YouTubeがロシア国営メディアを世界的にブロック

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対応するポリシーをさらに拡大し、YouTube(ユーチューブ)はクレムリンの支援を受けたメディアを、欧州だけでなく世界的にブロックすると発表した。欧州では現地時間3月2日以降、ロシア国営メディアであるRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)、およびその子会社が、欧州連合(EU)による制裁として、放送や配信を禁じられている

このコンテンツをブロックするYouTubeの措置はいかなる法的義務をも上回るものだが、まったく前例がないわけではない。Apple(アップル)はウクライナのMykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)副首相から要請を受け、世界中のApp Store(アップ・ストア)からRTとスプートニクのアプリを引き上げた。フェドロフ副首相はアップルのTim Cook(ティム・クック)CEO宛に、ロシアでのデバイス販売の停止とApp Storeへのアクセスを完全に遮断することを求める書簡を送っているアップルはロシアでの製品販売も停止した)。

つまり、YouTubeの文言は、EUが制裁した(合計で)6つのRTとスプートニクの事業を禁止するよりも、さらに進んでいく可能性を示唆しているということだ。同社は現在「ロシアの国営メディアとそれに関連するYouTubeチャンネルへのアクセスを、全世界的にブロックしている」と書いている(なお、TechCrunchでは禁止の範囲についての明確化を同社に求めているところだ)。

YouTubeがツイートで発表したポリシーの更新によると、ロシアの国営メディアに対するYouTubeのブロック拡大は「直ちに実施」されるものの、この変更が有効になるまで時間がかかる可能性があると注意を促している。同プラットフォームは「システムの立ち上げには時間がかかることが予想されます」と書いている。

もう1つの新たなステップとして、YouTubeはそのコミュニティガイドラインにある特定のポリシーから、ウクライナに焦点を当てた執行を実施するという。それは「十分に立証されている暴力事件」を、否定、軽視、または些細なものとして矮小化するコンテンツを禁止する規定だ。「私たちは現在、このポリシーに違反するロシアのウクライナ侵攻に関するコンテンツを削除しています」と、YouTubeは述べている。

ここまで執行を強化することは、おそらく初めてであり(ポリシー自体は新しいものではないが)、これはウクライナ国内で起こっていると報じられている現実を否定するため量産され、急速に流布されているロシアのプロパガンダに対応することを意図しているものと思われる。

例えば、ウクライナ南部の港町マリウポルがロシア軍に砲撃され、産科・小児科病院が爆破された最近の事件では、ロシアのメディアはすぐに陰謀論の標的にして、写真や動画に写った犠牲者が俳優であるとか、怪我をした演技をしていると示唆した。さらに、ウクライナ軍兵士の大隊が狙撃位置についたため、病院から患者や職員がいなくなり、病院そのものが正当な標的となったという、同じ様な偽りの主張も行っている。

TechCrunchは、この執行発表に関するより幅広い背景についても、YouTubeに質問を送っている。

YouTubeは、ウクライナ関連の措置を講じた最近の更新を実施して以降、ヘイトスピーチポリシー、誤報に関するポリシー、映像コンテンツなど、多くのポリシーに違反しているとして、1000以上のチャンネルと1万5000以上の動画を削除したと発表している。

また、YouTubeは戦争に関する「質の高い」情報を増幅させる、つまりクレムリンのプロパガンダよりも真実の報道が優先されるようにするという、以前発表した施策の進捗を示したいとも考えている。ユーザーをこのコンテンツに誘導する(ホームページのニュース速報と「トップニュース」セクションを通じて)変更を行って以来、ウクライナの「信頼できるニュースソース」の視聴回数は約1700万回を超えたと述べている。

ロシアのYouTubeユーザーを対象とするさらなるステップで、YouTubeは同国のYouTube広告およびGoogle(グーグル)広告を一時的に停止した措置を拡大し、ロシアのユーザーが同プラットフォーム上で収益化できる方法のすべてをカバーするようにした、つまり収益を生み出す機会をすべて断ち切ったことも認めた。これまでYouTubeは、ロシアのユーザーにいくつか収益化するための選択肢を残していた。

Googleはまた、ロシアの銀行を標的とする西側の制裁措置によって生じた「決済システムの混乱」を理由に、ロシアにおけるGoogle Play(グーグル・プレイ)ストアでの課金や、YouTubeの支払いシステムを一時的に停止すると、米国時間3月10日に発表している

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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