Varosは自社のパフォーマンス指標を他社と比較できるデータ共有ツール

ある分野で上場企業の1社が厳しい四半期を報告すると、同じ分野の他の企業の株価が下がる傾向にある。しかし、非上場企業の場合、なぜ先週のコストが増加したのか、それは自社の遂行能力によるものなのか、それとも他の企業でも起こっていることなのか、正確に把握することは難しい。

サンフランシスコとテルアビブに拠点を置くVaros(ヴァロス)は、顧客獲得コストなどの主要なパフォーマンス指標について、その企業が同業他社と比較してどうなのかということを解明している。

CEOのYarden Shaked(ヤーデン・シャケッド)氏は、CTOのLior Chen(ライオー・チェン)氏と父親のGil Shaked(ジル・シャケッド)氏とともに2021年にVarosを設立し、Y Combinator(Yコンビネーター)の2021年夏のバッチに参加した。彼らは、顧客の技術スタックとのAPI統合を通じて、データをクラウドソースするデータ共有ツールを作り上げた。チェン氏によると、データはリアルタイムで取得され、顧客によるメンテナンスは必要ないという。

「eコマース企業はデータを重視しますが、一般的には自社の過去のデータを参照することしかできません」と、ヤーデン・シャケッド氏はTechCrunchに語った。

「無視界飛行しているようなものです。自社のパフォーマンスが良いのか悪いのかわからず、KPI(重要業績評価指標)が良いのか悪いのかも答えることができず、何が問題なのかわからないため、どのレバーを引けばよいのかもわからないのです」と、同氏は続けた。「その一方では、トレンドもあります。顧客獲得コストが急上昇した場合、それは市場のトレンドである可能性があります。私たちは、データ連携を通してその解決策を提供します。人々が入力したデータを、我々は匿名化して、洞察のために顧客に返します」。

Varosでは、すべてがセルフサービスだ。顧客がデータを接続すると、データはさまざまな階層に分類され、さまざまな方法でタグ付けされる。ユーザーはダッシュボードを使って、例えば月に10万ドル(約1150万円)をデジタルマーケティングに費やしているアパレル企業の一定期間の平均受注額と比較し、その期間の推移をグラフで見ることができる。

Varos創業者。左からジル・シャケッド氏、ヤーデン・シャケッド氏、ライオー・チェン氏(画像クレジット:Varos)

その中でも特に人気が高いのが、月曜日の朝に提示されるVarosのトレンドレポートで、ユーザーは週ごとのデータと週ごとのベンチマークを比較することができる。「これは、ユーザーが自社のパフォーマンスを直接の競争相手と比較して理解するのに役立つ、新しいカテゴリーのデータ分析です」と、ヤーデン・シャケッド氏は付け加えた。

同氏によると、この種のデータ連携は、農業や旅行、そして競合他社のデータに基づいて評価を行うレイトステージ投資など、他の業界では行われているが、eコマースやSaaSの分野では比較的新しいものだという。Varosは2021年8月にソフトローンチして以来、すでに大きな支持を得ており、現在は250以上のユーザーが、Varosにマーケティングデータを入力し、同業他社との比較を行っている。

Varosは、データのマーケットプレイスを構築するとともに、無料でサービスを提供してきたが、複数の有料顧客も抱えている。この需要に対応するため、同社はIbex Investors(イベックス・インベスターズ)が主導する400万ドル(約4億6000万円)のシード資金調達を実施した。このラウンドには、Y Combinatorの他、元Thomson Reuters(トムソン・ロイター)CEOのTom Glocer(トム・グローサー)氏、Bonobos(ボノボ)共同創業者のAndy Dunn(アンディ・ダン)氏、Farmers Business Network(ファーマーズ・ビジネス・ネットワーク)共同創業者のAmol Deshpande(アモル・デスパンデ)氏、Crossbeam(クロスビーム)CEOのBob Moore(ボブ・ムーア)氏、Connectifier(コネクティファイア)共同創業者のJohn Jersin(ジョン・ジャーシン)氏などの個人投資家が参加した。

米国時間2月23日に正式にローンチしたVarosは、マーケティングKPIからスタートしたが、それだけに留まるつもりはない。Shopify(ショッピファイ)、Google(グーグル)、TikTok(ティックトック)の統合など、収益の伸びやコンバージョン率を追加していくだけでなく、金融、製造、販売など、他の分野にも拡大していく予定だと、ヤーデン・シャケッド氏は述べている。

同社は1カ月前まで創業者3人だけだったが、現在はプロダクトとデザインを中心に7人のチームで運営している。2022年末までに人員の倍増を計画しているという。

「私たちの仮説が機能していることをうれしく思います」と、ヤーデン・シャケッド氏は語っている。「以前、Varosがなかった頃は、何かを見つけたり変更したりすると、どこがうまくいっていないのかを理解するための学習期間が必要になる傾向にありました。現在は、Varosがあれば、自分の目で見たものに基づきながら、創造性に集中することができます」。

画像クレジット:Varos

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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