VRヘッドセットは次なるPelotonになれるのか?

仮想現実(VR)スタートアップへの投資は、ここ数年間、まばらになりつつある。普通の人たちに受け入れられるまでの長い時間を、投資家が耐えて続けなければならないからだ。その一方で、インターネットに接続できる「コネクテッド・フィットネス」機器は爆発的に伸びている。自宅待機で関心が高まり、Peloton(ペロトン)などの企業はユーザー数を大幅に増やしたほか、Lululemon(ルルレモン)はMirror(ミラー)を5億ドル(約540億円)で買収した。

FitXR(フィットエックスアール)は、VRヘッドセットが次なるコネクテッド・フィットネス分野の売れ筋になると見ている。人気のVR運動アプリBoxVR(ボックスブイアール)を開発するこのスタートアップは、Hiro Capital主導による750万ドル(約8億円)のシリーズB投資をクローズしたとTechCrunchに伝えた。この投資の内訳は、630万ドル(約6億7000万円)がエクイティー投資、120万ドル(約1億3000万円)がイギリスの政府系金融機関Innovate UKからの融資となっている。その他、Adam DraperのBoostVC、Maveron、TenOneTen Venturesが投資に参加している。

FitXRのゲームBoxVRは、VR機器で使えるエクササイズ専用アプリとして知られるようになった。Beat Saber(ビートセイバー)の影響を受けたGuiter Hero(ギターヒーロー)的なインターフェイスを備えたボクシングゲームだが、素早いアッパーカットやジャブなど、体を激しく使う動きに重点が置かれている。同スタートアップは、現在、FixVRをOculus Store、PlayStation Store、Steam
を通じて29.99ドル(日本では2990〜3259円)で販売している。追加コンテンツは9.99ドル(日本では1000円前後)で用意されている。

BoxVRの画面。画像クレジット:FitXR

VRを利用した運動は、ゆっくりとヘッドセットの一般的な使用事例になってきた。それは、体を動かす必要のある激しいゲームタイトルのお陰だ。昨年、価格は未公開ながらFacebook(フェイスブック)が買収したBeat Saberは、そうした機会を本格的に実現した最初のタイトルとなった。今年の初め、16zが支援するVRスタジオ、Within(ウイズイン)は、Supernatural(スーパーナチュラル)というタイトルの運動アプリをサブスクリプションで提供開始した。昨年末には、サンフランシスコのYUR(ユア)が、そのVR運動ソフトウェアに110万ドル(約1億1800万円)のプレシード投資を獲得している。

VR市場は、自宅待機要請によって大きく成長したが、この業界を支える柱であるOculus(オキュラス)がサプライチェーンの問題に苦しむと、多くのVRスタジオはその好機に恵まれずに取り残されてしまった。399ドルのスタンドアローン型Quest(クエスト)を含むOculusのすべてのヘッドセットは、今年の初めから売り切れか品薄が続いている。この状態は、次第にFacebook(フェイスブック)への依存度を高めるこの業界の成長に、悪影響を及ぼしている。

VRヘッドセットには心拍数モニターやその他のフィットネス用のトラッキング機能はないが、VR開発者は、ユーザーのヘッドセットやコントローラーの運動量や速度に関するデータを大量に収集できる。FitXRは、そのデータからユーザーが燃焼したカロリーを計算することで、1日に燃焼したいカロリー量をアプリ内でユーザーに設定させることが可能になっている。

今のところ、FitXRの製品はVRヘッドセットの中に留まっているが、同社は今回の投資を使って現在20名のスタッフを増員することにしており、ヘッドセットを超えた展開への興味を同社トップはほのめかしている。

「私たちは、製品の独自の利用法を考えています。それは仮想現実に縛られません」と、FixXRのCEO、Sam Cole(サム・コール)氏はTechCrunchのインタビューで話していた。「しかし、もっとも楽しい運動方法はVRヘッドセットにあるという信念が変わることはありません。そのため、私たちは企業として、その分野での開発とイノベーションを続けてゆきます」

画像クレジット:via FitXR

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。