商業用有人宇宙飛行企業であるVirgin Galacticは、同社の主要な宇宙船デザインの3つ目となる、初の「Spaceship III」(スペースシップIII)を発表した。この新シリーズの第1弾は「VSS(Virgin SpaceShip) Imagine」(VSSイマジン)と名づけられ、2021年夏の初の滑空飛行を目指して地上試験が開始される。VSSイマジンの外観は、鏡面仕上げのラップアラウンド型で、地上から宇宙へと移動する際に変化する環境を反映するように設計されているが、それ以上に重要なのは、Virgin Galacticが宇宙船の大規模な製造のために必要なエンジニアリング目標の達成に近づいていることだ。
Virgin GalacticのCEOであるMichael Colglazier(マイケル・コルグラジア)氏に、VSSイマジンについて、そしてそれが当社にとって何を意味するのかを聞いた。
「これらはより速いペースで製造できます。次の段階の宇宙船に求める製造スピードと比べるとまだ遅いですが、ここで私たちが期待しているのは、(VSS) Unity(VSSユニティ)から学んだことをすべて取り入れ、これらの宇宙船をより速いペースで回転させるために必要なことを組み込んだことです。というのも、飛行可能なフライト数は、宇宙船の数と、それをどれだけ早く回転させることができるかに左右されるからです」と説明した。
Virgin Galacticが2016年9月に初飛行を行い、現在もニューメキシコ州で試験や商業打ち上げ準備プログラムに使用している宇宙船「ユニティ」とは異なり、イマジンは「モジュール式設計」を採用しているため、メンテナンスが非常に簡単で、後続のミッションを飛行できる確率も増加している。コルグラジア氏が述べたように、宇宙船の設計を、それぞれの宇宙港で年間約400回の飛行という会社の目標をサポートできるところまで持っていくには、まだ取り組むべき課題がある。しかし今回のアップグレードは重大なもので、当社はすでにスペースシップIIIクラスの2機目である「VSS Inspire」(VSSインスパイア)の製造作業を開始している。
イマジンとインスパイアは確かに技術的な成果だが、2020年7月にDisney Parks InternationalからVirgin Galacticに移ったコルグラジア氏は、同社の消費者ブランドの観点からも、今回の宇宙船のデビューの重要性を強調している。
「画像に現れているもの、衣服の選択、配信している映像は、消費者向けブランドの立ち上げという明確なステップであり、Richard Branson(リチャード・ブランソン)のフライトに向けて夏の間に構築していくものです。私たちは意図的に『宇宙の民主化』という高尚な言葉を使っていますが、宇宙はすべての人のためのものです。すべての人がそこに到達するまでには、しばらく時間がかかるかもしれませんが、実現は近づいています。このことは消費者の立場に立った、『なぜこれをするのか』を問うことにつながります」と彼は語った。
実際、この消費者向けビジネスは、入社してからの8ヵ月間、コルグラジア氏の仕事の多くを占めている。彼が入社したVirgin Galacticには「世界的なチーム」があり、航空宇宙分野は完成されていたが、彼が特に貢献したのは、商業面でのビジネスをそれに見合うように構築することだったという。
「現在、この種のビジネスの拡大に慣れた人材を投入しています。Swami Iyer(スワミ・アイヤー)は先週の月曜日に勤務を開始しました。また、Joe Rohde(ジョー・ロード)のようにエクスペリエンスの分野で活躍している人材もいますが、こうした人材は代わりが利きません。このような人材は、このエクスペリエンス関連の中身を構築していくために必要なものです」と彼は語った。
アイヤー氏は、GKN Advanced Defence SystemsやHoneywell Aerospaceなど、商業宇宙活動分野および防衛産業での長年の経験を活かし、Aerospace Systemsの社長として入社した。一方、ロード氏は、長年ディズニーのイマジニアとして活躍し、Virgin Galactic初の「エクスペリエンス・アーキテクト」として入社し、宇宙飛行士の顧客とその友人や家族、さらには広く一般の人々にとってのVirgin Galacticの体験を意味付けすることに注力している。
コルグラジエ氏は、世界のどこで宇宙船に乗るかによって、体験のビジョンも変わってくるという。ヨーロッパ、アジア、インド、オーストラリアのどの宇宙港から旅立つのかによって、たとえ宇宙船自体がニューメキシコ州での使用と同じように使用されていても「劇的に異なるもの」になるはずだと語る。これはアナハイム、パリ、香港、上海、東京のディズニー・パークを率いた経験を持つ経営者の論理的なアプローチであることは間違いないだろう。
最終的には、Virgin Galacticが消費者ブランドとして追求する基本理念は、たとえ実際に「宇宙に行く」という部分が短期的には多くの人にとって手の届かないものであったとしても、インクルージョンに焦点を当てたものになるだろうとコルグラジア氏は語っている。
さらに彼は「これはすべての人のためのものですし、すべての人のためのものでなければなりません。この野望が実現するには、何年かかかるかもしれません。しかし、その間に、私たちのブランドや会社、私たちのさまざまな層の活動にすべての人々がアクセスできるような方法を見つけなければなりません。私たちはそうした目的意識を持って行動するつもりです。主に、頂点の体験について―具体的には新しい船を宇宙に運ぶということについて話すことになるでしょう。しかし、そうした話を細かく分解できるかどうかが非常に重要であり、私たちがすべての人に手を差し伸べるブランドであることができるかどうかも、非常に重要です」と語った。
それは、今日デビューするこの宇宙船へのアプローチから始まっており、同社が公開を記念して配信した動画の口調(上の埋め込み動画を参照)にも明らかだとコルグラジア氏はいう。また、Virgin Galacticには600人の乗客が予約しており、フライトを待っている。2021年末に予定されているブランソン氏のフライトの後には、当然ながらそれが重要な焦点となる。
最後に、コルグラジア氏にいつ宇宙に行くつもりなのか聞いてみた。彼は「お金を払ってくれるお客さんの前に割り込むことはしたくない」と言った。
「列を割り込むと600人くらいの人に怒られそうだから、消費者に集中し続けるつもりです」と彼はいう。「でも、600人の人々の後ろにはまだ誰も並んでいないから、誰かが並ぶ前に私が並んでしまいましょうか」。
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カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Galactic、宇宙船
画像クレジット:Virgin Galactic
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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)