Fetch RoboticsのCEOが、自社の買収と倉庫ロボットの未来について語る

米国時間7月1日、エイタープライズ・コンピューティング企業のZebra Technologies(ゼブラ・テクノロジーズ)はFetch Robotics(フェッチ・ロボティクス)を買収する計画を発表した。カリフォルニア州サンノゼ拠点のスタートアップは、倉庫・仕分けロボティクスの主流として、企業の裏方を自動化するモジュラー・システムを長年提供している。

会社評価額は3億500万ドルで、すでに5%を取得済みのZebraは、残りの95%を2億9000万ドルで買収する。この業界では史上最高金額であり、パンデミック下で広がる労働力不足が背景にある。

ニュースが報じられた後、本誌はFetchの共同ファウンダー・CEO、Melonee Wise(メロニー・ワイズ)氏にこの買収および倉庫ロボティクスの将来につい話を聞いた。

なぜこの買収はFetchにとって正しい行動なのですか?

過去7年間、私たちは非常に優れたクラウド・ロボティクス・プラットフォームを構築してきました。約2年前、ZebraはFetchに投資をして、提携を通じて互いに協力してきました。初めに行ったことの1つが、彼らのモバイル・コンピューティング機器の統合で、当社のクラウド・ロボティクス・プラットフォームのワンボックス体験のためでした。当社顧客がロボットを導入したとき、それまで使っていたハンドスキャナーを使ってロボットにバーコードを読み取らせることができます。

シリーズDラウンドで資金調達した時、このチャンスが訪れました。過去数年間を見てもらえば、彼らと良好な関係にあったことがわかるでしょう。パンデミックの中、オートメーション技術の需要は急速に高まっています。パンデミック以前から倉庫・仕分けの労働力はすでに不足していましたが、パンデミックがそれをいっそう悪化させました。Zebraと一緒になるもう1つ大きな利点は、彼らには強力な市場開拓能力があり、私たちの販売能力を増幅できることです。私たちがつきあいたい顧客をZebraはすでに掴んでいます。当社がもっと幅広く奥深く潜在顧客にリーチする大きな後押しになります。

Fetchは適した買収対象だったと想像しますが、私は、Walmart(ウォルマート)がAmazonロボティクスと競っているような話だといつも思っていました。何年にもわたって多くの企業からアプローチされたのではないでしょうか。今回の買収の方が理にかなっていると最終的に判断した理由を聞かせてください?

この買収が意味をなす理由は、当社の長期的ビジョンと一致しているからだと私は思っています。プラットフォームを作ったとき、私たちは統一化を念頭に置いて作りました。当社のロボットだけではなく。私たちは何年もかけて、徐々に他のパートナーもプラットフォームに載せてきました。当社はSICKと提携していますし、VARGOなどの倉庫オートメーション・プロバイダーとも提携関係にあります。それは今後も変わりません。私たちはこれからもパートナーに優しく、他社デバイスをエコシステムに迎え入れていきます。この選択肢と可能性を見れば、これが素晴らしいチャンスであり、私たちが作りたかったチームとよく合っていることがわかるでしょう。

Zebraは独自のロボットを開発していて、他のロボティクス会社にも投資しています。貴社はエコシステムの基盤になるのですか? Zebraはロボティクス小売・物流エコシステムをFetchを中心に構築しようとしているのですか?

はい、これまでそのように検討されています。今も発展中です。もちろん、すべてを詳しくお話することはできません。しかも、まだ契約完了までには30日だか35日あるので、当社はまだ独立会社として活動しています。私たちの考えているビジョンについて、Zebraは彼らが作り上げようとしている全く新しいソリューションの中心にFetchを置くことを非常に喜んでいます。彼らにとってこれは戦略的に高い優先順位にあります。

Fetchブランドは残りますか? 会社はサンノゼに留まりますか? あなた自身は残りますか?

Fetchは移動しません。私たちは一種の中心的存在になるので、チームをサンノゼに置いたままにしたいとZebraは考えています。私も動かない予定です。詳細はまだ検討中です 〈中略〉 Fetchのブランドは非常に強力なので、両方の世界の良いところを取れるようにするつもりです。

買収は、Fetchのような会社が目指していたものですか? これは必然のようなものだと考えていますか?

複雑だと思っています。会社を始めた時、私はほとんど何も計画していませんでした。ただ、何かを作りたかっただけです。本当の意味でそう言っています。何かを作って、かつ失敗したくなかったのです。問題は、失敗しないとはどういうことかです。現実として、過去20何年間、ロボティクス会社はほとんどIPOしていません。私たちはSPAC(特別買収目的会社)を考え始めています。これまでに伝統的方法でIPOしたロボティクス会社はありません。

もしある日私に、IPOと買収のどちらの可能性があるかとあなたが尋ねたら、おそらく買収と答えたでしょう。なぜならロボティクス企業にはIPOの歴史がないからです。その理由はいろいろあります。ハードウェア集約型ビジネスであること。多くのテクノロジーと投資が必要であること。多くの場合、非上場を続けています。公開企業にとって、この奥深いテクノロジーに投資する損益計算書を維持することは困難です。ただし変わり始めていると思います。SPACの登場によって大きく変わることを期待しています。それでも、今後10年間はIPOよりも買収の方が多いと私は考えています。

過去に買収を持ちかけられたことはありますか?

はい、過去には、でもほとんどは時期が早すぎました。

早すぎるというのはどういう意味ですか?

適切な時期だと感じなかっただけです、いろいろな理由で。たとえば、私の望むことに関係するもの。チームが望むことに関係するもの。さらには私たちの出資者の望むことに関係するもの。関係する人がたくさんいます。これは常に難しい質問です。かつてこういう話が持ち上がったとき、市場はまったく定義されておらず新しかったので、私たちはどうなっていくかをただ見ていたかった。今は環境がずっと構造化されているので、転換点を探し始めたところです。

海外展開の拡大は計画に入っていますか?

はい、現在ヨーロッパの数社と契約しています。アジア太平洋地区にも進出していて、拡大を目指しています。現時点では、どの国にも大きく賭けるつもりはありません。市場が発展していくのを待っているところですが、拡大はを目指しています。

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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