IBMがインフラサービス事業を「Kyndryl」として正式に分社化

米国時間11月4日、IBMはそのマネージド・インフラストラクチャー・サービス事業を、正式にKyndryl(キンドリル)という新たな公開会社として分社化したことを発表した。この事業は年間190億ドル(約2兆1549億円)の収益を上げている。この動きをどう思うかはともかく、Kyndrylはかなりの売上がある1つの企業となったわけだが、それでもIBMは、この大規模な事業を切り離したほうが良いと考えていた。

投資家向けの説明によると、Kyndrylは自身のことを、レガシー企業がより近代的なビジネス方法に移行するのを支援するコンサルティング会社であると考えているという。このミッションは、IBMが近年、会社全体で行おうとしていることと一致するように思われる。

しかし、IBMが2020年、この部門を分社する意向を発表したとき、同社がレガシービジネスからの脱却を目指していたことは明らかであり、インフラストラクチャー・サービスは、新CEOのArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏が掲げるハイブリッドクラウドとAIにフォーカスしたビジョンには合致しない部分であると、IBMでは考えていた。この動きが発表されたとき、以下のように筆者が分析記事で書いたとおりだ。

財務の天才でなくても、この会社がどのような方向を目指しているのかは分かるはずだ。クリシュナ氏は、たとえ短期的な痛みがともなうとしても、IBMの事業のレガシーな分野から移行を始める時が来たことをはっきりと認識していた。そのために経営責任者は、(彼らがいう)パックの行き先に資源を投入したのである。本日のニュースは、その努力の延長線上にある。

Moor Insights & Strategies(ムーア・インサイツ&ストラテジーズ)の創設者で主席アナリストを務めるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、両社がこの分離によって最終的に利益を得ることになると確信している。「IBMは、利益率が低く革新性が低いサービス会社を分離した最新の企業の1つです。これによって同社が最も恩恵を受けるのは、これ以上(この部門に)役員の時間を割く必要がなく、成長分野に集中できるということだと、私は考えます」と、ムーアヘッド氏は述べている。

また、ムーアヘッド氏はKyndrylについて、この新たに設立された会社は、IBMの傘下にあったときよりも自由に、ビジネスの観点から集中したい場所を選ぶことができるようになると述べている。「Kyndrylは単独でさらなる成功を収めることができるでしょう。自動化など、実際に事業の利益になる研究開発に資金を投入できるからです。成熟した事業には、別の種類の投資が必要になるものです」。そして分離した会社は、そのような重要な決定を行うことができるようになる。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、Kyndrylが市場で大きく先行してスタートを切ったことを指摘する。「(Kyndrylの分社は)IBMにとって、再び成長し今後の収益性を高めていくための重要な動きであり、それが企業価値を高めます。Kyndrylは自力で結果を出せることを示さなければならなくなったものの、IBMから多くの長期契約を与えられているので、それは問題にならないでしょう」と、同氏は述べている。

Kyndrylは、既存の契約があるため、少なくとも短期的には好調を維持できるだろう。だが、変化するテクノロジーの分野で、同社が長期的に独力で繁栄できるかどうかはまだわからない。いずれにしても、IBMは新しいビジョンに集中できるため、当初はおそらく収益を減らすだろうが、最終的にはこの決定から利益を得ることができるはずだ。

画像クレジット:Icon Sportswire / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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