2人乗りコンパクトEVのEli ZEROが生産開始、欧州で販売へ

コンパクトEV車のアーリーステージスタートアップ、Eli Electric Vehicles(エリ・エレクトリック・ビークルズ)は、同社の主力製品で市街地通勤向けにつくられた「neighborhood electric vehicle(ご近所電気自動車)」の生産を開始したことを発表した。同社はこの2人乗りEVを小規模ロットで生産し、欧州13か国で今後数カ月かけて販売する計画で、価格は1万1999ドル(約131万円)から。

マイクロ電気自動車市場は上昇中で、他にもRenault Twizy(ルノー・ツイッジー)、Citroën Ami(シトロエン・アミ)、チルト式Triggo(トリゴ)EVソーラーアシスト車のSquad Mobility(スカッド・モビリティ)などさまざまなコンパクト四輪車が市場に参入している。価格面では、Eliは1万6000ドル(約175万円)からのTwizyとともにスペクトラムのハイエンド側に位置する。対してAmiは約6000ドル(約66万円)、Squadは6790ドル(約74万円)だ。

Eliの拠点はロサンゼルスだが、生産パートナーは中国にあり、現在進行中の地政学的緊張は同社がまずヨーロッパ戦略を追求している理由の1つだ。州ごとに異なる法律も、公道走行可能な車両を最初に米国で販売することを難しくしている理由だとEliのCEOでファウンダーであるMarcus Li(マーカス・リー)氏はいう。ヨーロッパでは、Zeroは公道走行可能で、スピードの出過ぎない小さなコンパクトカーの文化がすでに作られている。

「ヨーロッパの多くの都市では、たとえばパリのように時速30kmという非常に厳しい法定速度が施行されていて、ウィーンやアムステルダムなどでもそのトレンドが起きると予想しています」とリー氏はTechCrunchに語った。

Zeroは、リサイクル可能ポリプロピレンと高強度アルミニウムで作られており最高速度は時速25マイル(40 km)。長さ約7フィート(2.1 m)、幅4.5フィート(1.35 m)、高さ5フィート(1.5 m)で積載容量は160リットルだ。バッテリー容量は5.8 kWhで航行可能距離は50マイル(80 km)、0から100%まで220ボルト、2時間30分で充電できる。

このマイクロビークルは、電動アシスト付きブレーキ、リアカメラ、パーキングセンサーの他、車室内には充電用USBポート、カップホルダー、冷暖房、チルト可能サンルーフ、7インチダッシュボードディスプレイも備えている。基本カラーはパールホワイトとシルバーで、プレミアムカラーとしてグラファイトとベービーブルーが用意されている。

またEliは最近、StartEngineというプラットフォームで資金調達クラウドファンディングキャンペーンを行うことを発表した。本稿公開時点で、キャンペーンでは今後の生産を進めるための資金22万4705ドル(約2461万円)が集まっている。リー氏によると、現在同社は保有する車両台数以上の予約を受けており、うれしい悲鳴をあげている。

Eliは前回StartEngineのプラットフォームで約140万ドルを集め、これまでに650万ドル(約7億1190億円)以上を調達した。リー氏によると、会社は2020年VC資金調達を試みたが、ベンチャーキャピタルらはEliが車をカーシェアリングに使用するなら投資してもよいと言った。

「正直をいうと、カーシェアリングにピボットしようと考えたこともありました、なぜならそれがほとんどの機関投資家のフィードバックだったからです」とリー氏は言った。「VCたちのビジネスモデルは、投資利益率に関して一般のハードウェア会社とは少々異なり、当社がカーシェアリングと高価値モデルに力を入れて3年以内のリターンを見込めるよにすることを望んでいました」。

ある投資グループは、Eliがカーシェアリング・プラットフォームを自社運用するなら投資してもよいと言ったが、時期はパンデミック直前だったので、最終的にはその方向にピボットしなかったことを喜んでいる、とリー氏は語った。

「販売方法は非常に伝統的なアプローチをとっています」とリー氏はいう。「B2Cはやっていません。販売はKSR Groupという既存の販売網を経由していて、彼らはオーストリア、ドイツ、スイスから始めて、その後ヨーロッパ諸国に展開するという販売戦略をもっています。

販売店を利用することで、アーリーステージ・スタートアップのEliがサービス、配車、試乗などを外部委託することが可能になったとリー氏は語った。

「目標は都市内移動に革命を起こし、都市とコミュニティを新しい形でつなぐことによって渋滞と大気汚染を減らすことです」とリー氏は声明でいう。「急速に変化する気候とともに都市圏が成長を続ける中、Eli ZEROのようにエネルギー効率が高く環境的に持続可能なマイクロEVの可能性は広がります」。

画像クレジット:Eli Electric Vehicles

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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