世界最大の小売企業Walmartは、マネジメントやカスタマーサービスといった種々のテーマの従業員向けトレーニングに近々VRテクノロジーを活用し始める予定だ。
このVRインストラクションは、同社がアメリカ中の200か所に開設している”Walmart Academy”というトレーニングセンターへ今年中に導入され、年間推定15万人が参加する同プログラムの効率化を目指す。各トレーニングセンターには、VRコンテンツを利用するためOculus RiftとゲームPCが設置される予定だ。
全てが360度動画ベースのWalmartのVRインストラクションは、参加者がさまざまな場面に直面し、目の前に表示されるインタラクティブな選択肢から自分がとるべき行動を選ぶような仕組みになっている。シナリオの中には、カスタマーサービスやマネジメントに関するもの、さらにはブラックフライデーの混雑具合を再現したものなど季節的な設定も含まれている。
また、ひとつひとつのインストラクションは30秒から5分程度の長さで、従来のトレーニング内容を補完するようなつくりになっている。
WalmartはVRトレーニング環境の開発にあたり、STRIVR Labsと呼ばれる比較的知名度の低いVR企業とタッグを組んだ。同社はこれまで、主に大学生やプロのアスリートのためのVRトレーニングの開発を行ってきた。
一体両社のコラボレーションはどのように始まったのだろうか? 全ては、Walmartのオペレーション部門の幹部が、アーカンソー大学のフットボールチームで使われているSTRIVR製のVRトレーニングを見かけたときに始まった。その後、STRIVRのCEO Derek Belcherにとって「思いがけない問い合わせ」がWalmartから寄せられ、本格的な議論が始まった。そして、今年の1月終わりには国内のトレーニングセンター30か所でパイロットプログラムがスタートしたのだ。パイロットプログラムの期間中、両社は協力しながらWalmartのトレーニングに合うVRコンテンツを模索していたとBelcherは話す。
「VRを使うことに意味があると思えるものは、全て組み込もうとしました」と彼は話す。「その結果、袋詰作業から店長としての仕事まで、さまざまな役職に合ったコンテンツが整っています」
Walmartとの契約締結からは数か月しか経っていないものの、既にSTRIVRには金融サービス企業や大手自動車メーカーなど、数社から引き合いがきているようだ。
「文字通り世界最大規模の企業を初めての法人顧客に迎えるというのは、かなりの大事ですからね」とBelcherはTechCrunchに対して語った。
注目すべきことに、STRIVRは既に黒字化を果たしている。細かな数字は明らかにされなかったが、Belcherは過去2年間で同社が「数百万ドルの売上」を計上しており、実際の数字は1000万ドル強だと話していた。なお、STRIVRはInsignia Venture PartnersやBMW i Ventures、Advancit Capital、Presence Capitalからこれまでに500万ドルを調達している。
現状の契約はトレーニングセンターだけに関するものだが、Belcherいわく、Walmartは最終的にアメリカ国内の5000店舗にVRヘッドセットを導入したいと考えているようだ。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)