消費者のプライバシーを擁護する側と、広範囲のデータ収集による利益を推進する側との間で起きる争いでは、前者が勝った話を聞くことが多い。そして、昨晩サンフランシスコで起きたことは、まさにそれだった。べイエリアの有名コーヒーショップ、Philz Coffeeは、顧客や通行人の情報を、WiFi経由でEuclid Analytcsの技術を使って収集するのをやめると発表した。
一部のPhilz顧客は、ベイエリアのこの場所で行われている顧客分析について懸念を示していた。携帯電話やタブレットのWiFiをオンにした状態で、Philzに入るか店の前を通過すると、同カフェはEuclidの分析システム使ってそのデバイスを近隣の中で他のデバイスと区別することが可能だ。それがわかれば、店は他のデータと組み合わせて何らかの結果を導くことができる。例えば、店の近くや中にいた時間や、どこに立っていたかも。
TechCrunchのSarah Perezが、昨年1月に、このテクノロジーのしくみを解説している。
これまで小売店は、お客の来店退店をチェックするために、ドアの開閉チェッカーや、頭上からの光線ビーム、ビデオカメラなど、いろんな方法を使っていた。でもEuclidの考え方は違う。お客のスマートフォンのWiFi信号をパッシブに検出して、とくにそのスマホのMACアドレスを見る。MACアドレスは完全にユニークだから、客数を数えるとき重複カウントを防げる(MACアドレスから個人情報にさかのぼることは不可能)。また、同社との契約要件としてユーザであるお店はお客に、店内ポスターなどで、携帯のWiFi信号傍受をオプトアウトできることを、告知しなければならない。
この情報収集におけるプライバシーに関する最大の懸念は、ユニークなデバイスIDがリアルまたはオンラインの個人とひも付けされ、企業は人々がいつ何をするかを知り、広告のターゲティングに使う等利用を拡大する可能性があるからだ。
これは、この分野の数多くのサービスに対する正当な懸念だ。例えば、D-Linkはレストランやスモールビジネスが、顧客がFacebookアカウントでチェックインすることの引き換えに無料WiFiを提供できるルーターを販売している。
Euclidのリリース文(PDF)によると、同社の分析プラットフォームはデータを匿名化しており、様々な場所毎の一般的振舞いを見ることによって、サービスを向上することを目的としている。
Euclid CEO Will Smithは、San Francisco AppealのMax Cherneyに送った声明にこう書いている。
われわれもまた買い物客なので、店が買い物体験を最適化すると同時に、消費者としても誇れる優れた製品を作りたかった。このテクノロジーは、当初からプライバシーを念頭において開発したものであり、われわれが収集した情報から個人を特定することは一切できない。
Philzがこれほど早くEuclidを捨てたことは、小売分析分野への参入を考えている人々にとって警告となるだろう。データが匿名化されていたり水面化でスムーズに集められているというだけで、顧客が情報収集を拒絶しないと決めつけることはできない。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)