企業ITにもモバイルが大きく浸透し、BYODの普及も進んでいるため、企業を最大の顧客とするサーバ仮想化の大手VMWareはこのほど、15億ドルを投じて、モバイルデバイス上のデータとアプリケーションのセキュリティを支援するAirWatchを買収した。
この買収と、新しいストレージ技術やデータベース、セキュリティ等に最近投じられた大きな金額は、これからはますます、ビジネスアプリケーションとサービスをモバイルに持ち込まなければならない、という、差し迫った経営観の現れだ。
AirWatchはこれまで、Insight Venture PartnersやAccel Partnersなどから2億2500万ドルを調達している。ここをVMWareが買ったということは、これからは企業の社員が企業の外で(モバイルを駆使して)仕事をする機会が増えていくため、そこでのセキュリティをサービスとして売っていくことが、同社の重要な商機になる、と考えたからだ。
Insight Venture PartnersのマネージングディレクターRichard Wellsは次のように言う: “AirWatchは今、重要でリアルな価値を提供している。今では、企業が自分のデータとアプリケーションを完全な制御下に置きたいと考えたとき、AirWatchが馳せ参ずる”。
Insight…らが仕切った2013年の2億2500万ドルのシリーズAラウンドは、テクノロジ企業への一回の投資額としてはここ数年で最大のものだ。この件に詳しい情報筋によると、AirWatchの評価額はほぼ10億ドルに急上昇した。
モバイルセキュリティ企業にこれだけの巨額が向かうのも、今企業ITのインフラの形が急激に変わりつつあるからだ。とくに変化が大きいのは、末端社員の日常業務を支える部分のインフラだ。
ベンチャーの投資家だけでなくVMWareのような企業も、モバイルセキュリティのハードウェアやソフトウェア、およびサービスに投ずる費用を着実に増やしている。これからは、いろんな人がいろんな場所から仕事をしていく時代なので、そういう場面でのセキュリティが新しい課題になっているのだ。CrunchBaseのデータ(下図)を見ても、昨今のモバイルセキュリティ企業のモテぶりがよく分かる。
ということは、モバイルセキュリティ企業に大金を投ずるのはVMwareばかりではない。2012年には、Citrixが、VCたちが支援していたZenpriseを買収し、IBMはモバイルデバイス管理のFiberlink Communicationsを額非公開で手に入れた。VCたちの支援も増加しており、たとえば、同じくモバイルセキュリティのMobileIronには、1億2400万ドルが投資された。
VMwareに買収されたAirWatchは、今後はBoxやDropboxなどとも競合することになる、と覚悟している。この後者二社は、過去2か月で合計3億5000万ドルの投資を獲得している。
その理由をAirWatchのCEO John Marshallは次のように語る: “弊社のプラットホームは今後、企業のコンテンツ分野に伸びていくことになる。弊社には、企業のコンテンツコラボレーションを可能にする技術が揃っている。弊社には、データセンターを駆動するインフラストラクチャと仮想化技術を持つパートナーが揃っている”。
VCやそのほかのベンチャー投資家たちは、このような動きを、企業がクラウドへ移行していく最初の波だ、と見ている。たとえばKleiner Perkins Caufield & ByersのパートナーMatt Murphyは、“消費者の世界で、100%PC0%モバイルから80%モバイル20%PCへの移行が起きたように、これからは同じ移行が企業世界で起きるのだ”。
写真: Flickr/funkypancake
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))