あなたは、自動車を購入する際には銀行が提供する「自動車ローン」、ビジネススクールに通うときには「教育ローン」、歯のインプラント治療をするときは「医療ローン」を活用できることをご存知だろうか。「金利が低い銀行ローンを上手に活用できている人は、実はかなり少ないと思っています」と話すのは、クラウドローンCEOの村田大輔氏だ。同社は、ユーザーが個人情報を登録するだけで、条件に見合った銀行からの各種ローンオファーを直接受けられるプラットフォーム「クラウドローン」を運営する。
6年間で60万円の差が生まれる
例えば、中古自動車を購入する時のことを考えてみよう。客はディーラーまで足を運んで、試乗をしてみたり、担当者と話をして購入を決定する。その際によく利用されるのが、ディーラーが紹介する「ディーラーローン」。村田氏によると「期間は6年、金利は9%程度」などが平均的だという。
このディーラーローンは、購入と併せて契約手続きができるため便利な一方で「必ずしも消費者にとってベストな選択肢ではない」と同氏は話す。その理由は2つある。まず、金利が高い。ディーラーは信販系のクレジット会社と提携してローンを提供しており「金利の約半分をディーラーが受け取るという構造」と村田氏はいう。そのため、どうしても消費者側の負担が重くなる。次に、顧客はローンを完済するまで、購入した自動車の所有権を持てない場合が多い。つまり、ローンの返済期間中は自動車は「あくまでローン会社の所有物」なので、顧客が何らかの事情で売却したいと思ってもそれは叶わない。
これに対して、銀行が提供する目的別ローンはどうだろうか。例えば「自動車ローン」であれば「車関連の費用向け」など用途は限定されているものの、金利は2%程度。ディーラーローン(9%程度)と比較すると、6年間のうちに支払う金額は60万円ほど少なくなる。また、自動車は購入した瞬間から消費者に所有権が移るので、ローン返済中自由に売却することも可能だ。村田氏は「もちろん、銀行ローンのほうが審査基準は厳しいなどの制約もあります。ただ、あまりに多くの人が銀行ローンの存在を知りません。金利の高いディーラーローンを店舗で勧められるままに契約してしまっている」という。
銀行からローンの提案を受けられる
このような現状を変えることに挑戦するのが、同氏が運営するクラウドローンだ。まず、同ウェブサイトにてユーザーは年収や年代、雇用形態といった基本情報を登録する(名前や住所は登録不要)。すると、同社と提携する地方銀行や信用金庫の担当者がそれらのデータを閲覧し「融資できる可能性が高い」と判断したユーザーに、クラウドローンを経由してローンの提案を行う。基本的に翌営業日までには提案が受けられる。その後、ユーザーは提案を受けた複数の金融機関から一行を選び、ローン申し込みに進むという流れだ。
「従来のローン比較サイトなどとクラウドローンが異なる点は、ユーザーが『自分の条件で融資を受けられる銀行』を知った上で、ローンの申し込みができることです。これまでのように、インターネット上でさまざまなローンを比較検討して、大量に申し込む……そういった手間もなくなりますし、失敗を重ねて信用情報を毀損するリスクも低くなります」と村田氏。同社は、提携する銀行側から成果ベースの収益を得るため、ユーザー側はクラウドローンを利用する際に手数料などは一切かからない。
ただ、ふと疑問に残るのは「信販系と比較して銀行ローンのほうが条件が良いなら、なぜ現状の認知度はそんなにも低いのか」という点だ。村田氏は、それは約10年前に施行された改正割賦販売法の規制のためだという。「銀行は規制により、例えば中古車販売を行うガリバーなどの事業者と手を組んで、ローン商品の紹介することができません」。一方で銀行ではないクラウドローンは、エイチームが運営する中古車買取サイト「ナビクル」や、ウェブクルーが運営する比較ポータルサイト「ズバッと」などと連携し、さまざまな経路からユーザーを獲得している。このように、クラウドローンのようなマッチングプラットフォームが銀行の代わりとなって事業者と連携し、消費者と銀行ローンを結びつけるための橋渡し的存在になっているというわけだ。
情報格差をゼロに
2018年設立のクラウドローンは、これまでに約1万5000人のユーザーが利用しており、ローン申し込み件数は約2万件、申し込み総額は約250億円にのぼる。横浜銀行や名古屋銀行など17の金融機関と提携しており、年内には50行まで増やす予定という。
「今、新型コロナの影響で親が失業したり、アルバイトを続けられなかったりで、学校を辞めてしまう若い人がいます。でもそういう人は、実は銀行の教育ローンをかなり低い金利で借りられることを知らなかったりする。あるいは、不妊治療の高い費用を支払えずに諦めてしまう人がいる。そういう人は、妊活ローンを利用できることを知らないかもしれない……。そんな人たちに向けて、『低い金利で銀行から借りられる選択肢』があることを発信していきたい」と村田氏は想いを語る。
銀行にとっても、金利収入の減少やコロナ禍による融資先の資金繰りの悪化などにより、個人向けローンは収益源の「最後の砦」といえる。消費者、銀行、そしてそれらのマッチングプラットフォームである同社の三方良しを実現するクラウドローンは、もっと多くの日本人が知っておいても良い存在ではないだろうか。
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カテゴリー:フィンテック
タグ:クラウドローン、ローン、日本、銀行
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