい理由で友達と連絡をとり続ける特別な機能を開発していたら、Facebookに打撃を与えていたかもしれない。
4. DiscoverはFacebook WatchやIGTVに匹敵する
「我々のショーはより多くの視聴者をひきつけている。18以上のショーで月間視聴者は1000万ユニーク視聴者に達している。ショーの12作品はオリジナルの制作だ。プラットフォーム全体としては、ショーの閲覧時間はかなりの成長を見せていて、年初から3倍になっている。Storiesの視聴者は前年度比で20%増えた。そして、Discoverコンテンツに関わる人の数を引き続き成長させる絶好の機会があると確信している…我々はまたSnapchat外で人気のあるコンテンツをDiscoverに持ってこれるよう、それが何なのかを特定しようと取り組んでいる」。
意図してモバイルのためにつくられたプレミアムなビデオコンテンツで人気を集めるDiscoverにより、Snapchatは他社と最大の差別化を図っている。しかしながら、本当に必要なのは、デジタルマガジンの体験を新たに認識させるような、多くの視聴者を呼び込む必見のショーだ。
5. しかしDiscoverはメチャクチャになっている
「我々のコンテンツチームは、新たなレイアウトやコンテンツタイプを一生懸命実験している」。
SnapchatのDiscoverはクリックを呼び込むたくさんの餌であふれている。ニュース局、ソーシャルメディアインフルエンサー、オリジナルのビデオショー、ユーザーコンテンツが集められたコレクションなど、疲労に近い圧倒を感じるようなデザインで注意をひこうとバトルが繰り広げられている。ありがたいことにSnapchatは、より少ないイメージとヘッドラインでDiscoverをより快適に、そしてくつろぎながらコンテンツを消費できる場所でにできるかもしれない、ということを認識しているようだ。
6. 収入を得られようユーザー年齢層を上げる
「米国や英国、フランスなどコアマーケットで増す成長のほとんどは、より高い平均レベニューを生み出す年配のユーザーからくるものでなければならない…年配世代の増加には我々のアプリの成熟を必要とするだろう。今日の多くの年配ユーザーはSnapchatをつまらないもの、時間の無駄ととらえている。というのも、そうした人々はSnapchatは早くコミュニケーションをとるためのものというより、ソーシャルメディアと考えているからだ。我々のプロダクトのデザインランゲージを変え、Snapchatのマーケティングやコミュニケーションを改良することは、ユーザーが我々の価値を理解するのに役立つ…コアマーケットにおける我々のコミュニティの年齢層を上げるということはまた、メディアや広告主、ウォール・ストリートにSnapchatを理解してもらうことにもつながる」。
Snapchatはもはやこれ以上、クールな子どもではいられない。購買力とライフステージの低下は、ブランドには魅力的に映らない。問題は、Snapchatが若いユーザーの年長の兄姉や大人を呼び込むことで若いユーザーを切るリスクを負うことだ。Facebookのように、もしユーザーがSnapchatは両親のための場所だ、と感じるようになったら、若いユーザーはクールでいるために大人を困惑させる次なるものを探そうとSnapchatを離れるだろう。
7. マーケット開拓を優先
「我々は、新たなマーケットでコアプロダクトの価値を広めるためにすでに多くのプロジェクトを進めている。Mushroomにより、より安価なデバイスでもSnapchatを使えるようになる。我々の新たなゲートウェイアーキテクチャArroyoは、メッセージやその他のサービスもスピードアップするだろう…我々の価値ある追加の機能がプロダクトのコア価値からさっ引かれるような異なるマーケットのために、プロダクトの変更を余儀なくされるかもしれない」。
情報筋によると、Snapchatの将来は‘Mushroom’と命名されたプロジェクト、Androidアプリのエンジニアリング面での見直しにかかっている。ビデオのロードに時間がかかることやバグで、Snapchatは特に通信状況がよくなかったり古いAndroid携帯が使われていたりしている発展途上国では使い物にならない。Snapchatは米国とその他の先進国に集中し、この間、Instagram(毎日のユーザー数4億人)とWahtsApp(毎日のユーザー数4億5000万人)にStoriesのコピーを許し、これにより発展途上国での浸潤とSnapのデーリーユーザー1億8800万人の縮小につながっている。スムーズな展開を願って、SnapchatはすでにMushroomをテストしている。しかし、Snapchatを見捨て他のアプリに走るほどに不満を抱えたユーザーにもう一度試してみてと言うにはかなりのマーケティングをしなければならない。
8. 新鮮なアイデア、別個のアプリ
「我々はこのところ、何百万ものスナップのOur Storyへの移管と3D世界の一部の改造を伴うソフトウェアを構築中だ。そうして我々はそのモデルにAR体験を構築し、レンズを通して届けられる…もし我々のイノベーションが最も早いコミュニケーションであるコアプロダクトを傷つけるのであれば、我々は別のアプリや、我々のイノベーションを届ける他の手段を考えるべきだろう」。
SnapchatはARで大きな計画を温めている。それは、あらゆるところにアニメーションをくっつけたり、いくつかの大都市でARアートインストレーションを創造したりするだけではない。世界中でサイト固有のAR体験を構築したいのだ。この会社がこれまで構築した全てのものがSnapchat内のものだった一方で、このAR体験はメッセージサービスを泥沼にはまらせないよう、必要に応じて独立したアプリをという形態をとる。これはSnapchatにとって横道にそれる実験になるかもしれない。
9. 利益の自由
「我々のストレッチをかけた2019年の目標は、収入増、そして年間を通してのフリーキャッシュフローと利益を加速させるものとなる。利益があがれば、追加の資金調達のプレッシャーにさらされることなく、我々のビジネスを長期に運営できる自治性と自由度を高める」。
Snapchatはまだ赤字が続いていて、前四半期では3億5300万ドルの損失だった。Snapchatは延命のために株式の2.3%をサウジアラビアの王子に2億5000万ドルで売却することになった。そして昨年は、中国のゲーム大手Tencentから20億ドルを調達した。そうしたディールは、Snapchatのモラルや、支援者に恩恵をもたらしたりするデバロッパープラットフォームではなく、ゴールだけを優先する能力を脅かすことになる。ひとたび収益をあげるようになれば、Snapchatは目先のユーザー数の成長にどう対処するか悩まなくてもよくなり、その代わり力の保持や社会的インパクト、本来の目的であるクリエイティビティに集中することができる。
イメージクレジット: Steve Jennings / Stringer / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)