ウォンテッドリー、社内向けグループチャット「Sync」の法人利用を早くも無料に

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ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリーが1月から提供している社内向けグループチャット「Sync」。サービスローンチから1カ月のSyncだが、法人向けのプランの完全無料化を発表した(当初は無料プラン以外に月額で600円、1200円のプランを用意していた)。あわせて、チーム機能とクラウドサービス連携機能の提供を開始した。

チーム機能を使えば、特定のプロジェクトなどに参加するメンバーに限定したチーム(グループ)でのチャットが可能。またクラウドサービス連携機能では、Google Docs、Dropbox、Evernoteと連携。各サービスの共有用URLをSync上に展開すれば、URLをクリックする前に内容が自動展開され確認できるという。

「ローンチ1カ月で無料化」の意図は?

法人向けサービスをローンチ1カ月で無料化するというのもあまり聞く話ではない。良かれ悪かれ当初の予定とは異なる状況になっているのではないかと想像するのだけれども、ウォンテッドリーCTOの川崎禎紀氏は「無料にすることで、Syncを利用する企業やユーザーを増やし、Wantedlyをよりアクティブに使ってもらうことが、中長期的にみてプラットフォーム全体の価値を高めると判断した」としている。

とはいえこの無料化の背景にはビジネス向けチャットツールの市場の過熱ぶりもあると見ていいんじゃないだろうか。SlackやChatWork、さらにはFacebook MessengerやLINEといった本来コンシュマー向けに提供されているツールまで、ビジネス領域で活躍するチャットツールの競争は激しくなるばかり。最後発のプロダクトとして有料のままサービスの差別化をするのが難しいと判断したとしてもおかしくはない。

川崎氏は「Wantedly Admin(Wantedlyの法人向け採用支援サービス、要はもともとのWantedlyの法人ビジネスだ)を利用している企業にはスタートアップも多い。有料の社内向けチャットサービスを使わずに済むよう支援したいという点もある」とも語っていた。この言葉をそのまま捉えるのであれば、単体でのマネタイズからWantedly全体での満足度向上のためにビジネス的にはピボットしたとも考えられる。補足しておくが、僕はクローズドベータ版のSyncを利用した経験がある。今回グループチャット機能も実装されたことで、ユーザー体験だけで言えば決して先行サービスと大きな差が付くモノではないと思っている。

Syncのユーザー数は非公開(サイト上では「1万5000社が利用する」となっているが、これはあくまでWantedly Adminの利用企業数だ)。「Wantedly全体と比較するとまだ少ない数字だが、チャットサービス特性もあってよりアクティブかつ継続的に使っているユーザーが多い。3分の1はWantedlyを利用しておらず、NPOや、社労士事務所、学生団体、フリーランスの集団など今までリーチ出来ていなかった属性が増えているのを実感している」(川崎氏)。今後はセキュリティ面やアカウント管理機能を強化するなど、大企業も含めた利用を促すという。

ビジネス向けツールの口コミサイトも

またウォンテッドリーでは2月12日に新サービス「Wantedly Tools」をローンチしている。同サービスはコミュニケーションツールやプロジェクト管理ツールなど、主にビジネス用途のツールやシステムを紹介しあう口コミサイト。Wantedlyにアカウントを持つ企業が利用するツールの情報を投稿している。

投稿は1プロダクトにつき数百件というものもあるようだ。その規模はさておき、ビジネスツールに特化した「Product Hunt」といった様相を呈しており、プロダクトを比較して導入したいユーザーなどには参考になる情報も多いと思う。たとえばコミュニケーションツールのカテゴリでは、「Sync」導入企業の意見も読むことができる。

Wantedly ツール

「Wantedly Tools」

Wantedlyの連絡帳ツール「Sync」は広く浅い人脈を持つウェブ業界人がターゲット

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イベントでいろんな人と会ってFacebookでつながったものの、いざ連絡しようとしても名前が出てこない……。ウェブ業界で数多くのイベントに参加してる人なら、こうした経験は1度や2度はありそう。そんな人を対象にしたビジネス連絡先管理ツールが「Sync」だ。ウォンテッドリーが本日リリースした。

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名前が思い出せなくても会社名で探せる

サイト上で名前や会社名を入力すると、ソーシャルリクルーティングサービス「Wantedly」に登録している60万ユーザーを検索できる。それ以外の人は手入力で連絡先に追加する。

