Tencentが約162億円でノルウェーのゲーム会社Funcom買収へ

売上高で世界最大のビデオ・オンラインゲーム会社の1つTencent(テンセント)は1月22日、その地位をさらに確たるものにするための動きに出た。ビデオゲームConan Exiles(Conanシリーズも)、Dune、その他28タイトルの制作を手掛けたFuncom(ファンコム)の完全買収提案だ。このディールが承認されれば、ノルウェー・オスロ拠点のFuncomの買収額は1億4800万ドル(約162億円)となり、同社は次世代のゲームをめぐる長期的戦略につぎ込む資金を手に入れることになる。

Funcomはオスロ証券取引所に上場していて、取締役会はすでに買収提案受け入れを推奨している。これにより、同社の株価は17クローネ(約206円)となり、前日(1月21日)の終値から27%上昇した。

このニュースはいくぶん興味深いタイミングで発表された。Tencentは大衆市場向けのゲーム売上高でソニーMicrosoft(マイクロソフト)、任天堂としのぎを削っている。しかし今週初め、大ヒットしているソーシャルメディアアプリTikTokを展開しているByteDance(バイトダンス)がゲーム市場参入の準備をしているとの報道があった。

もしこの通りになれば、2社の敵対関係は別のレベルへといく。Tencentはまた、特に自社のメッセージアプリのWeChatを通じてソーシャルメディア業界にもかなりの関心を持っている。多くの消費者が複数のアプリを利用するだろうが、実際にそうなったとき、1つのアプリで金を使うというのは他のアプリでの支出を制約することを意味する。ByteDanceは現在、Tencentのゲームに関係するソーシャルアプリに掲載するコンテンツから収益をあげている。この2社は(当然だが)、部分的にはゲームコンテンツに関連する不当競争をめぐり中国の法廷で争っている。

Tencentはいまや世界最大のビデオゲーム会社の1社だ。直近の四半期決算(昨年11月に発表した第3四半期)で同社は、オンラインゲームの売上高は286億元(約4500億円)で、そのうち243億元(約3830億円)はスマホゲームによるものだったと発表した。

買収と経営支配は同社のゲーム分野における成長戦略の鍵を握る。これまでの大きな案件としては、Tencentは2016年にフィンランドのSupercellの過半数株取得に86億ドル(約9400億円)払った。Tencentはまた、Riot Games、Epic、Ubisoft、Paradox、Frontier、Miniclipなど数多くのゲーム会社にも投資している。そうして投資を受けたゲーム会社も買収を行なっている。ちょうど今月初め、Miniclipがイスラエルのllyon Gamesを1億ドル(約109億円)で買収したことが報じられた(TechCrunchも情報筋に確認した)。Funcomのケースのように、Tencentの投資の一部は少数株だ。大きな視点で見ると、そうした企業はTencentにとって潜在的に買収対象となる。

Funcomに話を戻すと、TencentはFuncomに出資している。KGJ Capital買収という2度目のディールで2019年9月にFuncomの株式の29%を取得した。KGJ CapitalはそれまでFuncomの最大株主だった。

「Tencentは信頼できる長期的投資家として、そしてオンラインゲームでのオペレーション能力で名を馳せている」とFuncomのCEO、Rui Casais(ルイ・カザイス)氏は話した。「Tencentがもたらす識見、経験、知識は我々にとってかなりの価値があり、緊密に連携して引き続き素晴らしいゲームを制作し、またFuncomの輝かしい未来を構築することを楽しみにしている」。

今から考えてみると、この発言はわずか数カ月後にくる買収に向けた基礎準備と両社の関係を示していた。

「我々は最大の株主であるTencentと素晴らしい関係を築いていて、Tencentのチームの一部になることにとても興奮している」とカザイス氏は声明文で述べた。「今後も世界中の人がプレイする素晴らしいゲームの開発を続ける。またTencentのサポートによりFuncomが次なるレベルにいくと確信している。Tencentはゲーム分野におけるリーダーとして幅広い知識を持ち、運用レバレッジや見識をFuncomにもたらすだろう」。

背景には、Funcomが長期的戦略に沿って業務を推進するためには、さならる投資が必要と判断したことがある。買収受け入れを提案する前に出した声明文によると、同社はGaaSビジネスモデルを活用しながら「Open World Survival部門」の構築を続け、2年以内の提供が予定されている野心的なDuneプロジェクトを開発中だ。

「これらにさらに注力するには他のイニシアチブのリソース投入を必要とする。他のイニシアチブを代表するものとしては、当初2020年中のリリースが予定されていた共同制作のシューターゲームがある。このゲームは、その後競争の激化と内部の遅れによる外部からのプレッシャーにより余儀なくされたスコープの変更で大きな影響を受けた」。もし戦略通りに物事が運べば、「Funcomは現在の事業活動であげている売上高を補うためにさらなる資金調達を必要とすることになる」と取締役会は書いている。

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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