イケてるプロダクトを作るために「ユーザーの声」を金科玉条のごとく扱うことは、時として問題の本質を見失ってしまうかもしれない――。こう指摘するのは、クラウド会計ソフト「freee」を運営するfreee代表取締役の佐々木大輔氏。札幌で開催中の「Infinity Ventures Summit 2014 Spring(IVS)」で23日に行われた、「プロダクト・イノベーション」をテーマにしたセッションの一コマだ。
freeeは、簿記の知識がなくても会計処理を可能にするクラウド型会計ソフト。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、記帳を自動化することで、面倒な手入力の手間を省いてくれる。5月19日には給与計算機能をリリースし、7万事業者が導入するまでに成長したfreeeだが、創業前、ユーザーに要望をヒアリングした結果をそのまま反映していたら、今のプロダクトは生まれなかったかもしれない。
「ユーザーのフィードバックの多くは『会計ソフトの入力を早くしたい』という声だったが、問題の本質は『入力しなければならないこと』。入力をなくすことが問題解決につながるはずだと、プロダクトをローンチするまでに何度もメンバーと議論した」。こうした体験を経て佐々木氏は、優れたプロダクトを生み出すにあたっては、次の3つの法則を大事にするようになったのだという。
1)本質的な価値があるか
2)まず手を動かす
3)柱(ゴール)を建てて、やらないことを決める
1)は前述の通り、ユーザーの求めるものが本質的な価値を生み出すかどうかを精査しなければならないということだ。
2)に関しては、アウトプットする前に議論をしていると、「うまくいかない理由」ばかり出てきてネガティブになりやすいが、いっそのことローンチしてから出てきた課題を解決すべきだと、佐々木氏は語る。「ローンチは仮説検証プロセスの一部。そうすれば『これを削らないとね』ということが見えたり、場合によってはピボット(方向転換)もできる」。
3)については、会計ソフトのようにユーザーから求められる機能が多い場合は、優先順位付けが欠かせないという。例えば、確定申告の需要に応えるために、1月までに機能強化を図ることを「柱」とする。逆に言えば、確定申告に結びつかない機能は、どれほどユーザーから要求されても実装を遅らせるというわけだ。