大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授ら研究グループは8月24日、和牛肉の複雑な組織構造を自在に再現可能な「3Dプリント金太郎飴技術」を開発し、筋・脂肪・血管の繊維組織で構成された和牛培養肉の構築に世界で初めて成功したと発表した。
これは動物から採取した少量の細胞から人工培養した筋・脂肪・血管の繊維組織を3Dプリントしたあと、金太郎飴のように束ねてサシの入った培養牛肉を作るというもの。この研究では、筋繊維42本、脂肪組織28本、毛細血管2本の計72本の繊維をバイオプリンティングし、手で束ね合わせ、直径5mm、長さ10mmの肉の塊を作ることに成功した。
これまでに開発されてきた培養肉は、筋繊維のみのミンチ状のものが多かったが、各繊維組織の配合を変えることで、注文に応じて味や食感などを自在に変えることができる塊肉が作れるという。
牛を育てて食用肉を作る従来の畜産方式では、大量の餌や水を必要とし、人が食べるよりも多くの穀物を家畜に与えるなどの非効率性や、放牧地のための森林伐採や糞やゲップによる環境汚染も問題になっている。培養肉は、牛の成長に比較して短時間で効率的に食用肉を生産できることから、そうした問題の解決策として期待されている。
研究の詳しい内容は、8月24日公開の英科学誌Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)に掲載されている。