創業5カ月でユニコーン企業に、別荘の共同所有をサポートするPacasoが83億円調達

創業からまだ1年にも満たないPacasoが、10億ドル(約1100億円)の評価額で7500万ドル(約83億円)の成長資金を調達したことを発表した。

GreycroftとGlobal Founders Capitalが共同で主導したこの7500万ドルのエクイティファイナンスには、注目に値する要素がいくつかある。

1つはそのチームだ。CEO兼共同創業者のSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏は、Zillowの元幹部であるAustin Allison(オースティン・アリソン)氏とともに約18カ月前にZillow(時価総額は329億ドル、約3兆6300億円)を去った後、Pacasoのコンセプトを打ち立てた。同社は、人々がセカンドハウスを共同所有を支援するサービスを展開している。

「セカンドハウスを持つことは、私たち双方の生活に非常に大きな影響を与える贅沢であったことに気づきました。私たちは2人とも幸運にもセカンドハウスを手に入れ、それは自分たちや友人、家族に大きな変革をもたらしたのです」とラスコフ氏は述べている。「私たちが目指したのは、セカンドハウスへのアクセスを一般に普及させることでした。そうすることで、1%の人々だけが享受できる贅沢にとどまらず、願わくば世界中の何千万人もの人々がセカンドハウスを利用できるようになるのです」。

Crunchbaseのデータを使った本誌の社内分析によると、2020年10月にローンチしたばかりのPacasoがユニコーンになったのは、他のどの企業よりも早い。

「Pacasoは驚異的な速さで成長しており、これは私が経験したことのないものです」とラスコフ氏はTechCrunchに語った。「これほど急速に成長している理由は、消費者がこのコンセプトに魅せられ、はるかに安価な価格でセカンドハウスを所有できるというアイデアを喜んでいるからでしょう」 。

サンフランシスコに拠点を置くPacasoは、米国時間3月24日に発表した株式発行による資金調達に加えて10億ドル(約1100億円)の負債調達も行った。2020年秋のローンチ時点で、同スタートアップはMaveron率いるシリーズAで1700万(約19億円)ドルを調達し、同時に2億5000万ドル(約276億円)の融資も受けている。

Acrew Diversify Capital FundのSukhinder Singh Cassidy(スキンダー・シン・キャシディ)氏とTheresia Gouw(テレジア・グー)氏、First American Financial、Shea Ventures、Amazon Worldwide Consumerの元CEOであるJeff Wilke(ジェフ・ウィルケ)氏など、著名なエンジェル投資家たちも今回の資金調達に参加した。

不動産に特化したLLC(有限責任会社)を設立し、独自の共同所有モデルを可能にすることで、同社はセカンドハウスのコストと手間を削減することを目指している。また、セカンドハウス所有者は不動産を貸し出すという選択肢も得る事ができる。

Pacasoのモデルは、コンドミニアムやホテルで一定の期間使う権利を販売するタイムシェアの古いコンセプトとは一線を画している。Pacasoでは、小規模の共同所有者グループを集めて一戸建て住宅のシェアを購入し「年間を通して継続的なアクセスを楽しむ」事ができるのだ。

仕組みとしては、まずPacasoが家のシェア、またはすべてを購入する。その後同社は不動産を販売するために地元の不動産業者と提携する。そして同社が持ち家の8分の1程度、あるいはそれ以上の割合で持ち家のシェアを売却する。

Pacasoは、ナパ、レイクタホ、パームスプリングス、マリブ、パークシティなどの複数の人気セカンドハウス市場で仲介ライセンスを保有している。購入者は同スタートアップのウェブサイトで厳選されたリスティングを見ることができ、有効な物件や、購入希望を基に購入を検討する住宅のプレビューを見ることができる。

このリスティングのキュレーションに加えて、Pacasoは統合ファイナンス「高級路線の」インテリアデザイン、専門性の高い不動産管理、独自のスケジューリング技術も提供している。

画像クレジット:Pacaso

ローンチ以来50万人以上がサイトを訪れ、これまでに6万人もの「購入希望者」がセカンドハウスの共有について詳しく知るためPacasoに問い合わせてきたと同社は伝えている。これまでのところ同社は、約100世帯に向けてセカンドハウスの共同所有者になる支援を行ってきた。

アリソン氏の推定によると、世界には約1億戸のセカンドハウスが存在し、その大半は1年のうち10カ月から11カ月ほど空室になっているという。

「月ごとにその数は急増しています」と同氏は続けた。

同社は今回調達した資金の一部を、西海岸から東海岸への新規市場開拓に充てる計画だ。最終的にはヨーロッパ、さらにはメキシコやカリブ海にも進出する展望を持っている。同社の負債は、さらに多くの住宅の持ち分を取得する方向に向かっていくだろう。

「裁量所得があるほど十分な収入を得ている世帯は何千万もあり、そのうちの約75%はセカンドハウスを持つことを夢見ています」 と同氏はいう。「しかし、コストの問題、あるいはそのような購入を正当化できないといった理由で、彼らの行動は妨げられています。この大きな問題に直面して私たちが考え出したのは、真に革新的なソリューション、つまり共同所有でした」。

アリソン氏によると、同社は今後、低価格の住宅を含め、より幅広い価格帯の住宅を提供したいと考えているという。

Greycroftの共同創業者でパートナーのDana Settle(ダナ・セトル)氏は、Pacasoのビジネスの活力を「極めて意義深いもの」と表現している。

「Pacasoは、人々がセカンドハウスを購入し、所有する方法を劇的に変える新しいカテゴリーを作り出しています」と同氏は付け加えた。

多くのベンチャー企業がそうであるように、GreycroftもPacasoの創業チームの力量に魅力を感じている。

「このチームは市場を熟知しており、かつてともに働いた経験を有しています」とセトル氏はTechCrunchに語った。「彼らがいかに迅速に稼働し始めたかを見れば、まさにそのことが証明されています」。

同氏はまた、PacasoをUberやAirbnbになぞらえた。これらの企業もまた、十分に活用されていなかった資産を事業化している。

「テクノロジーを活用して市場でのアクセス性を向上させる、新たな機会です」とセトル氏はいう。

事業拡大を進めるにあたり、Pacasoは最高財務責任者としてNina Tran(ニナ・トラン)氏を迎え入れた。トラン氏は、Waypoint HomesをStarwood Waypointと合併して株式公開し、同社をInvitation Homesに売却してCFOを務めた人物だ。

ラスコフ氏は最近、多忙を極めている。同氏はSupernova Partners Acquisition Companyの責任者でもあり、同社は最近Offerpadと合併して上場することを発表した。ラスコフ氏はDoma(以前のStates Title)の投資家でもある。SPACの合併によって上場された別の専門技術企業だ。同氏はまた、多くのスタートアップを支援しており、その中には最近ローンチした、アジア系米国人コミュニティを主な対象とするデジタルバンキングプラットフォームCheeseも含まれている。

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画像クレジット:Cory Sherwood Photography / Pacaso

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

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