コンピュータービジョンにとどまらず企業の非構造化データを管理するClarifaiが68億円調達

Clarifai(クラリファイ)は、開発者、ビジネスオペレーター、データサイエンティストの日常に人工知能を導入し、モデル開発の自動化と高速化を実現を目指している。

Matt Zeiler(マット・ザイラー)氏は2013年、ニューヨークを拠点とし、コンピュータービジョンに特化した同社を創業した。2016年の3000万ドル(約34億円)のシリーズB以来、画像、ビデオ、テキスト、オーディオデータファイルといった企業の非構造化データを対象とした新機能や製品を展開している。

新機能には、自然言語処理、音声認識、スキャン、そして2020年発表した自動データラベリング機能「Scribe」などがある。また、高出力サーバーからカメラ、ドローンまで、さまざまなローカルハードウェアを使用して、データストリームの上にAIを重ねる「Edge AI」機能も展開している。同社は、10月20日に開催される深層学習の年次カンファレンス「Perceive 2021」で、さらに多くの情報を公開する予定だ。

こうした活動の中で、またこれらを継続すべく、Clarifaiは10月15日に6000万ドル(約68億4000万円)のシリーズCラウンドを発表した。New Enterprise Associatesが主導し、既存の投資家からMenlo Ventures、Union Square Ventures、Lux Capital、LDV Capital、Corazon Capital、NYU Innovation Venture Fund、新規の投資家としてCPP Investments、Next Equity Partners、SineWave Ventures、Trousdale Capitalが参加した。今回のラウンドで、同社の資金調達総額は1億ドル(約114億円)に達した。

「私たちは、追加の資金調達をせずに、なんとか長い間を過ごしてきました」とザイラー氏はTechCrunchに語った。「当社は、コストを抑えて効率的に運用しながら、収益を大きく伸ばしてきました。そして、チャンスを迎え、資金を調達しました」。

そのチャンスには、優れた法人向け販売チームを立ち上げることも含まれていた。会社設立当初は市場が未成熟だったため、中小企業や個人への販売から始めた。現在では、市場の成熟化に伴い、フォーチュン500の企業と取引を行っている。

同社にとって「非構造化データ」とは、画像や動画、テキストなど、人間の脳は得意とするが、コンピューターは苦手とするデータのことだ。実際、企業のデータの95%は非構造化データであり、Clarifaiに「大きなチャンス」をもたらしているとザイラー氏は話す。

そうしたシグナルを大企業が市場に発するようになったタイミングで、シリーズCを実現した。また、同社はSnowflakeと提携し、Snowflakeが最近リリースした非構造化データ支援とClarifaiを連携させるための統合を行った。

「Snowflakeは、構造化データに関して1000億ドル(約11兆円)規模のビジネスを展開していますが、今は非構造化データにも取り組んでいます」とザイラー氏は付け加えた。「顧客がSnowflakeでデータを保存している場合、そこから価値を得ることができますが、それを意味のあるものにするためにはClarifaiのAIが必要です」。

Clarifaiの製品パイプライン。画像クレジット:Clarifai

一方、同社は2020年1年間で収益を2倍以上に伸ばし、ユーザー数も13万人を突破した。今回のシリーズCの資金調達により、現在100人のグローバルチームの規模を来年までに倍増させる計画だ。

また、営業やマーケティング、国際的な事業拡大にも投資する。同社は、すでにエストニアにオフィスを構えているが、ザイラー氏は多くの顧客を獲得しているオーストラリア、インド、トルコも視野に入れている。また、最初の顧客を獲得したばかりのEdge AI製品にも引き続き取り組む。

今回の投資の一環として、NEAのパートナーであるAndrew Schoen(アンドリュー・ショーン)氏がClarifaiの取締役会に加わる。同社は数年前から注目されていたが、ショーン氏は当時、投資には早すぎると感じていた。

「最初の頃、AIの風は構造化データを中心に吹いていました。データの90%は非構造化でしたから、これはすぐに手に入る果実だと言えました」とショーン氏は語った。「エコシステムが成熟した今、企業は構造化データからできる限りのことを絞り出したことがボトルネックになっていることに気づきました。今、企業の手元には使えない非構造化データが残り、それがきちんと整理されていません。Clarifaiは、この問題を解決することを目的としています」。

ショーン氏は、ClarifaiがAIと機械学習を解明し、民主化すると考えている。同社は早くから非構造化データに着目していたため、アーリーアダプターを獲得することができた。現在ではこの分野をリードしている。

さらにショーン氏は、同社の収益予測は過去12カ月の間に変曲点を迎え、ビジネスは「順調に成長している」という。

「Clarifaiはこれまで、顧客を獲得し、市場を教育しなければなりませんでした。今では市場に対して自社の製品をプッシュするのではなく、プル型になっています。企業側がソリューションを探し、Clarifaiが適切な製品だと見ているのです」と付け加えた。

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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