11月15日(木)に開始されたTechCrunch Tokyo 2018 Day1冒頭のFireside Chatは、Toyota AI Venturesでマネージングディレクターを務めるJim Adler氏の招いてのセッションとなった。同社は、2017年7月に設立されたトヨタグループのベンチャーキャピタルファンド。人工知能やロボティクス、自動運転、データ・クラウド技術の4分野においてスタートアップの発掘と投資を行っている。
登壇したAdler氏は、Toyota AI Venture設立時からのマネージングディレクターであり、またVoteHereという電子投票のスタートアップを創業した起業家でもある。同セッションでは直接的な言及は少なかったものの、参加者は多くのヒントを得られたハズだ。
人工知能やロボティクス、自動運転、データ・クラウド技術の4分野に注目しているといいつつも、会場に到着するまでにGPSシグナルが弱く、迷子になったエピソードを交えつつ、マッピングのローカリゼーションとデータサイエンスの重要性に触れた。例えば、ドライバーのクセとGPSシグナルを組み合わせたらどうなるのか。セッションは知見とヒントを散りばめたものだったともいえる。
まずToyota AI Venturesの方向性について。同氏は、TOYOTAのイメージであれば車となるが、モビリティー全体を見ており、あらゆる交通手段に関わると語った。車から見れば、ほかの交通機関の影響はあり、その逆でも同様だ。また車はソーシャルであり、その国の文化に応じた約束事の存在にも触れた。
同氏曰く「ソーシャルコントラクト」。自動運転の安全レベルを設計するにあたり、地域ごとの決まり事をAIに教えるにはどうしたらいいのか、歩行者によって配慮を変えなくてはいけない。親子の場合、自転車の場合、スケボーの場合で異なる。また自動運転の安全レベルについても、社会として答えを出す必要があり、コミュニティーで答えを出していけるのではないか、さらに安全とはなんだろうかといった疑問の提示もあった。またAdler氏はモビリティー全体に関わるため、テックに留まらず、パッケージとして考える必要があるとも語った。
そこにイノベーションが必要であり、スタートアップによるアクションをサポートしていくというのが、Toyota AI Ventureのスタンスになる。スタートアップを市場に投入して、反応/判断を得えて、また次のステップへ。Toyota AI Ventureは、投資だけでなく生産から安全設計までサポートをする。
投資基準はどうだろうか。Adler氏自身も起業家であった経験から、起業家の視点や気持ちがわかると踏まえたうえで、最終的には技術も大事だが、スタートアップチームの性能や社内文化を見ていると述べた。市場に投入したのちの市場反応を受け入れる姿勢だけでなく、一度社会文化が出来ると変更しにくく、フローを実行しやすい文化形成の推奨のほか、アドバイスとしてハードとソフトの入念なチェックや、競合のいる市場を選ぶといった話も出た。競合はライバルでもあるが、友人であるといった点であり、競合のいない市場はオススメしないそうだ。
最後に再び、社内文化の重要性を触れてAdler氏のFireside Chatは終了した。
(文/写真 林祐樹)