ゲームエンジンUnityがリモートデスクトップ技術のParsecを同社史上最大約353億円で買収

人気の2D/3Dエンジン「Unity(ユニティ)」を開発しているUnity Technologies(ユニティ・テクノロジーズ)は米国時間8月10日、同社史上最大の買収計画を発表した。開発者やクリエイター向けのリモートデスクトップツールを開発しているParsec(パーセク)を、Unityが現金3億2000万ドル(約353億円)で買収するという。

Parsecは、妥協のないリモートデスクトップアクセスを実現する技術で長年知られてきた会社だ。同社のアプリケーションはクリエイター向けにチューニングされており、高解像度のディスプレイを複数台使用していても問題なく動作する。作業中のアートワークを圧縮することなく共同作業者にストリーミングすることができ、感圧式ドローイングタブレットのような優れた入力デバイスとも互換性が高い。

2016年に誕生したParsecは、当初はゲーマーが強力なPCから、他者の(一般的にはそれほど強力ではない)デバイスにゲームをストリーミングすることに焦点を当てていた。しかしその低遅延、高解像度ディスプレイのサポート、さまざまな入力デバイスとの互換性といった、ゲームプレイヤーにとっての利点は、ゲームメーカーにとっても同じように有用であることが後にわかった。クリエイティブな業界における多くのユーザーが、Parsecを利用してワークステーションに映像を送っていることに気づいた同社は、クリエイティブなチームのためのプランや機能の提供を開始した。新型コロナウイルスの影響により、オフィスを離れて自宅で作業するチームが増えるようになると、Parsecの使用率は一気に高まった

「私たちは、クリエイターがどこでも仕事できることが、ますます必要になると考えています」と、UnityのMarc Whitten(マーク・ウィッテン)上級副社長は、今週初めの電話インタビューで語った。「彼らは、距離的に分散したグループで仕事をしたり、時にはオフィスで、時には自宅で仕事をするような、ハイブリッドな環境に身を置くことになるでしょう」。

「そうすると、クリエイターはどこにいても、自分の持っている画面で必要なパワーにアクセスできることを求めるようになると思うのです」と、ウィッテン氏は続けた。「Parsecは、その分野において大きな革新を成し遂げてきたすばらしい企業の1つです」。

ウィッテン氏は、これがUnityにとって、クラウドにより深く取り組む動きの始まりであることも示唆した。「Parsecは、私たちが会社として持っているクラウドに向けた広範な野心の、すばらしい基礎ブロックとなることがおわかりいただけると思います」と、同氏はいう。「この点に関しては、今後も多くのことを期待していただいて構いません」。

Crunchbaseによると、買収前のParsecの資金総額は3300万ドル(約36億5000万円)。直近の資金調達は、2020年12月にAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が主導した2500万ドル(約27億6000万円)のシリーズBラウンドだった

ウィッテン氏によると、Parsecの既存ユーザーにとっては何も変わらない予定だというが、サブスクリプションや価格が変更になる可能性については、まだコメントできないとのことだった。

なお、Parsecの無料サービスが廃止されることを心配しているユーザーのために、同社は「Parsecの無料アプリについて何かを変更する予定はない」とツイートしている。

ああ、それからもう1つ。私たちはゲームを取り巻くコミュニティを愛しています。Parsecの無料アプリについては、今後も変更の予定はありません。プロフェッショナルなクリエイターのみなさんには、次のすばらしい格闘ゲームを作る喜びを、ゲームをプレイする喜びと同じくらい感じていただきたいと、私たちは願っています。

関連記事
価格約1万1000円、Raspberry Piで簡単に3Dポイントクラウドが作れる3Dセンシングシステム「ILT開発キット」発表
グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル
IPO達成のUnity、ゲーム業界を越えた事業拡大を目指す同社の素顔とは

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:UnityParsec買収リモートデスクトップゲームエンジン

画像クレジット:Parsec

原文へ

(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。