ZuoraのIPOは企業向けSaaS黄金時代への新たなステップだ

Zuroaの創業者兼CEOであるTien Tzuoは、多くの人たちの意識に上るはるか前から、サブスクリプション経済のビジョンを持っていた。彼は、企業がサブスクリプションで成功するためには、課金状況を簡単に知るための簿記システムが必要であることを理解していたのだ。同社は4月12日株式の公開を果たした。これはSaaSの成熟を示す、新たな道標のひとつである。

TzuoはSalesforce初期の従業員であり、同社最初のCMO(最高マーケティング責任者)を務めた。彼が勤め始めたのは、SalesforceのMarc Benioffが会社を立ち上げるためにアパートを借りたことで知られる、会社黎明期の90年代後半のことである。TzuoはSalesforceに9年間在籍し、そのことが、Salesforceのようなサブスクリプションベースのビジネスの本質を理解するのに役立った。

「私たちは、ソフトウェアを開発し、マーケティングし、そして提供するための素晴らしい環境を作りました。私たちが書き換えたのは、開発方法、マーケティング、そして販売に至るまでの全てのルールです」とTzuoは2016年のインタビューで私に語った。

彼は、単体製品の販売と計上のためにデザインされている従来の会計手法が持つ、基本的な問題点を認識していた。サブスクリプションはまったく異なるモデルであり、収益を追跡し、顧客とコミュニケーションをとるためには新しい方法が必要だったのだ。Salesforceのような成長企業における確実な仕事を捨て去って、2007年の初めに会社を設立したTzuoは、既に長期的な視点を持っていたのだ。

彼がそれに踏み切ったのは、他の誰よりも早く、SaaS企業がサブスクリプション向けの簿記システムを必要とするという見通しを持っていたからだが、他の無関係な企業たちも、やがてそれを必要とするだろうということに、やはり早い段階から気がついていたのだ。

サブスクリプションシステムの構築

彼が2016年のインタビューで語ったように、もし顧客が毎年1ドルずつ10年間の支払を約束したなら、会社は確実に毎年その1ドルを手にすることができて、最終的に
10ドルを手にすることができることを知っていることになる。しかしその金は実際に手に入れるまで計上することはできない。その繰り返し発生する収入はそれでも価値を持っている、なぜなら投資家たちは、まだ帳簿にのっていなくとも、会社がこの先10年間収益を挙げることができることがわかるからだ。そこがZuoraの登場する場所だ。他の誰もがそれをできなかったときに、その定期収入を織り込んで報告することを可能にしたのだ。さらに、時間に沿って請求を追跡し、リマインダを送信し、企業が顧客との関わりを保ち続けることを助けることができる。

写真:Lukas Kurka/Getty Images

Constellation Researchの創業者兼主席アナリストのRay Wangが語るように、Zuroaがサブスクリプション経済のアイデアを切り拓いたのだ。そしてそれはSaaS企業だけを相手にしたものではない。ここ数年私たちは、企業たちが1回限りのアイテム販売ではなく、サービスとSLA(サービス水準合意)の販売について語るのを耳にしている。しかし少し前には、大部分の企業がそれについて考えることはなかったのだ。

「Zuroaは企業たちが収益化を考える方法を開拓したのです」とWangは語る。「例えばGEのような大企業は、風力タービンの売り切りから、サブスクリプションの販売へと移行することが可能です。例えばあるレベルのキロワット時のグリーンエネルギーを、午後1時から5時までのピークタイムに98%の可用率で提供するなどという形です」。Zuoraが登場する前には、これを支援する手段は存在していなかった。

SaaSスタートアップに投資するSaaStrの創業者Jason Lemkinは、Tzuoは本物のビジョナリーであり、SaaSサブスクリプションの基本システムを作り上げることに貢献していると語った。「Zuoraの最も興味深い点は、それがSaaSの盛衰に依存するものだということです。それが繁栄するためにはSaaSが主流になる必要がありますし、その他の定期収入ビジネスと一緒に伸びることしかできないのですから。Zuoraは、SaaS企業が課金を行うことを助けるニッチプレイヤーとしてスタートし、SaaSが『ソフトウェア』そのものになることで劇的に拡大し、繁栄したのです」。

市場がアイデアに追いついてきた

Tzuoが2007年に会社を設立したとき、おそらく彼は遠くの地平線の向こう側へ彼のアイデアが伸びていることを知っていた。彼は、この先SalesforceのようなSaaS企業たちが、自分が作ることを決意した会社が提供するようなサービスを必要とすることになる確信があったのだ。初期の投資家たちは、彼のビジョンがまだ尚早で、エグジットのためにはゆっくりと着実な道を登っていくことを理解していたに違いない。彼らがその報酬を手にするまでに、11年の年月と2億4200万ドルのVC資金が必要だった。11年後の収益は、1億6700万ドルと報告されている。成長のための余地は、まだ大きく残されている。

ともあれ、同社は12日にIPOを行い、それはいかなる意味においても大成功と呼べるものだった。TechCrunchのKatie Roofによれば、「14ドルでのIPOによって、1億5400万ドルが調達された、終値は20ドルで評価額は20億ドルとなった」ということだ。この記事を執筆している今日の時点(米国時間4月13日)では、もう少しアップしている。

Tzuoが以前勤めていた会社が200億ドル規模の会社になったことや、Box、Zendesk、Workday、Dropboxなどの企業がみな公開に踏み切ったこと、そしてDocuSignSmartsheetなどの企業がそれに続こうとしていること等を考慮すると、私たちがSaaSの黄金時代に突入したことは間違いないようだ ―― そしてそれが良くなる一方であることも。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Zuora

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TechCrunch Japan

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