産業用ドローンの開発・販売を行うACSL(エーシーエスエル)は12月7日、高いセキュリティー機能を備えた産業用空撮小型ドローン「SOTEN(蒼天)」とそのオプション品の受注を開始した。これは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「安全安心なドローンの基盤技術開発」事業の成果を受けてACSLが商品化したもの。
日本政府は2020年9月14日、「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針について」(小型無人機に関する関係府省庁連絡会議)を発表し、「調達はセキュリティが担保されたドローンに限定」し「既存導入されているドローンについても速やかな置き換え」を実施する方針を明らかにした。これを受けてNEDOでは、ドローンを制御するソフトウェアやデータ管理を行うクラウドシステムなど、ISO15408(コモンクライテリア。コンピューターセキュリティーのための国際規格)に基づき開発すべき標準機体とセキュリティーの仕様を定めた。それが「SOTEN(蒼天)」の開発につながった。
「SOTEN(蒼天)」の特徴は次の4つ。
- セキュアな国産ドローン:
ISO15408に基づくセキュリティ対策を実施。データの漏洩や抜き取りを防止し、機体の乗っ取りへの耐性も備えている。主要部品は、国産品もしくは信頼性の高い海外からの調達品を採用。通信と撮影データの暗号化、国内クラウドでの取得データの保護など、セキュリティー強化を図っている - 簡単に切り替えられるカメラ:
小型空撮ドローンとしては初となるカメラの「ワンタッチ切り替え方式」を採用。標準カメラの他、赤外線カメラ+可視カメラ、マルチスペクトルカメラ、光学ズームカメラ(開発中)が交換できる。機体上部に上向きにカメラを装着できるマウントもある - 高い飛行性能:
最大対気速度毎秒15mと風に強く、災害現場などの厳しい状況でも安全に運用が可能。準天頂衛星システム「みちびき」(SLAS/SBAS)に対応し、正確な位置情報を把握できる - 閉域網LTE通信、オフライン対応地図などに対応:
LTE通信によりインターネットを介した操縦ができ、山間地やプラント内などで自動飛行による補助者なし目視外飛行(Level3)が行える。インターネットが使えない場所でも、基地局アプリにオフライン地図を表示し、ドローンを自動飛行させることが可能
「SOTEN(蒼天)」概要
- 寸法:アーム展開時637×560mm(プロペラ含む)
アーム収納時162×363mm - 重量:1.7kg(標準カメラ・バッテリー含む)
- 最大飛行時間:
標準バッテリーで22分(標準カメラ搭載時)
標準バッテリーで25分(標準カメラ非搭載時)
大容量バッテリーで25分(標準カメラ搭載時)
大容量バッテリーで29分(標準カメラ非搭載時)
(すべて風速8m/s条件下) - 最大伝送距離(障害物や電波干渉がない場合):4km
- 防塵・防水性:IP43(カメラ、ジンバル、バッテリー搭載時)
- 標準カメラ:動画4K対応、静止画時2000万画素
- オプションカメラ:赤外線カメラ+可視カメラ、マルチスペクトルカメラ、光学ズームカメラ(開発中)
- リモートID:Bluetooth
- GNSS:GPS+QZSS(準天頂衛星みちびき)+GLONASS+SLAS/SBAS
- クラウド:撮影画像・動画保管機能、フライトログ保管機能
- セキュリティ対策:フライトログ・撮影データ漏洩防止、通信の暗号化、機体と送信機のペアリング
- 機能:自動飛行、画像トラッキング、3方向センサーによる衝突回避
- 機体制御プロトコル:MAVLink準拠
- 付属品:標準送信機、バッテリー、標準充電器、セキュアフライトマネジメントクラウド(3年分、5GB)
- オプション品:スマートコントローラー、送信機フード、予備プロペラ、教習送信機、プロペラガード、LTE通信モジュール、収納ケース(ハード)、大容量バッテリー(94Wh)、収納ケース(ソフト)、マルチマウント、3連充電器、上部カメラマウント(開発中)
- 価格:オープン価格