P2PのBitTorrentが提供しているファイル共有/同期化サービスSyncは、いわば、サーバもクラウドもないDropboxだ。昨年スタートしたSyncは、このほど総インストール数1000万に達し、これまでに80ペタバイトのデータを転送した。好調の理由の一部は、このところ徐々に広まっているクラウドサービスに対する疑念、つまりどこかのサーバにあずけてしまったファイルはプライベート性(非公開性)が守られないのではないか、という不安だ。BitTorrent自身も、この不安を広めるのに一役買った。
今日BitTorrentは、Syncアプリケーションの新バージョンをベータとして公開した。リンクの共有やファイルの有効期限の設定などの機能があり、これらにより、BitTorrentとしてはさらに一般的大衆的な利用が広まることを期待している。
BitTorrentはSyncのAPIを昨年11月に公開し、これまでに4300のAPIキーが配布された。これもまたSyncの使いやすさを増大し、デベロッパが気軽に自分のアプリの中でSyncのサービスを実装し利用できるためだ。
ただし問題は、リンクを読んだり送ったりするためにはSyncのクライアントが必要なことだ。そのクライアントアプリケーションはWindows、OS X、Linux、Android、それにiOS用がそれぞれあるが、これはP2Pサービスがどうしてもサーバを必要とする部分の一つだ。
プロマネ担当のVP Erik Poundsは曰く、“オンラインで提供するとしたらWebサーバをどこかでホストしなければならないが、それはBitTorrentがやることではない。それはうちのミッションであり、うちではプライバシーが議論の材料になることはない”。
しかも、ストリーミング機能がないので、ファイル(たとえばビデオ)を見るためには、それをダウンロードしなければならない。Syncのモバイルアプリでは、“選択的Sync”ができる。それは携帯やスマートフォンでは容量が小さいため、ファイルの利用やダウンロードを制限できる機能だ。
でもこの二つの問題以外では、新バージョンのSync 1.4は動作がよりスムーズになり、ユーザ数の増加にたしかに寄与しそうだ。
Poundsはこんな言い方をする: “Syncはいつもマジックのようなやり方で二つのデバイス間で容易にファイルを移動する。今度の新バージョンでは、そのやり方がなお一層シンプルになった”。
新しい機能を紹介しよう:
以前はファイルを共有するために複雑なキーを必要としたが、新バージョンではファイルをリンクで共有でき、それらをメールやメッセージやQRコードで送れる。
リンクをもらったユーザのところにSyncがまだなければ、Syncをダウンロードしてそのリンクを読むよう指示される。つまりこのやり方なら、これまでSyncで共有をしたことのない人とでも、容易にファイルを共有できる。Syncのクライアントがフォルダをセットアップすることになるが、マーケティング目的でのファイル配布には便利な機能だ。(キーも従来どおり使える。)
さらに、ファイルの送り方でオプションが増えた。まず、リード(read)オンリーとリード/ライト(write)の指定ができる。リンクには、有効期限と、最大ビュー回数を指定できる。相手の名前を指定していた場合でも、その人も期限や回数を超えて見ることはできない。
Poundsによると、これらの新機能はユーザの要望がとても多かったものがほとんどだが、それ以外に、収益化のための機能もある。
彼曰く、“今のSyncの上に収益化のための仕組みを載せたい。今それらを開発中だ”。それはほぼ確実に、企業顧客のための一連の機能で、カスタム化できるファイル共有ボックスとか、ファイル転送時のサービスの質の保証などが含まれるのだろう。
“これまでは無料バージョンのSyncに専念してきたが、今後は特定の環境で価値のある有料の機能を開発していきたい”、と彼は言う。ベータを脱して商用バージョンとして完成するのは、“来年の前半”だそうだ。
画像: Flickr
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))