ファイナンシャル・アドバイザリーを再考するSmartAssetがユニコーンに

消費者とファイナンシャル・アドバイザーをつなぐマーケットプレイスであるSmartAsset(スマートアセット)は6月24日、シリーズDラウンドで1億1000万ドル(約122億円)を調達したと発表した。

Crunchbaseによると、この資金調達により、ニューヨークを拠点とするSmartAssetの価値は10億ドル(約1110億円)以上となり、2012年の創業以来の調達総額は1億6100万ドル(約1786億円)強となった。

TTV CapitalがこのシリーズDを主導し、Javelin Venture Partners、Contour Venture Partners、Citi Ventures、New York Life Ventures、North Bridge Venture Partners、CMFG Venturesも参加した。

SmartAssetが最後に調達したのは2018年6月、Focus Financial Partnersが主導した2800万ドル(約31億円)のシリーズCだった。それ以来、売上高を「10倍」に伸ばし、現在はARR(年間経常収益)が1億ドル(約111億円)に達しようとしているという。最近では、SmartAdvisorプラットフォームで100万組目の消費者とアドバイザーのマッチングが行われた。また2020年には、全米のファイナンシャルアドバイザーや企業のAUM(運用資産)100億ドル(約1兆1100億円)のクロージングに至ったという。

SmartAsset社は、Automated Financial Modelingソフトウェアを用いて消費者とアドバイザーを結びつけるだけでなく、パーソナルファイナンスに関するコンテンツやツール、「パーソナライズされた」計算機などを通じて、毎月1億人以上の人々にサービスを提供している、とうたう。

SmartAsset社を設立する前、Michael Carvin(マイケル・カービン)氏は金融業界で働いていた。同氏は、同社の投資家であるY Combinatorとのインタビューの中で、住宅購入や住宅ローンの組み方について、「有用で、正確で、偏りのない情報」を探す際に感じた不満が、Philip Camilleri(フィリップ・カミレリ)氏と共同でSmartAssetを設立するきっかけになったと語った。

「従来の計算機には明らかな誤りがありました。そして、コンテンツはすべて、できるだけ大きな住宅ローンを組ませたいと思っている人たちが書いているように思えたのです」と同氏は付け加えた。そこで2人はSmartAssetを立ち上げ、退職、税金、貯蓄、住宅購入、保険など、人々がより良い決断をするためのツールやコンテンツを提供することにした。

画像クレジット:SmartAssetのCEOで共同創業者のマイケル・カービン氏/SmartAsset

SmartAssetは、今回の資金調達により、新製品の提供、技術インフラ、データパートナーシップへの投資を行う。また、現在202人いる従業員を、今年中に75%以上増強する。

TTV CapitalのパートナーであるMark Johnson(マーク・ジョンソン)氏は、「同社は、消費者とファイナンシャル・アドバイザーの両方に非常に価値のあるリソースを提供することで、米国最大級の市場で急速にリードを拡大しています」と話した。

今回の資金調達とその華々しい評価は、成長を続けるユニコーン企業の世界においても、一定の重みを持っている。

SmartAssetによると、今回の資金調達により、共同創業者であるマイケル・カービン氏は、バリュエーション10億ドル(約1110億円)以上の企業の黒人創業者兼CEOとして3人目となるという。他にも、CompassのCEOで創業者のRobert Reffkin(ロバート・レフキン)氏は先日こちらで紹介したし、CalendlyのCEOで創業者のTope Awotona(トペ・アウォトナ)氏もこちらで紹介したばかりだ。

黒人主導のユニコーンが残念ながら少ないのは、黒人やアフリカ系米国人のスタートアップ創業者への資金提供が歴史的に不足していることの表れだ。Crunchbaseの試算によると、2020年には、ベンチャーキャピタルからの資金調達総額の1%、つまり10億ドル(約1110億円)が、この層の創業者に提供された。

カービン氏はTechCrunchの取材に対し、「成功した黒人創業者の姿を見ることで、より多くの有色人種が起業するようになり、いつしかこうしたことがニュースではなくなることを願っています」と語った。

昨年は、多くの黒人主導のベンチャーキャピタルが資金調達をクローズしており、上述の数字は変わる可能性がある。その中には、Collab Capitalの5000万ドル(約56億円)の投資ビークル、Harlem Capitalがクローズした1億3400万ドル(約149億円)のシードファンド、Cleo Capitalの2号ファンドの2000万ドル(約22億円)の目標額、MaC VCの1億300万ドル(約114億円)のデビューファンドなどが含まれる。

また、HBCUvcとGoogle for Startupsは今月、少数派出身のアーリーステージの創業者に希薄化しない資金を提供する2つの取り組みを発表した。

シリーズDを獲得したSmartAssetは、パーソナルファイナンスからバイアスを取り除くべく取り組んでいる。SmartAsset自身も、日常的にこのような現象に悩まされている見落とされがちな創業者がいかにして強力なビジネスをリードし続けているかを示すケーススタディとなっている。

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画像クレジットtwomeows / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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