Twitterは音楽スタートアップのSoundCloudを買うべきでない[アップデート:買わないらしい]

TwitterがSoundCloudを買収しようとしているという情報が流れた。Re/codeのPeter Kafkaが両者に近い情報源から聞いたという。

SoundCloudは誰でもオーディオファイルをアップロードでき、誰でもストリーミングあるいはダウンロードして再生できるサービスだ。ユーザーは互いにフォローでき(この点はTwitterに似ている)、新人のDJやインディーバンドばかりでなく、大物ミュージシャンもプロモーションのためによく利用している。SoundCloudのビジネスモデルはアップロード、ダウンロード数の制限を外した有料のProアカウントだ。加えてスライドショー形式の画像やフォロー相手の推薦などのネーティブ広告も実験中だ。

SoundCloudはなるほど音楽版のYouTubeになる可能性がある。しかしそのことはGoogleの真似をしてTwitterがこのドイツのスタートアップを買収すべきだということにはならない。株式上場で得た20億ドルの資金の使い道ならもっと他にあるだろう。

[アップデート: ドイツのニュースメディア、SPIEGEL ONLINEが先ほど伝えたところでは、TwitterはSoundCloudを買収しないという。SPIEGELの情報源によれば、TwitterがSoundCloudの買収を検討していたのは事実だが、結局、断念したという。]

2007年の創立以来、SoundCloudはMyspaceが人気を失った後、その穴を埋める形で、セルフ・プロモーションを試みるミュージシャンに高い人気を得ている。2013年7月には登録ユーザーが4000万、非登録聴取者も加えれえば月間ユーザー数は2億人にもなると発表された。2013年10月には月間ユーザー数はさらに2億5000万人に達した。現在では3億人に近いものと推定されている。

SoundCloudは6000万ドルを調達した今年1月のラウンドで7億ドルと評価されている。Twitterが買収するならその額の何倍も支払う必要があるだろう。Twitterは上場によって市場から21億ドルの資金を調達したものの、依然として赤字だ。SoundCloudの買収はTwitterのキャッシュを大きく減少させる。

【中略】


Twitterは拡大の前に本業への集中が必要

私は何人もの音楽系テクノロジー企業のトップに取材したが、SoundCloudの買収がTwitterにとって必須である理由を説明できたものは誰もいなかった。

Twitterはすでに音楽分野への拡大を模索してきた。昨年4月、買収したWe Ar Huntedのテクノロジーをベースにスタンドアローン・アプリの#Musicを発表したものの、不人気のため今年3月にはアプリを取り下げている。音楽は生活の中で非常に重要だが、人々は必ずしもTwitterにそれを求めていないようだ。.

TwitterがSoundCloudを買収しても事情は変わらないだろう。SoundCloudはTwitterのような一般ユーザーの投稿によって成り立つソーシャル・メディアではない。SoundCloudのコンテンツは大部分がプロないしセミプロのミュージシャンによって作られている。

TwitterやVineでも著名ユーザー、インフルエンサーの影響力は大きいが、投稿のほとんどは一般ユーザーによるものだ。しかし一般ユーザーがSoundCloudに音源をアップしても誰も反応はゼロだろう。SoundCloudの圧倒的多数のユーザーはリスナーであり、マネタイズは非常に難しい。Twitterがミュージシャン向けにプロモーション・ツールを作りたいならSoundCloudを買収するより独自に開発する方がはるかに現実的だ。

これに対してInstagramを買収できていたら、Twitterは大量のユーザー投稿コンテンツと大量のPVを確保できただろう。しかしInstagramはとうにFacebookのバスに乗って出発してしまった。

一方でSoundCloud側にはTwitterの傘下に入ろうとする動機が十分にある。Twitterのネットワークを通して音楽をプロモーションし、Twitterのビジネス・チームの力を借りて収益化が図れるからだ。SoundCloudの現在のビジネスモデルでは株式上場を成功させるのは難しいだろう。私が取材した情報源よると、大手レコード会社はSoundCloudに対するライセンス条件を厳しくしており、おそらく一部のレーベルはSoundClouddを叩き潰すつもりだろうという。

そうであればこの時点で買収によるエグジットを狙うのは自然だ。だがユーザー数の急成長が示すとおり、この難局を生き延びることができれば大企業への成長も夢ではないかもしれない。

Twitterがもっと体力のある会社であればこの買収も意味があるかもしれない。YouTubeを買収したときGoogleはすでにAdSenseビジネスが軌道に乗っており、GmailとGoogleマップも初期の欠点を克服しつつあった。当時YouTubeは創業1年で調達した資金総額もわずか1200万ドルだった。それに引き換えTwitterはいまだにコア・ビジネスで安定して利益を出せるようになっていない。広告事業もすばらしいスタートは切ったものの、会社を黒字化させるのはまだ先の話だ。SoundCloudは創立7年で1億2300万ドルを調達している。なるほどSoundCloudは買収候補として有望な企業かもしれないが、現在のTwitter向きではないだろう。

今のTwitterはコア・サービスの充実に務める時期だ。特にまだフォロワーをもっていない新しいユーザーがTwitterを快適に利用できるように機能を強化する必要がある。Twitterは虎の子の資金をコア・サービスを改良できるような人材の採用や会社の買収にあてるべきだと思う。

[画像: Len Peters/Flickr via NHPR]

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

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