Googleは、Twitterのモバイルアプリ開発プラットフォームFabricを買収した。同時に、クラッシュレポートシステムCrashlytics、モバイルアプリ・アナリティクスAnswers、ログインシステムDigits SMS、開発自動化システムFastLaneも買収する。Twitterは2014年にモジュラーSDKとしてFabricをローンチし、開発者はアプリを改善するツールを選んで使うことができた。58万人の開発者がFabricを活用して制作したアプリは25億人のユーザーにリーチしている。
しかし、Twitterは財政を立て直すため、中核でない部門を切り離している。今回、このプラットフォームをGoogleに手放すことで、Fabricを閉鎖して開発者を締め出すことなく、運営コストを削減したい考えだ。Googleは継続してFabricと関連ツールを運営し、開発者はこの移行に関連して特に対処する必要はない。
しかし、Twitterは事業をスリム化することで、買収されやすくしようとしているのか?
スリムなTwitter
昨年の買収話が立ち消えた今、Twitterは自律しなければならない。つまり、十分利益が上げられないのなら滅びる運命にある。昨日はVineを閉鎖し、Vine Cameraに吸収した。高額になりがちな動画をホストする必要がなくなった。今度はFabricの番だ。どうやらTwitterは法人向け開発ツールの売り上げは、同社の中核となる広告とデータビジネスと匹敵しないと考えたようだ。
Twitterは、引き続き開発者向けのプロダクトを運営し、この分野にも投資するとTechCrunchに話した。例えば、Publisher platform、Twitter Kit、Gnip、TweetDeckに加え、Public APIやAds APIなどだ。それらは中核ビジネスに直結するもので、2017年度で優先して取り組むとしている。
Fabricのチームは「本日よりFabricの新章が始まります。FabricがGoogleへの買収に合意し、チームがGoogleのDeveloper Products Groupに参加することを発表できて嬉しく思います。GoogleのFirebaseチームと仕事をすることになります」と声明で発表した。GoogleのFirebaseのプロダクトマネージャーFrancis Maは「私たちのミッションは近いものです:開発者がより良いアプリを作り、ビジネスを成長させる支援をするのがミッションです」。
買収の詳細は開示されてない。Twitterに問い合わせたが、詳細の開示は差し控えた。Googleは、Fabricの全チームメンバーが同社に参加するという。また、Digitsの管理権は移行期間中、Twitterが持つ。
CrashlyticsはFirebaseの主要なクラッシュレポートツールになる。Crashlyticsは2011年に創業し、2013年にTwitterが3820万ドルで普通株とストックオプションで買収したが、結果的に買収額は1億ドルを超える計算だ。創業から6年、共同ファウンダーのJeff SeibertはCrashlyticsから退き、Twitterの開発VPを務めるRich Paretが陣頭指揮を執った。
Twitter自体は中国でサービスを提供できないが、Crashlyticsの中国のインターネット大手AlibabaやBaiduをユーザーに持つ。Twitterは中国企業に広告枠を販売しているが、Crashlyticsの売却で、同社が持つ中国との最大の架け橋も売却したことになる。
TwitterはもともとCrashlyticsやAnswersといったツールを利用する法人に課金していたが、途中で無料にしていた。この戦略では、開発者がTwitterのエコシステムに加わるほど、マイクルブログサービスTwitterに機能を加えるアプリを制作したり、プラットフォームから離れないようにすることを狙っていた。
しかし、この戦略はTwitterは損失を減らす施策にとってあまりに間接的なものだった。Twitterの2016年Q3における損失は1億300万ドルだった。Facebookも昨年、同じようにモバイル開発者プラットフォームParseを閉鎖 している。Parseのファウンダーである Ilya Sukharは、ParseがGoogleに買収されなかったことに嫉妬していると今朝ツイートした。
他のTwitterの部門も閉鎖されたり、売却されたり、あるいはTwitterの一部になったりするのだろうか。例えばPeriscopeは慎重にTwitter Liveに組みこむことができるだろう。Twitterはようやく自社のアプリから直接動画配信する機能を付け加えたのだから。ライブストリームの発見や消費を促すPeriscopeのアプリが十分に責任を果たせないのなら、チームを縮小し、Twitterのアプリに統合することは理にかなう選択かもしれない。
Twitterが人員や余分な部門を削減し、中核プロダクトとビジネスを強化できるなら、Twitterが財政的に成功する後押となる、リソースある企業に会社を売却できるかもしれない。
開発者はTwitterよりGoogleを信頼する
一方、Googleは無料の開発ツールを有料版にアップセルし、モバイルアプリ開発者を有料でツールを使うカスタマーに変えることに注力している。Googleは昨年7月に開発者が自分のモバイルアプリやウェブサイトのアプリストア用のスクリーンショットが簡単に作成できるツールLaunchKitを買収した。
AmazonのAWSの成功を見て、アプリの全ての要素を自分で開発しない開発者に対し、強固なバックエンドのインフラを販売することにGoogleはチャンスを見出している。
Twitterの開発者が騙された気分になったのは今回が初めてではない。2008年から2012年の間、Twitterは上昇気流に乗り、十分なユーザーの利用を得るのに必死で、Twitterクライアントを作れるAPIを開発者に提供していた。
しかし、2012年の終わり、自社の広告ビジネスを強化するため、突然APIアクセスを制限した。Twitterのために数年かけて開発者が制作していたいくつかのツールを実質、潰すこととなった。さらに、その後Twitterは買収したGnipへのアクセスを有料にするため、ファイアホースデータの再販サービスDataSiftに対しても同じことをした。
Jack DorseyはTwitterがこのように開発者を扱ってきたことに対して謝罪した。しかし、一度開発者を裏切ったがためにコミュニティーの信頼を失い、それがFabricの成功を阻んむ要因になった。FabricをGoogleに買収したことで、今後開発者がTwitterを信頼するのはさらに難しくなるかもしれない。
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(翻訳:Nozomi Okuma /Website)