便利なのは、会社名で人を探せること。Facebookは会社名で友人を検索できないが、Syncは「社名は思い出せるのに名前が出てこない」人でも見つけられるわけだ。

たとえFacebookでつながってなくても、会社名さえ一致すれば、Wantedlyに登録済みの全社員が検索結果に出てくる。さらに言うと、過去の経歴でその会社名を登録している人さえも探すことができる。こうした仕組みは名刺管理サービス「Eight」とも似ている。

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検索でヒットした人には、自分だけに公開されるメモを入力できる。例えば「○○のイベントで会った」と入力しておけば、イベント名でも探せるので、かすかな記憶をもとに思い出せそう。コンタクトを取りたい人に対しては、SyncやFacebookメッセンジャーでやりとりできる。

利用するには、Wantedlyの会員登録が必要となる。

「ウェブ業界でつながりたい人はほとんど見つかる」

Wantedlyは昨年5月、iPhoneに登録した連絡先を「仕事」「友人」「家族」などとグループ分けでして管理できるiPhoneアプリ「CONTACT」をリリースしている。このアプリもSyncと同様、Wantedlyに登録している会社名から連絡先を探せるのだが、ウォンテッドリーの仲暁子社長は「ターゲットが大きく違う」と話す。

彼女によれば、CONTACTは「比較的ITリテラシーが低いユーザー」が対象という。「新しいつながりがたくさんできるわけではないですが、ガラケー時代から連絡先を管理するのが好きで、それをスマホになった今でもやっている、というようなペルソナです」。

一方、Syncは「Facebook上で薄いビジネスのつながりが増えたウェブ業界の人」がターゲットだ。「Wantedlyはウェブ業界を中心に月間60万人が利用しているので、つながりたい相手はほとんど見つかります。名前を検索してタグ付けし、記憶の引き出しにしまう。そんな新しいつながり管理を提案したいです」。

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P2Pのファイル共有サービスBitTorrentのSyncが1000万インストールを達成、ニューバージョンのベータを開始

P2PのBitTorrentが提供しているファイル共有/同期化サービスSyncは、いわば、サーバもクラウドもないDropboxだ。昨年スタートしたSyncは、このほど総インストール数1000万に達し、これまでに80ペタバイトのデータを転送した。好調の理由の一部は、このところ徐々に広まっているクラウドサービスに対する疑念、つまりどこかのサーバにあずけてしまったファイルはプライベート性(非公開性)が守られないのではないか、という不安だ。BitTorrent自身も、この不安を広めるのに一役買った

今日BitTorrentは、Syncアプリケーションの新バージョンをベータとして公開した。リンクの共有やファイルの有効期限の設定などの機能があり、これらにより、BitTorrentとしてはさらに一般的大衆的な利用が広まることを期待している。

BitTorrentはSyncのAPIを昨年11月に公開し、これまでに4300のAPIキーが配布された。これもまたSyncの使いやすさを増大し、デベロッパが気軽に自分のアプリの中でSyncのサービスを実装し利用できるためだ。

ただし問題は、リンクを読んだり送ったりするためにはSyncのクライアントが必要なことだ。そのクライアントアプリケーションはWindows、OS X、Linux、Android、それにiOS用がそれぞれあるが、これはP2Pサービスがどうしてもサーバを必要とする部分の一つだ。

プロマネ担当のVP Erik Poundsは曰く、“オンラインで提供するとしたらWebサーバをどこかでホストしなければならないが、それはBitTorrentがやることではない。それはうちのミッションであり、うちではプライバシーが議論の材料になることはない”。

しかも、ストリーミング機能がないので、ファイル(たとえばビデオ)を見るためには、それをダウンロードしなければならない。Syncのモバイルアプリでは、“選択的Sync”ができる。それは携帯やスマートフォンでは容量が小さいため、ファイルの利用やダウンロードを制限できる機能だ。

でもこの二つの問題以外では、新バージョンのSync 1.4は動作がよりスムーズになり、ユーザ数の増加にたしかに寄与しそうだ。

Poundsはこんな言い方をする: “Syncはいつもマジックのようなやり方で二つのデバイス間で容易にファイルを移動する。今度の新バージョンでは、そのやり方がなお一層シンプルになった”。

新しい機能を紹介しよう:

