PlanetScaleの共同ファウンダーは元YouTubeのエンジニアで、このサービスの巨大化を助けたVitessデータベースシステムの開発者だ。現在2人が創業したスタートアップは大規模なデータに迅速にアクセスすると同時にセキュリティーも確保したい企業にVitessを販売している。
Vitessは稼働中に簡単にデータベースのレプリケーションができるのが大きな特徴だ。 この機能はEUのGDPR(一般データ保護規則)の遵守を容易にする。GDPRではユーザーデータをそのユーザーが居住する国に保存しなければならないことが要求され、これが企業にとって大きな負担となっている。
PlanetSacaleはAmazonのAWSのライバルであり、同時に補完関係にある。またコンピューティング全般のインフラとなる可能性があることを考えれば、シリーズAで2200万ドル(約24億円)という巨額の資金調達に成功したことも不思議ではない。ラウンドをリードしたのはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)で、長年Googleのスパム対策のトップを務めたことで知られるマット・カッツ(先月、大統領直属のUSデジタル・サービス責任者に就任)や以前からの投資家であるSignalFireが加わっている。1年前にPlanetScaleが調達したシード資金は300万ドルに過ぎなかったことを考えれば一大飛躍だ。
今回の投資を機会にAndreessen Horowitzのジェネラル・パートナーであるPeter Levine氏がPlanetScaleの取締役に就任し、エンタープライズ向け事業に関するノウハウによってスタートアップを助ける。
CEOのJitendra Vaidya氏は次のように述べている。
以前我々はAWSやRDBをホスティングするサービスをライバルと考えていたが、むしろパートナーだということに気づいた。われわれのサービスはAWSなどのデータベースホスティングサービスのフロントエンドとして大きな需要がある。PlanetScaleは順調に成長中だ。
ライバルのデータベーススタートアップも巨額の資金調達を行っているのでPlanetScaleも対抗する必要があった。Andreessen Horowitzと関係を作れたことは大きな成果だ。テクノロジーとして見ると、VitessはGoogleが開発したKubernetesの先行者にあたり、MySQのミドルウェアとなってデータベースの水平的規模拡張を助けるプロダクトだ。Vitessは信頼性とパフォーマンスを損なうことなく大規模データベースのメモリー効率を高めるプロダクトとしてまずYouTubeのバックボーンに採用された。2014年にSugu Sougoumarane氏自身が下のビデオでVitessの仕組みを説明している。
PlanetScaleのVitessの販売は4つのチャンネルに分かれている。一つは自社サーバーを利用したデータベース・アズ・ア・サービス(DBaaS)、 次はクライアントがオンプレミスないし他のクラウドで利用するためのテクノロジーのライセンス、 3番目はデータベース専門家に対するVitess利用の教育、4番目がオープンソース版Vitessを利用するユーザーに対するオンデマンド・サポートだ。PlanetScaleには現在18社と契約して有料サービスを提供しているが、近くサビスを一般公開する計画だ。【略】
PlanetScaleは充分な資金を得たため人員を現在の20人から倍増させ、サポート、セールス、マーケティング部門を強化する計画だという。CEOのJitendra Vaidya氏は「我々共同ファウンダーは2人ともエンジニアなので、技術面に関しては心配していない。しかしエンタープライズ向け市場に参入するための戦略が必要だ」と説明する。
Andreessen Horowitzのような有力ベンチャーキャピタルがリードするシリーズAで2200万ドルを調達できたのはどんなスタートアップであれビッグニュースだが、PlanetScaleの場合はテクノロジーエコシステム全体に対する影響が大きい。EUのGDPRは巨大テクノロジー企業の行動を抑制することを目的としているが、実態としては大小あらゆる企業にコンプライアンス・コストを強いるものとなっている。皮肉なことに、このコスト負担はリソースに余裕のある大企業より中小のビジネスに重くのしかかるものとなっている。
「データの保存場所をユーザーの居住国にローカライズせよ」というGDPRの要求はスタートアップにとって耐え難い負担となる。PlanetScaleのVitessは単にデータベースの運用を省力化、効率化するだけでなく、GDPRを遵守することを可能にする。PlanetSclaleのサービスを利用することで、スタートアップは新しいサービスを提供するという本来の目的に専念できるようになるだろう。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)