ラテンアメリカで小規模な販売ビジネスを維持するのには、新製品を探すための長時間バス移動や、運営資金不足、支払力不足をともなう。このような非効率性は卸売業者にも波及し、卸売業者はコストや納品期限の引き上げを余儀なくされる。
このような状況に目をつけた2度目の起業となるBruno Ballardie(ブルーノ・バラディ)氏とFernando Zanatta(フェルナンド・ザナッタ)氏は、2019年に「ZAX(ザックス)」を立ち上げ、ブラジルの売り手と買い手をつなぐ運賃・配送・決済ツールを一体化したプラットフォームを開発した。
ZAXを立ち上げる前、CEOのバラディ氏は、2018年にLema21(レマ21)と合併したメガネ型電子商取引会社eÓtica(エオジカ)の創業者だった。CTOのザナッタ氏は、顧客とグローバルな専門家をつなぐツールNetlolo(ネットロロ)の創業者で、以前はDafiti(ダフィティ)のCTOやBuscapé(バスカペ)のCOOも務めていた。
彼らは、テクノロジーとイノベーションのおかげで巨大化しつつある消費者直販市場と、それに反し同じような成長を遂げていない卸売部門を目の当たりにした。多くの人がサンパウロのような都市の中心部まで在庫を買いに行っていたが、注文を書くのに紙とペンを使い、取引にはWhatsAppを使っていたのだ。
「私たちは、人々がすばらしいビジネスを行うのを支援する大きなチャンスを見出しました。eコマースの普及率は7%しかなく、卸売部門では1%以下と、市場はかなり遅れていました。物流、決済、商品の発見など、すべての領域が未開発だったので、そのためのツールを作りました」とバラディ氏はTechCrunchに述べている。
バラディ氏によると、B2B取引でZAXが改善可能な市場は、ブラジル国内だけでも2兆4000億BRL(約49兆円)と推定されている。ZAXのプラットフォームは、当初は衣料品の卸売だったが、現在では靴、電子機器、玩具、アクセサリー、美容用品などに拡大している。購入者はプラットフォームにアクセスし、商品を選び、次に発送方法と支払い方法を選ぶことができる。
ZAXは現地時間10月5日、シリーズA資金として600万ドル(約6億6700万円)を調達した。このラウンドには、Atlantico(アトランティコ)が主導し、FJ Labs(FJラボ)、Caravela Capital(キャラベラ・キャピタル)、GFC、およびZAXの最初の2回の投資ラウンドを主導したCanary(カナリー)が参加した。今回の資金調達により、同社の資金調達総額は830万ドル(約9億2300万円)となった。
AtlanticoのマネージングパートナーであるJulio Vasconcellos(フリオ・ヴァスコンセロス)氏は「ZAXは非常に短い期間ですばらしい実行力を見せてくれました。ZAXは、 ブラジルだけでなく、ラテンアメリカ全体の売り手と買い手を支援する可能性を秘めていますし、卸売と小売はより多くのテクノロジーを利用することで大きく成長することができます」と語っている。
ZAXは、パンデミック前の100社から増加した700社以上のサプライヤーと取引しており、2020年3月以降、収益は10倍になったとバラディ氏は述べている。40人の従業員で構成されるチームを持ち、5万人以上のバイヤーがプラットフォームを利用している。
今回の資金調達により、同社はブラジルのさらに2つの地域に進出し、美容製品やアクセサリーのカテゴリーで製品ラインを増やすことができる。また、バラディ氏は、技術や商品開発のスタッフを追加で雇用したいとも考えている。
次のステップとして、ZAXは金融サービスへ注力をしており、いくつかのBNPL(後払い決済)のアイデアを試験的に実施し、顧客に資金を提供するために金融機関のパートナーを統合している。同社は現在、30日間の融資枠とPOSシステムを提供しているが、将来的にはデジタルウォレットやその他の決済ツールも提供する予定だ。
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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)