以前はファイルを共有するために複雑なキーを必要としたが、新バージョンではファイルをリンクで共有でき、それらをメールやメッセージやQRコードで送れる。

リンクをもらったユーザのところにSyncがまだなければ、Syncをダウンロードしてそのリンクを読むよう指示される。つまりこのやり方なら、これまでSyncで共有をしたことのない人とでも、容易にファイルを共有できる。Syncのクライアントがフォルダをセットアップすることになるが、マーケティング目的でのファイル配布には便利な機能だ。(キーも従来どおり使える。)

さらに、ファイルの送り方でオプションが増えた。まず、リード(read)オンリーとリード/ライト(write)の指定ができる。リンクには、有効期限と、最大ビュー回数を指定できる。相手の名前を指定していた場合でも、その人も期限や回数を超えて見ることはできない。

Poundsによると、これらの新機能はユーザの要望がとても多かったものがほとんどだが、それ以外に、収益化のための機能もある。

彼曰く、“今のSyncの上に収益化のための仕組みを載せたい。今それらを開発中だ”。それはほぼ確実に、企業顧客のための一連の機能で、カスタム化できるファイル共有ボックスとか、ファイル転送時のサービスの質の保証などが含まれるのだろう。

“これまでは無料バージョンのSyncに専念してきたが、今後は特定の環境で価値のある有料の機能を開発していきたい”、と彼は言う。ベータを脱して商用バージョンとして完成するのは、“来年の前半”だそうだ。

画像: Flickr

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


BitTorrentがSync APIを公開: インターネットのサーバ集中主義から完全分散化への脱皮を促す

【抄訳】

Syncは、P2PプラットホームBitTorrentのファイル同期化サービスで、サーバのないDropboxみたいなシステムだが、今年初めにローンチして以来ユーザ数が着実に増えて、いまではアクティブユーザ数100万、サービス上にアーカイブされているデータ量30ペタバイトに達している(7月には8ペタバイトだった)。そしてユーザ数をさらに増やしたいBitTorrentは今日、SyncのAPIをリリースした。デベロッパはこのAPIを使って自分のアプリケーションからSyncのサービスを利用でき、ユーザにデータのアクセスと共有を提供できる。

同時にまた、ニューバージョンSync 1.2がリリースされる。これには、ネイティブのiPadサポートが加わり、LAN上の転送速度が最大毎秒90MBまでアップした(ワイヤレスではこれより遅い)。

BitTorrentがAPIを提供するのは、これが初めてではない。過去には、BitTorrentそのもののためにuTorrentTorqueを提供している。

しかし今回公開されたAPIは、BitTorrent上でメディアファイルを共有するにとどまらない、もっと広範なデベロッパを対象にしている。そしてそのレベルでは、二つのユニークなセールスポイントがある: Syncはそのほかの類似サービスに比べて速い、良い、のほかに、サーバがどこにもないからプライバシー保護が強固だ。P2Pは基本的に分散システムなので、悪い人はデータの所在を簡単に突き止めることができない。

それにまた、BitTorrentはNSAの一般市民に対するスパイ行為を強烈に批判してきたが、BitTorrentの場合その批判は同時に、自分の宣伝でもある。中央集中型のサービスではなく、分散型の構造であることの。NSAが悪人扱いされている現状は、BitTorrentにとって絶好のマーケティングチャンスかもしれない。

いずれにしても、データのプライバシーを重視する人にとってSyncは、そのほかのバックアップサービスにはない重要な特徴を持っている。BitTorrentの広報は、“分散型のインターネットがより良いインターネットだと思う”、というきわめてシンプルな言い方をした。

【中略】

APIの一般公開は今日からだが、初期の作例(用例)を見ることもできる: Webサイトの展開ソーシャルネットワーキングメッセージングなど。BitTorrentはさらに、Sync APIの今後の用途として、“検閲と戦って言論の自由を確保し、思想と情報の自由な流通を確保するためのアプリケーション”や、“セキュアなストレージを確保し、ユーザとデータのプライバシーが政府などの底引き網にかからないようにするためのアプリケーション”、を挙げている。

“すでにいくつかのグループが、セキュアでプライベートなサービスの開発に(このAPIを使って)取り組んでいる”、とBitTorrentの広報は言った。“これはインターネットの次の大きなイノベーションの波の始まりだと思う”。

このAPIの詳細はここで見られる。

画像: Flickr

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))