脊椎の成長を促すスマートインプラントを開発するIntelligent Implantsが約10億円を調達

気弱な人は、脊椎の手術など受けられたものではない。しかし、Intelligent Implants(インテリジェント・インプラント)が750万ユーロ(約9億9000万円)を調達し、脊椎手術の苦痛を軽減する。同社のスマートインプラントの最初の用途は、脊椎固定術だ。これは、2つ以上の椎骨を永久的に結合し、安定性向上、変形の矯正、痛みの軽減を図る。世界中で100万件以上の手術が行われているが、合併症のリスクや手術後の継続的な痛みのため、一般的には最後の手段とされる。

Intelligent Implantsは、ワイヤレスのインプラント用電子機器により、骨の成長を促進・誘導・監視する。現在の最先端の術後管理によったとしても、理学療法や鎮痛剤に長期間依存する可能性があると同社は指摘する。同社はこの市場に参入し、より技術的に優れたソリューションを提供する。

同社のスマートでアクティブなインプラントは、この領域で最初の機器ではない。ペースメーカーや人工内耳は、それぞれ1950年代と1970年代に発売されており、ご存知の方も多いだろう。同社の革新性は、ワイヤーやバッテリーを必要としないソリューションを生み出したことにある。この製品は、現在の非アクティブなインプラントと同じ標準的な手術方法で椎骨の間に設置する。

このインプラントは、携帯電話のワイヤレス充電パッドのように、誘導によって外部から電力を供給する。これにより電界が形成され、骨の成長が促進される。

Intelligent ImplantsのCEOであるJohn Zellmer(ジョン・ゼルマー)氏は「誰に対してもこの手術をすることは避けたいと思っていますが、しなければならないのであれば、結果はできるだけ良いものにしなければなりません」と話す。

刺激を与えるための電極は、センサーとしても使える。この機器は、標準的な整形外科用インプラントに、さらにいくつかの魔法を組み込んだものだ。この場合の魔法とは、骨の成長を助けるニューロモデュレーションのための多数の電極と、それを制御するためのアンテナや電子機器のことだ。脊椎固定術の後、患者はすべてを正しい場所に固定するためコルセットを装着するが、これが機器の電源と制御ユニットの格納に便利な場所となる。

Intelligent Implantsは、骨の成長を促すことの副次的効果として、センサー側の機能が使えるとゼルマー氏は説明する。このデバイスでは、インピーダンス測定ができるという。骨は導電性に乏しいため、移植材が体内で徐々に骨に置き換わると、電気信号が変化し、その過程で骨の成長を測定できる。

Intelligent Implantsの共同創業者であるErik Zellmer(エリック・ゼルマー)氏、John Zellmer(ジョン・ゼルマー)氏、Martin Larsson(マーティン・ラーソン)氏(画像クレジット:Intelligent Implants)

同社の製品「SmartFuse」は、FDA(米食品医薬品局)からBreakthrough Device(革新的機器)の指定を受けたばかりだ。この指定は「そのデバイスが、人間の生命を脅かす、または人間を不可逆的に衰弱させる病気や状態の、より効果的な治療または診断を提供する」とFDAが考えていることを意味する。同社は、このプログラムに参加するため、羊を使った大規模な動物実験を完了した。この実験で、骨の成長が3倍になり、固定までの時間が50%短縮されたという。

「前臨床試験のデータに基づいてBreakthrough Device Designation(BDD)を取得するのは非常に珍しいことです」とゼルマー氏は話す。BDDのほとんどがヒトでの試験に基づいているという。「このニュースを聞いて、私たちはオフィスで小躍りしました」。

同社は、これまでの臨床試験では羊を使用してきた。整形外科領域の臨床試験で使用される動物としては、羊またはヤギが一般的だ。同社は2023年に最初のヒト臨床試験を行うことを目指している。

「家族の1人の術後が悪く、私たちはこの難しい問題に取り組むことにしました。チームがこの領域に関する豊富な知識を持ち、長期的にコミットし、今日の外科医の実践(スタンダード・オブ・ケア)に私たちの技術を適合させることができなければ、私たちのソリューションが機能しないことはわかっていました」とゼルマー氏は語る。「当社は現在、半分以上の時間を、SmartFuseという製品を市場に投入するために費やしています。FDAの決定は当社のアプローチが健全であったことを裏付けるものです」。

同社は、SOSVHAX技術プログラムに参加した後、卒業し、10月22日にシードラウンド完了を発表した。EUのEIC AcceleratorとSOSVから合わせて450万ユーロ(約6億円)を、そしてスウェーデンのエンジェル投資家グループから300万ユーロ(約4億円)を調達した。

「SOSVのパートナーであるBill Liao(ビル・リャオ)氏とは2015年に出会い、それ以来ずっと支援を受けています。それからの時間は、ベンチャーキャピタルとしては長い期間です。彼らはオペレーション面での支援だけでなく、それ以降のすべてのラウンドでの支援など、本当にすばらしい仕事をしてくれています」とゼルマー氏は語る。「これはすばらしいことだと思います。私たちは本当に難しいことに取り組んでいます。これはクラス3の機器であり、刺激促進システムを備えたアクティブなインプラント機器です。私たちの試みはまったく新しいもので、それを整形外科分野に持ち込んだことは、先見性と勇気の証しだと思います」。

「移植可能な技術を開発することは非常に困難ですが、Intelligent Implantsは極めて着実に進歩しています。数百万人の患者さんを助け、数年後には90億ドル(約1兆円)に達すると言われている市場に貢献するため、彼らの旅を支え続けることを誇りに思います」とSOSVのゼネラルパートナーであるリャオ氏は述べた。

画像クレジット:Intelligent Implants

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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